GLOSSARIUM · 用語集
用語集
神統記・習合・インテルプレタティオ——世界の神話を読み解くための基本用語を、簡潔な定義で引く。
648語を収載(アルファベット順)。
A
ローマ建国以来の歴史AB URBE CONDITA リウィウス(前59頃–後17)が著したローマ通史。全142巻のうち35巻が現存する。建国伝説から前9年までを年代順に叙述し、王政期・初期共和政の伝承を伝える主要な資料である。her
アーディティヤ神群ĀDITYAS 女神アディティ(無限)の子とされるヴェーダの神群。『リグ・ヴェーダ』では六柱ないし七柱、後代には十二柱とされ、太陽の十二か月に配された。筆頭はヴァルナとミトラで、アリヤマン、バガ、
アドーニア祭ADONIA アドーニスの死を悼む祭。前7世紀のレスボス島ですでに行われ、前5世紀半ばのアテナイで広まった。女たちは鉢や割れた陶片に小麦・レタス・ういきょうなど速く芽を出す植物を蒔き、「アドーニ
アイギスAEGIS ゼウスとアテーナーの持物として語られる防具。山羊皮の胸当てや盾とされ、図像ではゴルゴーンの首を打ち付けた姿で表されることが多い。ホメーロスではゼウスが振るうと雷鳴が轟くが、美術では
アエネーイスAENEID ウェルギリウスが前29年から前19年にかけて書いたラテン語の叙事詩。全12巻。トロイア落城を生き延びたアイネイアースが放浪の末にイタリアへ渡り、ローマ人の祖となるまでを歌う。母であ
アース神族AESIR 北欧神話の中心をなす神々の一族で、天空の城アースガルズに住まう。オーディンを長とし、トール、フリッグ、baldurらが数えられる。豊穣を司るヴァン神族と太古に戦ったのち和睦し、以後
アース神族とヴァン神族の戦いÆSIR–VANIR WAR アース神族とヴァン神族が戦い、決着のつかぬまま人質を交換して和睦した戦争。『巫女の予言』は、黄金を求める女グルヴェイグが三度焼かれても蘇ったことを開戦の契機として語る。『ヘイムスク
ロシア民話集NARODNYE RUSSKIE SKAZKI アレクサンドル・アファナーシエフ(1826–1871)が1855年から1863年にかけて刊行したロシア昔話の集成。ロシア地理学協会に集まった記録と自身の採集をもとに約600話を収め
アーガマĀGAMA ヴェーダとは別系統の権威をもつ聖典群で、シヴァ派のシャイヴァ・アーガマ、ヴィシュヌ派のパーンチャラートラ、女神信仰のタントラなどに分かれる。おおむね5世紀から12世紀にかけて編まれ
アグニ・パリークシャーAGNI PARIKSHA 火による潔白の証し。『ラーマーヤナ』では、ランカーから救出されたシーターが貞節を疑われ、みずから火に入って潔白を示す場面を指す。ヴァールミーキ系の伝承では、火神アグニがシーターを抱
秋葉信仰AKIBA FAITH 遠江国の秋葉山(静岡県浜松市)を中心とする火防(ひぶせ)の信仰。近世に秋葉講が組織され、代参と巡礼を通じて全国へ広まった。火災の多い都市部でとくに篤く受け入れられ、街道筋や辻に立つ
アキートゥ祭AKITU シュメール期から新バビロニア期まで営まれた、メソポタミアの主要な祭礼。もとは大麦の播種期と収穫期に年二回行われたが、のちに春の新年祭として定着した。新バビロニアのバビロンでは十二日
天岩戸AMA-NO-IWATO (THE HEAVENLY ROCK CAVE) 弟スサノオの乱暴に怒った天照大神が身を隠したとされる岩屋である。太陽神の隠遁により高天原も葦原中国も闇に閉ざされ、八百万の神々が策を巡らす。天鈿女命(アメノウズメ)の舞と八咫鏡、そ
アマルナ時代AMARNA PERIOD 古代エジプト第18王朝、ファラオのアクエンアテン(アメンホテプ4世)が太陽円盤アテンの崇拝を国家宗教に掲げた時期を指す(前1353頃〜前1336頃)。王は都を新都アケトアテン(現在
アムブロシアーAMBROSIA オリュンポスの神々が口にする食物で、飲み物のネクタルと対で語られる。語は「不死ならざるもの」を否定する形(a-mbrotos)に由来するとされ、摂ることで神々は不死と若さを保つ。神
アムシャ・スプンタAMESHA SPENTA アヴェスター語で「不死なる聖なる者たち」の意。アフラ・マズダーから発した、あるいはその働きの現れとされる六柱の霊格で、ウォフ・マナフ(善思)、アシャ・ワヒシュタ(最善の義)、フシャ
アムリタAMṚTA ヒンドゥー神話の不死の霊薬。語は「死なざるもの」を意味し、ギリシア語のアンブロシアーと同源である。神々と阿修羅が大蛇ヴァースキを綱、マンダラ山を軸として乳海を攪拌し、その最後に医神
アン=アヌム神名表AN = ANUM 冒頭の対応「アン=アヌム」から呼ばれる、全7書板におよぶ神名の一覧。左段にシュメール語名、右段にアッカド語名を並べ、主要な神ごとに配偶神・子・スックル(従神)・楽人などを従属させて
アナデュオメネーANADYOMENE 「海から上がる」の意で、髪を絞りながら水面から現れるアプロディーテーの図像型。前4世紀の画家アペレースの板絵が原型とされるが失われ、ポンペイの壁画やローマ期の彫像に反映が残る。ボッ
アンドヴァラナウトANDVARANAUT ドヴェルグのアンドヴァリが所持していた指輪。名は「アンドヴァリの贈り物」の意で、黄金を殖やす力を持つとされる。
『レギンの言葉』によれば、オーディン・loki・ヘーニルの三神が誤
アネモイANEMOI ギリシア神話における風の神々の総称。主要な四柱は、冬の冷気を運ぶ北風ボレアース、晩夏と実りの秋を運ぶ南風ノトス、春のそよ風である西風ゼピュロス、そして東風エウロスである。『神統記』
天使の位階ANGELIC HIERARCHY 天使を階級に配して秩序づける図式。さまざまな案が提出されたが、決定的な影響を与えたのは5〜6世紀の神秘思想家、偽ディオニシウス・アレオパギタの『天上位階論』である。熾天使・智天使・
動物ミイラANIMAL MUMMIES エジプトでは動物も人と同じくミイラにされたが、その内実は一様でない。第一は神の化身とされた個体の埋葬で、アピス・ムネウィス・ブキスといった聖牛は王に準じる規模と費用で葬られた。第二
ポーランド王国年代記ANNALES SEU CRONICAE INCLITI REGNI POLONIAE ポーランドの聖職者・歴史家ヤン・ドゥウゴシュ(1415–1480)が晩年に完成させたラテン語のポーランド史。その第1巻は、キリスト教化以前のポーランドの神々を列挙し、ユピテル、ケレ
アンヌンANNWN 中世ウェールズの物語と詩に現れる異界。アンヴンとも綴る。地下、あるいは海の彼方に置かれるが、地上とは地続きに接しており、狩の途中で迷い込むこともある。老いも病も欠乏もなく、尽きせぬ
アヌンナキANUNNAKI シュメール語 da-nun-na(「君主の裔」ほどの意)に由来する神々の集団名。アッカド語に anunnakku として入った。天空神アンと大地の女神キの子孫とされ、人間の運命を定
アポテオーシスAPOTHEOSIS 人間や英雄が死後に神の位へ高められること。神格化とも訳す。ギリシア神話ではヘーラクレースやアスクレーピオスがその例で、ローマではコンセクラーティオと呼ぶ国家儀礼として、皇帝を死後に
アプサラスAPSARA 水と雲に住まうとされる天上の女性。名は「水中を動く者」と解され、乳海攪拌の折に海から現れたと語られる。インドラの天界で舞い、ガンダルヴァの奏楽に合わせて踊り、戦死した英雄を迎える役
アラ・マクシマARA MAXIMA 「最大祭壇」の意。フォルム・ボアリウムに置かれたherculesの祭壇で、ウェルギリウス『アエネーイス』第8巻は、cacusを討った英雄のためにエウアンドロスが設けたものと語る。犠
アラ・パキスARA PACIS AUGUSTAE 「アウグストゥスの平和の祭壇」。ヒスパニアとガリアから帰還した皇帝を迎えて前13年に元老院が決議し、前9年1月30日にマルスの野で奉献された。大理石の囲壁の内外を浮彫が覆い、南北面
元型ARCHETYPE 心理学者カール・グスタフ・ユングが1910年代以降に提唱した概念で、文化や時代を越えて人類に共有される無意識の心的パターンを指す。母、老賢者、影、トリックスターなどが典型とされ、神
アレオパゴスAREOPAGUS 「アレースの丘」を意味するアテーナイの岩丘。神話では、娘アルキッペーを犯したポセイドーンの子ハリロティオスを撲殺したaresが、神々の法廷にかけられて無罪となった場とされ、これが最
アレタロギアARETALOGY 神の徳(アレテー)を列挙する讃詞。ギリシア語で書かれ、多くは神自身が一人称で名乗る形をとる。isisのものが最もよく残り、小アジアのキューメ、テッサロニケ、キュクラデスのアンドロス
アルゴー船ARGO イアーソーン率いるアルゴナウタイが金羊毛を求めて乗り組んだ船。船大工アルゴスがathenaの指導のもとで建造し、名は船大工の名に由来するとされる。女神はドードーナにあるzeusの聖
アルゴナウタイARGONAUTS イアーソーンが叔父ペリアースに命じられ、コルキスの金羊毛を得るために集めた英雄たちと、その船アルゴーによる航海。ヘーラクレース、双子のカストールとポリュデウケース、北風の子ゼーテー
アルコナARKONA バルト海リューゲン島(当時のルヤーナ島)北端、ヴィトウ半島の白亜の断崖上に築かれた要塞聖域。ラニ族の政治と祭祀の中心であり、木造の神殿にsvetovitの巨像が立った。収穫を終えた
アルクテイアARKTEIA アッティカのブラウローンとムーニキアで、アルテミスに仕える少女たちが仔熊(アルクトス)に扮して行った儀礼。婚姻前の一時期を野生の側で過ごし、そこから人の秩序へ渡る通過儀礼と解される
アシェÀṢẸ ヨルバ語のアシェ(àṣẹ)は、宇宙のあらゆる運動と変化を可能にする力を指す。宗教学者ジェイコブ・オルポナは、これを「必ず成就する言葉」であり、万物の活動を律する生命力であると説明す
アシャASHA ゾロアスター教で、真理・正義・宇宙の秩序を意味する根本概念。善の創造神アフラ・マズダーが体現し、虚偽(ドゥルジュ)およびそれを旨とするアンラ・マンユと対をなす。世界も人の生も、アシ
アシェラ柱ASHERAH POLE ヘブライ語聖書に約四十回現れる語アシェラ(ʾăšērâ)のうち、多くは女神そのものではなく、木で作られ、聖なる高台に立てられた祭祀用の柱ないし聖樹を指す。生きた樹木とみる説と、様式
アーシプĀŠIPU 粘土板に記された呪文を唱え、像の埋納や献供といった儀礼を行って、病や災いをもたらす霊を退ける役を負った専門職。神殿と王宮に仕え、写本を通じて技術を伝えた。薬草や外科的処置を扱うアス
アスクとエムブラASK AND EMBLA 北欧神話で最初に造られた人間の男女。『巫女の予言』によれば、オーディン・ヘーニル・ローズルの三柱が海辺で力を持たぬ二本の木を見出し、息(オンド)、知恵(オーズ)、そして血色と姿を与
アストラASTRA 真言(マントラ)を唱えることで発動する超自然的な武器。物理的な飛び道具そのものではなく、矢や槍にマントラを乗せて神格の力を呼び出す技法を指す。用いるには授かる資格と正しい発動・収束
アスラASURA インド神話における神々(デーヴァ)と対立する存在の総称で、阿修羅(あしゅら)と漢訳される。もとはヴェーダで尊崇された強力な霊格を指したが、後代には神々の敵役として悪魔的な相へと転じ
アーシュニュルÁSYNJUR 古ノルド語 ásynjur(単数 ásynja)は、アース神族の女神たちを指す語である。男性形 áss の女性形にあたり、『ギュルヴィたぶらかし』は男神を列挙したのち、あらためて「
アトラ・ハシース叙事詩ATRA-HASIS EPIC 三枚の粘土板に記されたアッカド語の叙事詩で、ハンムラビの曾孫アンミ・サドゥカ王期の写本が最も古い年代を示す。重労働に耐えかねた下位の神々が反乱を起こしたため、代わって働く者として人
ATU分類AARNE–THOMPSON–UTHER INDEX 昔話の筋立てを型ごとに整理し、番号を与えた国際的な索引。1910年にアンティ・アールネが創始し、スティス・トンプソンが英訳・拡張、2004年にハンス=イェルク・ウターが全面改訂した
鳥占いAUGURY 鳥の出現・飛翔の方向・鳴き声・餌の食べ方などから神意を読む占術。ギリシアではオイオーノスコピアーと呼ばれ、予言者の基本技法とされた。右手(東)から現れる鳥は吉、左からは凶とする方位
アウロスAULOS 二本の管を口にくわえて同時に鳴らす、リード(簧)を用いる管楽器。日本語ではしばしば「笛」と訳されるがフルート類ではなく、音色はむしろオーボエに近い。悲劇の合唱、饗宴、葬礼、競技、そ
華厳経AVATAṂSAKA SŪTRA 大乗経典の一つ。正しくは『大方広仏華厳経』。中央アジアで諸経を集成して成立したとされ、漢訳に東晋の仏駄跋陀羅訳(六十華厳)、唐の実叉難陀訳(八十華厳)などがある。毘盧遮那仏を説法の
アヴァターラAVATARA 「降下」を意味し、神が地上に姿をとって現れることをいう。日本語では「化身」「権化」と訳す。もっぱらヴィシュヌについて語られ、法が衰えるたびに時代に応じた姿で降ると伝えられる。十化身
アウェンティヌスの三神AVENTINE TRIAD ローマのアウェンティヌスの丘の神殿に共に祀られたceres・リーベル・リーベラの三柱。平民の離反の危機に際し前496年に誓願され、前493年に国費で奉献されたと伝えられる。三柱は平
アヴェスターAVESTA ゾロアスター教の聖典の総称。アヴェスター語で伝えられ、その最古層をなすガーサーは、預言者ザラスシュトラ自身に帰される十七篇の讃歌で、ヴェーダのサンスクリットに近い古い言語で綴られる
吾妻鏡AZUMA KAGAMI 鎌倉幕府の事績を日記体で記した歴史書。治承四年(一一八〇)の源頼朝挙兵から文永三年(一二六六)までを扱い、十四世紀初頭までに編纂されたとみられる。幕府側の視点による潤色が指摘される
B
バアル叙事詩BAAL CYCLE シリア沿岸の都市ウガリットの王宮址から出土した、前14〜前13世紀の粘土板に記された神話文書群。ウガリット語のアルファベット楔形文字で書かれ、六枚の主要な書板から成る。嵐と豊穣の神
バッカナーリアBACCHANALIA バックス、すなわちliberの名のもとに営まれた密儀的な祭。前186年、元老院は「バッカナーリアに関する元老院決議」を発し、集会を法務官の許可制とし、参加者を五人までに制限した。処
バナナ型神話BANANA-TYPE MYTH 人間がなぜ死ぬのかを説明する起源神話の類型。神が人に石を与えようとしたが、人は石を拒んでバナナを求めた。バナナは実れば枯れるので、人の命も同じように短くなった——という筋をとる。イ
バーニャBANYA 東スラヴの伝統的な蒸し風呂。母屋とは別に建てられ、内側の蒸し室と外側の脱衣室からなる。焼けた石を積んだ竈(カメンカ)に水をかけて蒸気を立て、ヴェニクと呼ぶ白樺の枝束で体を叩く。単に
ベルテネBELTANE ケルト暦の四大祭の一つで、5月1日ごろに行われた。夏の放牧期の始まりを告げる祭であり、火を焚いて、そのあいだに家畜を追い通して病と災いを祓った。名を「ベルの火」と解して神ベレヌスに
ベントレシュ碑文BENTRESH STELA 1829年、カルナックのコンス神殿脇の小祠から見つかった黒色砂岩の碑(ルーヴル美術館 C 284、222×109センチ)。ベクテンの王女ベントレシュが病に倒れ、コンスの神像が遣わさ
ベーオウルフBEOWULF 古英語(アングロサクソン語)で書かれた3182行の頭韻詩。単一の写本、大英図書館所蔵のノーウェル写本(Cotton Vitellius A. xv)にのみ伝わり、筆写は西暦1000
動物寓意譚BESTIARY 中世ヨーロッパで作られた動物誌の写本。『フィシオロゴス』を核に、イシドールス『語源誌』などの記述を継ぎ足して膨らんだ。獅子や鷲といった実在の獣と、グリフォン・フェニックス・セイレー
バガヴァッド・ギーターBHAGAVAD GITA 『マハーバーラタ』第六巻に含まれる七百詩節の教説。同族と戦うことをためらうアルジュナに、御者クリシュナが行為と献身のありようを説く。物語のなかでクリシュナが宇宙的な姿を顕す場面(第
バクティBHAKTI 特定の神への一途な献身。祭式の知識や身分ではなく、心を向けることそのものを救いの道とする。南インドの詩人たちに始まり、中世に各地の言語で歌われて広がった。神話の語り口を変えた点でも
ビフレストBIFRÖST アースガルズと地上を結ぶ橋。ビルレストの形でも伝わる。『グリームニルの言葉』は、この橋が燃えていると歌い、『ギュルヴィたぶらかし』は、赤い帯が炎であり、それが巨人の渡橋を防いでいる
ブラックドッグBLACK DOG ブリテン諸島の民間伝承に広く分布する、黒い妖犬をめぐる伝承の総称。夜道・墓地・十字路・橋といった境界の場所に現れ、燃えるような目を持つとされる。多くは死や災いの前触れとみなされるが
黒絵式BLACK-FIGURE POTTERY 前7世紀にコリントスで確立し、前6世紀のアテーナイで最盛期を迎えたギリシア陶器の装飾技法。赤い素地に鉄分を含む泥漿で人物や動物をシルエットとして描き、焼成の工程を制御して黒く発色さ
菩薩BODHISATTVA 菩薩(梵 bodhisattva)は、みずから仏となる悟りを求めながら、その完成をあえて留保し、迷いのなかにある衆生の救済を優先する存在である。上座部では成道以前の釈迦を指したが、
ボガトィーリBOGATYR ロシアの口承叙事詩に登場する勇士の呼び名。語はテュルク語の baɣatur(勇者)に遡るとされる。ilya-muromets、dobrynya-nikitich、alyosha-p
ボアズキョイ文書BOĞAZKÖY ARCHIVES トルコ中部ボアズキョイ、すなわちヒッタイトの都ハットゥシャの遺跡から発見された王宮文書庫の粘土板群。20世紀初頭以降の発掘で数万点が出土した。条約、法文、年代記、祭儀書、そして神話
エノク書BOOK OF ENOCH 前2〜前1世紀ごろに成立したとされる黙示文学で、族長エノクが天界を旅し啓示を受ける体裁をとる。天から降りて人間の娘を娶った見張りの天使(グリゴリ)と、その首謀者アザゼル、両者から生
アペプ撃滅の書BOOK OF OVERTHROWING APEP 大蛇アペプを打ち倒すための呪文と所作を集めた儀礼文書。主要写本はプトレマイオス朝テーベの神官ネスミンが遺したブレムナー・ラインド・パピルス(大英博物館 EA 10188)で、奥書は
タリエシンの書BOOK OF TALIESIN 14世紀前半に一人の写字生の手で編まれたウェールズ語の詩写本。ウェールズ国立図書館蔵(Peniarth MS 2)。6世紀の詩人タリエシンに帰される詩を中核に、預言詩、宗教詩、そし
死者の書BOOK OF THE DEAD 新王国期(前16世紀〜)以降のエジプトで、死者とともに葬られたパピルスの呪文集。古代エジプト語の題は「日のもとに出現するための書」で、「死者の書」は19世紀の命名である。冥界の旅・
ヴェレスの書BOOK OF VELES 9世紀のノヴゴロドの神官が白樺板に刻んだと称する文書。1919年に発見され1941年に散逸したとされ、1950年代に亡命ロシア人によって写しが公表された。原本は現存せず、写真も一枚
ブラフマハティヤーBRAHMAHATYA バラモンを殺すこと、およびそれによって負う罪。ダルマ法典は、これを飲酒・盗み・師の妻との姦通と並ぶ「大罪(マハーパータカ)」の筆頭に置き、長期の贖罪行を課した。神話においては、神格
ブレイザブリクBREIÐABLIK baldurの住まいとされる館。名は「広く輝くもの」の意。『グリームニルの言葉』は、この地にはもっとも呪わしいものが最も少ないと歌い、『ギュルヴィたぶらかし』は、そこに穢れたものは
ブルー・ナ・ボーニャBRÚ NA BÓINNE アイルランド東部、ボイン川の湾曲部に広がる新石器時代の通路墓群。ニューグレンジ、ノウス、ダウスを中心とし、前3200年ごろの築造。1993年に世界遺産に登録された。ニューグレンジは
蕪村妖怪絵巻BUSON YŌKAI EMAKI 俳諧と絵画の双方で名を成した与謝蕪村が、宝暦四年(一七五四)ごろに描いたとされる妖怪絵巻。丹後や京の怪異を軽妙な筆で写し、うぶめ・化け猫・夜泣き婆などとともに、shirimeとして
ブヤン島BUYAN 「海の上、大洋の上、ブヤンという島に」——ロシアの呪文と昔話は、しばしばこの定型句で始まる。島には樫の大木が立ち、白く燃える石アラトィリが置かれ、そこがあらゆる力と癒しの源とされた
不周山MOUNT BUZHOU 中国神話で天を支える柱があるとされた西北の山。『山海経』大荒西経に名が見え、『淮南子』天文訓では、共工が争いに敗れて怒り、この山に頭を打ちつけたために天柱が折れ、天の綱が絶えたと語
ブィリチカBYLICHKA ロシア民俗学の用語で、語り手自身または身近な人が超自然的な存在に出会った、という体裁で語られる短い怪異譚を指す。「あったこと(быль)」に由来する名の通り、語り手も聞き手もそれを
ブィリーナBYLINA ロシアの口承叙事詩。多くはキエフ大公ウラジーミルの宮廷を舞台とし、ilya-murometsをはじめとする勇士たちの武勲を語る。「あったこと」を意味する語から19世紀の研究者が名づ
C
カンドンブレCANDOMBLÉ ブラジルで成立したアフリカ系の宗教。奴隷として連れて来られた西アフリカ・中部アフリカの人々が、それぞれの神々の祭祀を新大陸で編み直したもので、由来する伝統ごとにケトゥ(ヨルバ系)、
カノプス壺CANOPIC JARS ミイラ製作の際に摘出した肝臓・肺・胃・腸を別々に納める四個一組の容器。蓋はそれぞれ「ホルスの四人の子」を表し、人頭のイムセティ(肝臓)、ヒヒ頭のハピ(肺)、ジャッカル頭のドゥアムト
カピトーリーヌスの三神CAPITOLINE TRIAD ローマのカピトーリーヌスの丘の神殿に共に祀られた、ユーピテル・ユーノー・ミネルウァの三柱。神殿は王政期のタルクィニウス家の造営に始まり、共和政最初の年(前509年)に奉献されたと伝
カタステリスモスCATASTERISM カタステリスモス(Καταστερισμός)とは、神話上の英雄・ニンフ・動物などが天に上げられ、星や星座へと姿を変えることをいう。多くのギリシア星座は、こうした星辰化の物語によっ
マグ・トゥレドの戦いCATH MAIGE TUIRED アイルランドの神々の戦いと、それを語る中世アイルランド語の物語。同名の戦いは二度あり、第一次はトゥアハ・デ・ダナーンがフィル・ボルグを破った戦い、第二次はフォモール族の圧制を退けた
大釜CAULDRON ケルト語圏の物語と考古資料の双方に現れる、大型の金属製の器。物語のなかでは三つの働きを担う。第一は尽きせぬ食物で、ダグザの釜は誰も満たされぬまま去ることがないとされ、トゥアハ・デ・
ケルト復興CELTIC REVIVAL 19世紀後半から20世紀初頭にかけて、アイルランドとスコットランドを中心に起こった文芸・美術の運動。中世写本の伝承が翻訳・紹介され、ラ・テーヌ様式や島嶼装飾写本の意匠が近代美術に取
ケンタウロマキアCENTAUROMACHY ケンタウロス族とラピタイ族の戦いを指す語。テッサリアのラピタイ王ペイリトオスとヒッポダメイアの婚宴に招かれたケンタウロスたちが、酒に酔って花嫁や女たちを奪おうとし、乱闘に発展した。
チャクラヴューハCHAKRAVYŪHA 『マハーバーラタ』に描かれる軍陣(ヴューハ)の一つで、パドマヴューハとも呼ばれる。上から見ると円盤(チャクラ)あるいは開いた蓮(パドマ)に似た七重の同心構造をなし、内側へ進むほど強
英雄の分け前CHAMPION'S PORTION 饗宴の席で、その場に集まった戦士のうち最も優れた者に与えられる肉の分け前。アイルランド語でクラズミールという。誰が受けるにふさわしいかを決める手続きが、そのまま物語の骨格になる。『
カローンの舟賃CHARON'S OBOL 死者の口に低額の貨幣を一枚含ませる、あるいは遺体や骨壺の傍らに置く葬送の習俗。カローンへの渡し賃と説明され、ギリシア・ローマの墓から広く出土する。ただし出土のありようは文献の説明ほ
チコモストクCHICOMOZTOC ナワトル語で「七つの洞窟の地」。中央高原の諸部族が共有した起源の地であり、絵文書では七つの窪みをもつ山として描かれる。各部族はそれぞれの洞窟から出て移住を始めたとされ、この図式は諸
智拳印BODHYAṄGĪ MUDRĀ 密教の印相の一つ。左手の人差し指を立て、それを右手で握る形をとる。金剛界の大日如来がこの印を結ぶ。立てた指を衆生、握る手を仏の智慧とし、両者が一体であることを示すと解される。これに
チラム・バラムの書BOOKS OF CHILAM BALAM 16〜19世紀のユカタン各地で、マヤ人の書記がユカテク・マヤ語をラテン文字で綴って書き継いだ写本の総称。チュマイェル、ティシミン、マニ、カウアなど、伝来した村の名で呼び分ける。書名
チンワト橋CHINVAT BRIDGE アヴェスター語チンワト・プルトゥ(činuuatō pərətu)、「選別の橋」の意。死後四日目の朝、魂ウルワンはこの橋へ至り、生前の行いによって渡れるかどうかが決まる。義者の前で
チランジーヴィCHIRANJIVI 「長く生きる者」を意味し、この世界期(カルパ)が尽きるまで死なずに生き続けるとされる存在。神々のような絶対の不死ではなく、期限つきの長寿である点が特徴で、多くは恩恵や呪いの結果とし
スラヴ年代記CHRONICA SLAVORUM ホルシュタインの司祭ヘルモルト(Helmold von Bosau)が1167年から1172年頃にかけて著したラテン語年代記。ザクセンとデンマークによるバルト海沿岸スラヴ人の征服と
楚辞CHUCI 戦国期の楚(南方)に発した韻文と、その系譜に連なる作品を集めた詩集。後漢の王逸が注を付した形で伝わる。中国神話にとって重要なのは「天問」篇で、天地の成り立ちから聖王の事績までを百七
ホルス碑板CIPPUS OF HORUS 末期王朝期からプトレマイオス朝にかけて作られた呪術用の石板。中央に幼いホルスが正面を向いて立ち、二匹の鰐を踏み、両手に蛇・蠍・獅子・オリックスを掴む。その頭上にはベスの顔が据えられ
ボルボニクス絵文書CODEX BORBONICUS アマトル紙に屏風折りで描かれたアステカの絵文書。パリのブルボン宮図書館に伝わることからこの名がある。前半はトナルポワリの20のトレセーナを守護神とともに描き、後半は52年の暦周期と
ボルジア絵文書CODEX BORGIA 鹿皮に描かれた屏風折りの絵文書で、征服以前の中央メキシコ(プエブラ=トラスカラ地方とみられる)で作られた。260日暦トナルポワリによる占いのための書物であり、日と方位に神々を配した
テリェリアーノ・レメンシス絵文書CODEX TELLERIANO-REMENSIS 征服後のメキシコで先住民の画工が描き、スペイン人聖職者が注記を書き入れた絵文書。名は所蔵者だったランス大司教シャルル゠モーリス・ル・テリエに由来し、現在はパリのフランス国立図書館に
コフィン・テキストCOFFIN TEXTS 中王国期(前21〜18世紀頃)の木棺の内面に記された葬祭呪文の総称。棺柩文とも訳す。ピラミッド・テキストの呪文を引き継ぎつつ新しい呪文を大量に加え、王のものであった来世を地方の高官
浅瀬の一騎討ちSINGLE COMBAT AT THE FORD 中世アイルランドの英雄譚にくり返し現れる決闘の型。川の渡し場である浅瀬を場とし、両軍が見守るなか一対一で戦う。『クアルンゲの牛捕り』では、クー・フーリンがこの古い作法を持ち出したた
コンティナCONTINA 12世紀のラテン語史料が、バルト海沿岸のスラヴ人の神殿を指して用いた語(contina、複数 continae)。スラヴ語の *kǫtina(「隅」から「小屋・家」)を写したものと
コリカンチャCORICANCHA コリカンチャ(ケチュア語 Quri Kancha「黄金の囲い」)は、インカ帝国の首都クスコの中心に置かれた最重要の神殿である。壁面は金板で覆われていたと伝わり、太陽神intiの像を
コルヌコピアCORNUCOPIA 豊穣の角。果実・穀物・貨幣があふれ出る角形の器で、古代ギリシア・ローマの図像において豊かさと幸運を示す標識として用いられた。由来はゼウスを養った牝山羊アマルテイアの角とする伝えが知
城壁冠MURAL CROWN 城壁と塔をかたどった冠。頭上に都市そのものを載せることで、その神格が都市を守り抱える存在であることを示す。ヘレニズム時代の東地中海で、都市の運命を体現する女神テュケーの標識として定
コヤ・ライミCOYA RAYMI コヤ・ライミ(Quya Raymi「王妃の祭」)は、インカ暦で9月にあたる月の名であり、同月に行われた祭礼を指す。太陽と皇帝に捧げるインティ・ライミが男性原理の祭であるのに対し、こ
楔形文字CUNEIFORM 前3千年紀初頭のシュメールで成立した文字体系。葦を斜めに切ったペンを湿った粘土に押しつけるため、線が楔形になる。絵文字から出発し、やがて音節を表す記号へと展開した。シュメール語のほ
呪詛板DEFIXIO 神格に対して特定の人物への罰を求める文を刻み、聖泉・井戸・墓などに投じた薄い金属板。ラテン語でデフィクシオ、ギリシア語でカタデスモスと呼ぶ。主に鉛や錫合金が用いられた。恋敵・競技の
キュクロプス式石積みCYCLOPEAN MASONRY 巨大な自然石を、ほとんど加工せずに積み上げた古代の石積み技法。ギリシアのミュケーナイやティリンスなど、青銅器時代の城塞にみられる。人の手には負えぬほど巨大な石を用いることから、のち
円筒印章CYLINDER SEAL 円筒形の石や貝に陰刻を施し、粘土板や封泥の上で転がして連続する図柄を写しとる印章。前4千年紀のウルク期に現れ、所有と証明のしるしとして三千年にわたり用いられた。数センチの表面に神々
D
大唐三蔵取経詩話DA TANG SANZANG QUJING SHIHUA 北宋末から南宋にかけて成立したとみられる講釈台本(話本)。玄奘三蔵の取経の旅を語る現存最古の通俗物語で、のちの『西遊記』へ至る系譜の起点に置かれる。ここでは玄奘に従うのは猴行者(こ
ダエーワDAEVA アヴェスター語ダエーワ(daēva)。語源はインド・イラン共通語の *daiva「神」で、サンスクリットのデーヴァ、ラテン語のデウスと同源である。ところがイランではこの語が「斥ける
沈黙の塔TOWER OF SILENCE 丘の上に築かれた円形の露天構造物で、原語ではダフマ(dakhma)という。ゾロアスター教では土・水・火はいずれも清浄な被造物であり、屍の穢れに触れさせてはならないと考えられた。その
ダシャーヴァターラDASHAVATARA ヴィシュヌが世の秩序を回復するために地上へ降るとされる十の化身の系列。一般には、マツヤ(魚)、クールマ(亀)、ヴァラーハ(猪)、ナラシンハ(人獅子)、ヴァーマナ(矮人)、パラシュラ
デア・カエレスティスDEA CAELESTIS ローマがカルタゴの女神タニトを自らの体系に取り込んで成立した女神。「天なる女神」を意味し、ユーノー・カエレスティスとも呼ばれる。ローマ人はタニトをユーノーの一形態と解し、ディアナや
デーロス島DELOS エーゲ海キュクラデス諸島の中央に位置する小島。神話では、海に漂って大陸にも海底にも繋がれていなかったため、ヘーラーの禁令を免れてレートーの出産の地となったとされる。アポローンの誕生
悪魔化DEMONIZATION ある宗教が、隣接する宗教で崇拝されていた神を、自らの体系のなかに悪魔として組み入れ直す働き。バアルの尊称バアル・ゼブル(気高き主)が「蝿の王」ベルゼブブへ、カナンの女神アシュトレト
イナンナの冥界下りDESCENT OF INANNA シュメール語版は約400行、冒頭句から『アンガルタ(大いなる天より)』とも呼ばれる。イナンナは冥界の女王エレシュキガルのもとへ降り、七つの門で装身具と衣を一枚ずつ剥がれ、裸で王座の
デーヴァDEVA インド神話における天上の神々の総称で、語根 div(輝く)に由来する。イランのダエーワ、ラテンのデウスと同源であり、印欧語圏に広く分布する語である。ヴェーダではインドラ、アグニ、ヴ
デーヴィー・マーハートミヤDEVI MAHATMYA 「女神の栄光」を意味し、5〜6世紀頃に成立した『マールカンデーヤ・プラーナ』の一部をなすサンスクリットの聖典。戦女神ドゥルガーが水牛の魔神マヒシャースラを、カーリーが血の魔神ラクタ
デーウォーティオーDEVOTIO 戦局の窮したとき、ローマの将軍が定型の文句を唱えて自らと敵軍を冥界の神々に捧げ、そのまま敵中へ馬を進めた儀礼。リウィウス『ローマ建国以来の歴史』第8巻は、前340年にデキウス・ムス
ダルマDHARMA 語根 dhṛ(支える)に由来し、世界を成り立たせている理法と、人が身分・年齢・立場に応じて果たすべき務めの双方を指す。漢訳は法。ヴェーダの宇宙的秩序リタを引き継ぎながら、個々人の義
法身DHARMAKĀYA 仏の三つのあり方(三身)のうち、姿も形もない真理そのものとしての仏をいう。人間として現れた釈迦は応身、衆生を救うために功徳を積んで成った仏は報身とされ、その根底にあって不生不滅であ
ディアブラーダDIABLADA ディアブラーダは、ボリビアのオルロを中心にアンデス高地で踊られる仮面舞踊で、名は「悪魔の踊り」を意味する。角・牙・見開いた眼をもつ石膏製の巨大な仮面と、刺繍を施した衣装が特徴で、隊
ディー・コンセンテースDII CONSENTES ローマの主要な十二神。ユーピテル、ユーノー、ネプトゥーヌス、ミネルウァ、マールス、ウェヌス、アポロー、ディアーナ、ウゥルカーヌス、ウェスタ、メルクリウス、ケレース。エンニウスが六対
ディルムンDILMUN ペルシア湾の交易を担った土地で、今日のバハレーン周辺にあたるとみられる。実在の地名でありながら、神話のなかでは性格を変え、病も老いも死もなく獅子が獲物を襲わない清浄の地として語られ
ディンシェンハスDINDSENCHAS 「土地の伝承」を意味する、中世アイルランドの地名由来譚の集成。丘・川・平原・塚といった土地の名がどのように付いたかを、神々や英雄の物語に結びつけて語る。11〜12世紀に韻文と散文で
神々の会議DIVINE COUNCIL 至高神が議長を務め、神々が集って王権の帰属や人間の運命を審議する場。古代西アジアの神話に共通して現れる構図で、地上の都市国家の長老会議を天上に投影したものと解される。ウガリットでは
ディーワーリーDIWALI 「灯火の列」を意味する、ヒンドゥー教でとりわけ重んじられる秋の祭り。闇に対する光、無明に対する知の勝利を祝い、家々は油灯(ディーヤ)で飾られる。富と幸運の女神ラクシュミーを家に迎え
地獄NARAKA / DIYU 仏教で、悪業の報いとして衆生が苦を受けるとされる世界。梵語ナラカ(那落迦)の訳語で、六道の最下に置かれる。八熱地獄・八寒地獄など多層の構成が経典に説かれ、罰の種類と期間が細かく数え
ドラウプニルDRAUPNIR オーディンの黄金の腕輪。名は「滴るもの」を意味し、九夜ごとに同じ重さの腕輪を八つ産む。『詩語法』によれば、ロキが首を賭けた勝負のなかでドヴェルグの兄弟ブロックとエイトリ(シンドリと
ドリーミングTHE DREAMING オーストラリアのアボリジナル諸集団に共有される宇宙観の中核概念で、英語ではthe Dreamingまたはthe Dreamtimeと訳され、各言語ではトゥジュクルパ(Tjukurr
ドレスデン絵文書DRESDEN CODEX 現存するマヤの絵文書(樹皮紙を折り畳んだ写本)のうち、最も保存がよく内容の豊かな一点。ドイツ・ドレスデンの図書館が所蔵する。金星の運行表、日月食の予報、農事暦などからなり、雨神チャ
ドルイドDRUID 鉄器時代のガリアとブリテン諸島で、祭祀・裁判・暦・教育を担った知識人の階層。カエサル『ガリア戦記』は、ドルイドが神事を司り、公私の争いを裁き、若者を二十年に及ぶ口伝で教えたと記す。
ドゥアトDUAT 古代エジプトにおける他界。地下とも天空の一部ともされ、位置づけは資料によって揺れる。夜ごと沈んだ太陽神ラーはここを舟で航行し、蛇アペプの妨害を退けて暁に再生する。死者もまた同じ道を
ドヴェルガタルDVERGATAL 『古エッダ』の『巫女の予言』第9〜16節に置かれた、ドヴェルグの名を列挙する一節。「小人の数え歌」の意。物語の筋とは無関係な名簿であるため、後世の挿入と見る説が古くからある。筆頭の
二重信仰DVOEVERIE キリスト教と土着の信仰が併存する状態を指す教会スラヴ語(двоеверие)。ルーシの聖職者が民衆を非難するために用いた語である。ペルーンの職能が預言者エリヤに、ヴェレスが聖ブラシ
E
エッダEDDA 北欧神話を伝える二つの書物の総称。『古エッダ(詩のエッダ)』は作者不明の古い歌謡を13世紀に集めた写本で、『巫女の予言』『ヒュミルの歌』などの神話詩と英雄詩を収める。『スノッリのエ
絵本百物語EHON HYAKU MONOGATARI 天保12年(1841年)に刊行された妖怪画集。『桃山人夜話』ともいう。桃山人(とうさんじん)こと桃花山人の文章に、絵師の竹原春泉斎が挿絵を添えた。全五巻で、各地に伝わる妖怪や怪異を
八大菩薩EIGHT GREAT BODHISATTVAS 大乗経典で一組として列挙される八尊の菩薩。文殊菩薩・普賢菩薩・観音菩薩・勢至菩薩・虚空蔵菩薩・地蔵菩薩・弥勒菩薩・除蓋障菩薩の組み合わせが広く知られるが、経典によって顔ぶれは揺れる
エインヘリャルEINHERJAR 名は「ただ一人で戦う者たち」あるいは「特別に選ばれた者たち」と解される。戦死者のうち選ばれた者がヴァルハラへ迎えられ、昼は互いに斬り結び、夕には傷が癒えてセーフリームニルの肉とヘイ
エレファンティネ三柱神ELEPHANTINE TRIAD ナイル第一急湍にのぞむエレファンティネ島(現アスワン)で、一組として祀られた三神。羊頭のクヌムを父、サテトを母、アヌケトを娘とするが、アヌケトをクヌムの下位の配偶神とみる資料もあっ
エレウシースの秘儀ELEUSINIAN MYSTERIES アテーナイ近郊エレウシースで、デーメーテールとペルセポネーに対して営まれた密儀。母娘の離別と再会の神話を核とし、参入者には死後の幸福が約束された。ギリシア語を解する者であれば奴隷に
エヴァン・マハEMAIN MACHA アルスター・サイクルでコンホヴァル・マク・ネサが治める王都。北アイルランド、アーマー近郊のナヴァン・フォート遺跡に比定され、発掘により前95年ごろに築かれた直径40メートルの巨大な
エンヘドゥアンナENHEDUANNA アッカドのサルゴン王の娘で、ウル市の月神ナンナに仕えるエン女神官の職にあった。父が征服したシュメールの祭祀と自らの王朝を結びつける政治的な任命であったとみられる。『イナンナ讃歌(ニ
エンリルとニンリルENLIL AND NINLIL ニップルを中心に伝わったシュメール語の神話。若い女神ニンリルは母に忠告されながらもエンリルと交わり、月神ナンナを身ごもる。エンリルは「五十の大神」と「運命を定める七柱」に穢れた者と
エネアドENNEAD ヘリオポリスの神学が立てた九柱の神々。アトゥム(ラーと習合)に始まり、シューとテフヌト、ゲブとヌト、そしてオシリス・イシス・セト・ネフティスへ至る系譜をいう。ギリシア語のエンネアス
エヌマ・エリシュENŪMA ELIŠ 古代バビロニアの創造叙事詩で、冒頭の句「上にありしとき(エヌマ・エリシュ)」を題名とする。粘土板に楔形文字で記され、若き神マルドゥクが混沌の海の女神tiamatを討ち、その体を裂い
叙事詩環EPIC CYCLE 『キュプリア』『イーリアス』『アイティオピス』『小イーリアス』『イーリオス落城』『ノストイ』『オデュッセイア』『テーレゴネイア』からなる、トロイア伝説を通して語る叙事詩の連作。前7
ギルガメシュ叙事詩EPIC OF GILGAMESH シュメール語の複数の独立した詩を母胎に、前2千年紀のアッカド語圏で一篇の叙事詩へまとめられた作品。ニネヴェのアッシュルバニパル文庫から出土した十二書板の「標準版」がよく知られる。王
エピゴノイEPIGONI テーバイ攻めに敗れた七将の息子たちを指す語で、「後に生まれた者たち」を意味する。十年後、彼らはデルポイの神託に従ってアルクマイオーンを指揮官に立て、ふたたびテーバイへ攻め上って都市
エリドゥ創世記ERIDU GENESIS 前17世紀頃の書体をもつ断片的な一枚の粘土板で知られ、1914年にアルノ・ポーベルが刊行した。前半では人間と動物の創造、およびエリドゥ、バド・ティビラ、ララク、シッパル、シュルッパ
密教ESOTERIC BUDDHISM 7世紀以降のインドで形成され、中国を経て日本・チベットへ伝わった仏教の潮流。言葉で説かれる教え(顕教)に対し、印を結び、真言を唱え、曼荼羅を観ずるという身体と儀礼をとおして仏と一体
エトルリアの銅鏡ETRUSCAN MIRROR エトルリアで前6世紀から前2世紀にかけて作られた青銅の手鏡。片面を磨いて鏡面とし、裏面に神話の場面を線刻する。現在三千点近くが知られ、そこに刻まれた神名は、文献を残さなかったエトル
エウヘメリズムEUHEMERISM 神々はもともと人間の王・英雄・発明者であり、後世の崇拝によって神格化されたのだとする解釈。メッセーネのエウヘメロス(前4〜3世紀)の著作『聖史』に由来する。シケリアのディオドーロス
エウォカーティオEVOCATIO 敵の都市の守護神に呼びかけ、ローマへ移り住むよう誘う儀礼。攻める側は神殿と祭祀を約束し、神が去った都市は守りを失うと考えられた。前396年、ウェイイー攻略にあたりカミッルスがユーノ
ラーの目EYE OF RA 太陽神ラーの目を独立した女神として扱う観念。ラーから送り出され、その意志を執行する暴力的な力として現れる。担い手は一定せず、ハトホル、セクメト、バステト、テフヌト、ウアジェトなどが
F
飢饉碑文FAMINE STELA アスワン近くセヘル島の花崗岩に刻まれた32欄の碑文。上部にクヌム・サテト・アヌケトの三神と、供物を捧げるジェセル王が彫られる。本文は第3王朝ジェセル王の治世18年に七年続いた飢饉を
ファラヴァハルFARAVAHAR 円環に上半身の人物を載せ、左右に大きく翼を広げた形の意匠。アケメネス朝のペルセポリスやナクシェ・ロスタムの王墓に刻まれ、今日ではゾロアスター教とイラン文化を代表する図像として広く用
祭暦FASTI オウィディウスが、ローマ暦の祭日を1月から6月まで日付順に詩で解説した作品(未完)。各祭の由来を神々との対話や語源説の形で語り、ほかに伝わらない祭祀の細部を多く含む。fortuna
封神演義INVESTITURE OF THE GODS 明代(16世紀)に成立した長編白話小説。許仲琳の作と伝えられるが確証はない。殷の紂王を周の武王が討つという史実の枠に、闡教(せんきょう)と截教(せっきょう)の仙人・道士が宝貝(ぱお
風水FENG SHUI 地形・水流・方位から「気」の流れを読み、住居や墓所の位置と向きの吉凶を判断する中国の術。もとは墓地の選定を扱う堪輿(かんよ)の学に発し、都城や陵墓の造営、住宅の間取りにまで及んだ。
フィン物語群FENIAN CYCLE アイルランド神話の四大物語群の一つで、フィアナ物語群とも呼ばれる。フィン・マックールとフィアナの狩り・恋・戦いを語り、多くをフィンの子オシーンの回想という形式で伝える。12世紀ごろ
フェティアーレスFETIALES ローマの神官団(コッレーギウム)の一つで、二十名からなる。対外関係の宗教的な正当性を保証することを務めとし、条約の締結、賠償の請求、そして宣戦の宣告を担った。宣戦の作法は次のような
フィアナ騎士団FIANNA 中世アイルランド伝承に語られる若い狩人・戦士の集団。土地も家も持たず、夏は森に野営し冬は民家に宿を得て、上王のもとで国境を守ったとされる。入団には武芸だけでなく詩の知識も課された。
五蓋FIVE HINDRANCES 禅定を妨げるとされる五つの心のはたらき。貪欲蓋・瞋恚蓋・惛沈睡眠蓋・掉挙悪作蓋・疑蓋からなる。「蓋」は心を覆うものの意で、瞑想に入る前に取り除くべきものとして、とくに上座部の文献で
五つの太陽FIVE SUNS アステカの創世観で、世界は一度で完成したのではなく、四度の太陽(時代)が生まれては滅び、現在は第五の太陽の下にあるとする。各時代はそれぞれ異なる神が太陽を司り、大風・火の雨・洪水な
洪水神話FLOOD MYTH 神が大洪水によって旧い人類や世界を滅ぼし、わずかな生き残りから新たな世界が始まるとする物語の類型。世界各地に広く分布し、メソポタミアのウトナピシュティム、ギリシアのデウカリオン、ア
フローラーリアFLORALIA 4月28日から5月3日にかけて行われたfloraの祭。前240年に始まり、前173年から毎年の開催となった。人々は花を身につけ、女性は普段は控えられる派手な色の衣をまとった。劇場で
フィレンツェ写本FLORENTINE CODEX フランシスコ会士ベルナルディーノ・デ・サアグンが16世紀後半のメキシコで編んだ全12巻の民族誌。正しくは『ヌエバ・エスパーニャ事物全史』という。トラテロルコの学院で学んだ先住民の助
フォモール族FOMORIANS アイルランド神話に登場する種族。『アイルランド来寇の書』では島に現れた勢力のうち古い層に属し、後続の渡来種族に重い貢納を強いる圧制者として描かれる。一つ目・一本足など不具の造形で語
フォルディキディアFORDICIDIA 古代ローマで4月15日に行われた祭。名は「孕んだ牝牛(forda)」に由来し、その名のとおり、大地の女神テルースに孕んだ牝牛を犠牲として捧げた。伝承では、農耕が振るわなかった時代に
フォルム・ボアリウムFORUM BOARIUM ローマのティベリス川に面した家畜市場。川港と内陸を結ぶ結節点にあたり、市の最古層の祭祀が集中する。herculesの大祭壇アラ・マクシマのほか、fortunaとマートゥータの双子神
養育制度FOSTERAGE アイルランドとウェールズで広く行われた、子を他家に預けて養わせる慣行。中世アイルランド法はこれをアルトラムと呼び、預ける側と預かる側の権利義務を細かく定めていた。物語の世界では、養
四霊FOUR AUSPICIOUS CREATURES 中国で瑞祥をもたらすとされる四種の霊獣——麒麟・鳳凰・霊亀・竜——の総称。『礼記』礼運篇に「麟・鳳・亀・竜、之を四霊と謂う」と見え、いずれも聖王の治世や吉事の前触れとして現れる瑞獣
四凶FOUR PERILS 『春秋左氏伝』文公十八年に見える、舜が四方の辺境へ追放したとされる四つの悪しき存在。渾敦(こんとん)・窮奇(きゅうき)・檮杌(とうごつ)・饕餮を指す。左伝における四凶は、悪徳をこと
四神FOUR SYMBOLS 中国の天文・方位思想における四方の守護獣——東の青龍・西の白虎・南の朱雀・北の玄武——の総称。四象(しじょう)ともいう。天球を四分し、二十八宿をそれぞれ七宿ずつ配して、方位・季節・
トゥアハ・デ・ダナーンの四秘宝FOUR TREASURES OF THE TUATHA DÉ DANANN トゥアハ・デ・ダナーンが渡来にあたって四つの都市から携えてきたとされる四つの宝。ファリアスからは正当な王が乗ると叫ぶ運命の石リア・ファル、ゴリアスからは決して外れないルーの槍、フィ
風神雷神図FŪJIN AND RAIJIN PAINTINGS 風袋から風を吹き出す風神と、輪に並べた太鼓を打ち鳴らすraijinとを一対に配する画題。中国では後漢の画像石にすでに風伯と雷公の対が見え、日本へは千手観音二十八部衆像を介して入った
扶桑FUSANG 中国神話で、東海のかなたの湯谷(とうこく)に立つとされた神樹。『山海経』大荒東経は、この木に十羽の烏が宿り、九羽が枝に、一羽が梢にあって順に空へ昇ると語る。太陽が昇る場所そのものを
未来仏FUTURE BUDDHA 未来仏とは、現在の仏(娑婆世界では釈迦牟尼仏)の教えがやがて滅びたのち、遠い未来にあらためて世に現れ、悟りを開いて人々を救うと約束された仏をいう。仏教では弥勒がこの位置を占め、それ
G
ガッリGALLI 大地母神キュベレーの祭祀に仕えた神官。入信にあたって自ら去勢し、以後は女性の衣装と装身具を身につけ、髪を長く垂らして暮らした。名の由来は諸説あり、アッティスが死んだとされるプリュギ
ガロ=ローマGALLO-ROMAN 前1世紀のローマによる征服から後5世紀にかけて、ガリアで形成されたケルト系とローマ系の混成的な文化を指す語。宗教の面では、現地の神格がローマの神名と並べて祀られるインテルプレタティ
ガナGAṆA 「群れ」「一団」を意味し、シヴァに従う眷属の総称。カイラーサ山に住まい、主が歩むところに付き従う。小人、獣頭、多面多臂など異形の姿をとる者が多く、神々の整った容姿とは対照的に描かれ
ガンダーラ美術GANDHARA ART 現在のパキスタン北西部からアフガニスタン東部にかけての地域で、クシャーナ朝を中心に1〜5世紀に栄えた仏教美術。アレクサンドロス以来この地に及んでいたヘレニズムの造形言語を取り込み、
伽藍神GARANJIN 寺院を守護する神。護伽藍神・守伽藍神・寺神ともいう。興福寺の春日権現、延暦寺の山王権現のように諸大寺には特定の守護神があるが、通例「伽藍神」といえば、禅宗寺院の仏殿等に祀られる道教
ヘスペリデスの園GARDEN OF THE HESPERIDES 世界の西の果て、日の沈む方角にあるとされた果樹園。ガイアがヘーラーの婚礼に贈った黄金の林檎の木が生え、宵の明星の娘たちと呼ばれるニンフ、ヘスペリデスがこれを手入れした。彼女たちが実
画図百鬼夜行GAZU HYAKKI YAGYŌ 絵師の鳥山石燕(1712〜1788)が安永5年(1776年)に刊行した妖怪画集。陰・陽・風の三巻からなり、一体ずつを見開きに配して名を添える。石燕はこののち『今昔画図続百鬼』『今昔
外法GEHŌ 正統な仏法(内法)の外にある術、という意味の語。密教の側から見て正道を外れるとされた呪法を指し、狐・天狗・鬼などの異類を使役して、占い・調伏・蓄財といった現世利益を得る術がこれに数
ゲッシュGEIS アイルランド伝承において個人に課される呪術的な禁忌・誓約。複数形はゲサ(gessa)。生まれつき負うこともあれば、他者から課されることもある。破れば名誉と力を失い、多くは死を招く。
デンマーク人の事績GESTA DANORUM デンマークの聖職者サクソ・グラマティクス(Saxo Grammaticus)が1200年前後に完成させた全16巻のラテン語年代記。前半は伝説時代を扱い、ハディングスやホテルスの物語
ギガントマキアーGIGANTOMACHY オリュンポスの神々と巨人族ギガースとの戦い。ティーターノマキアー後の王権への挑戦として語られ、神々はヘーラクレースの助力を得て勝利した。ペルガモンの大祭壇をはじめ古代美術が最も好ん
祇園信仰GION FAITH gozu-tennoを疫病を鎮める神として祀る信仰。京都東山の感神院祇園社(現・八坂神社)を中心とし、勧請によって全国の祇園社・天王社へ広まった。祟る力の強い神を丁重に祀ることで災
ギータ・ゴーヴィンダGITA GOVINDA 12世紀の詩人ジャヤデーヴァが著したサンスクリットの抒情詩。全12章、24編のプラバンダからなり、各編が8詩節で構成されることからアシュタパディー(八詩節)とも呼ばれる。逢瀬と離別
ギャッラルホルンGJALLARHORN heimdallの持つ角笛。名は「高く響くもの」の意で、吹き鳴らせば九つの世界すべてに届く。ラグナロクの到来を神々に知らせるのはこの音である。『巫女の予言』には、ミーミルの泉に隠さ
グレイプニルGLEIPNIR 狼フェンリルを繋ぐためにドヴェルグが鍛えた紐。『ギュルヴィたぶらかし』によれば、絹のように細く柔らかいが決して切れない。材料は猫の足音、女の髭、山の根、熊の腱、魚の息、鳥の唾——い
黄金時代GOLDEN AGE 人類が労苦も病も知らずに暮らしたとされる、始原の理想の時代。ヘシオドス『仕事と日』は人類の歴史を黄金・白銀・青銅・英雄・鉄の五つの種族(時代)に分け、その最初に黄金の種族を置く。彼
金羊毛GOLDEN FLEECE ボイオーティアの王子プリクソスが継母の企みから黄金の羊に乗って逃れ、コルキスに至って羊をゼウスに捧げたのち、その毛皮を王アイエーテースに贈ったもの。アレースの杜の樫に打ちつけられ、
護摩GOMA / HOMA 炉に火を焚き、木片や穀物などの供物を投じて本尊に祈願する密教の修法。梵語ホーマの音写で、インドのヴェーダ祭式における火の供犠に淵源をもつ。仏教はこれを取り込み、火を仏の智慧に、供物
権現GONGEN 日本の神の神号の一つ。日本の神々を仏教の仏や菩薩が「仮の姿」で現れたものとする本地垂迹思想による神号である。「権」は「臨時の」「仮の」の意で、仏が仮に神の形をとって現れたことを示す
ゴーピーGOPI ブラジ地方の牛飼いの娘たち。『バーガヴァタ・プラーナ』でクリシュナを慕う者として描かれ、家庭の務めを離れてまで神のもとへ赴く姿から、無条件の献身(バクティ)の典型とされてきた。ヴィ
ゴルゴンGORGON ギリシア神話に登場する怪物の三姉妹。海の老神ポルキュスと妹ケートーの娘とされ、ステンノー、エウリュアレー、メドゥーサからなる。蛇の頭髪と、目を合わせた者を石へ変える視線を持つ。三姉
ゴルゴネイオンGORGONEION ゴルゴーンの首を象った意匠。アテーナーの胸当てや楯の中央に据えられ、見る者を石に変える視線をそのまま魔除けに転用する。アルカイック期には歯を剥いた異形として、古典期以降は端正な女の
御霊信仰GORYŌ SHINKŌ 政争に敗れ、あるいは無実のうちに死んだ者の霊(御霊)が疫病や天災を起こすと考え、これを神として祀って鎮めようとする信仰。平安時代に顕著となり、貞観五年(八六三)に神泉苑で修された御
ゴスフォース十字架GOSFORTH CROSS イングランド、カンブリア州ゴスフォースの聖マリア教会墓地に立つ、高さ4メートルあまりの赤砂岩の十字架。10世紀前半のものとされる。ノルド人が入植した地域の記念碑で、磔刑の場面とラグ
ゴットランドの絵画石GOTLAND PICTURE STONES バルト海のゴットランド島に集中して見つかる、図像を彫った石碑群。5世紀から11世紀にわたり、四百点近くが知られる。多くは教会の床下や道の敷石に転用されていたものが、19世紀末以降の
降魔MĀRAVIJAYA 降魔(ごうま)とは、釈迦が菩提樹下で悟りを開く直前、修行を妨げようとする魔王マーラの誘惑と攻撃を退けた出来事をいう。マーラは美女や軍勢、武器や暗闇を差し向けたが、釈迦は動じず、大地
グリモワールGRIMOIRE 中世後期から近世にかけてヨーロッパで書写・流布した魔術書の総称。悪魔や霊の名、その序列と職能、召喚と使役の手順を列挙する。七十二の悪魔を数える『ゴエティア』、『大奥義書』『術士アブ
グングニルGUNGNIR オーディンの持つ槍。『詩語法』によれば、lokiがシヴの黄金の髪の償いにドヴェルグ「イーヴァルディの息子たち」へ作らせた三つの宝の一つで、髪と船スキーズブラズニルと同時に鍛えられた
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八部衆EIGHT LEGIONS 仏法を守護する八種の異類の総称で、天龍八部とも呼ぶ。天・竜・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩睺羅伽からなり、いずれもインド由来の神霊や霊獣が仏教に取り込まれたものである。『
ハーヴグーヴァHAFGUFA 「海の靄」を意味する古ノルド語。13世紀半ばのノルウェーの教訓書『王の鏡(コヌングス・スクッグシャー)』が、グリーンランド近海の怪物として記す。体があまりに大きいため島か岩礁と見ま
羽衣伝説HAGOROMO LEGEND 水浴する天女の衣を人が隠したために、天女が天に帰れず地上に留まるという説話の型。日本では風土記の逸文に古い形が伝わる。『丹後国風土記』逸文の奈具社縁起では、比治山頂の真奈井で水浴し
ハイヌウェレ型神話HAINUWELE-TYPE MYTH 殺害された神や少女の遺体の各部から、栽培植物が生じたと語る起源神話の類型。ドイツの民族学者アドルフ・イェンゼンが、インドネシア・セラム島のウェマーレ族に伝わる少女ハイヌウェレの伝承
半跏思惟CONTEMPLATIVE POSE 半跏思惟とは、片方の足をもう一方の腿に乗せて腰掛け(半跏)、片手の指を軽く頬に当ててもの思う姿(思惟)をとる仏像の様式である。衆生の救済を思案する菩薩の内省を表すとされる。インドや
ハルスペクスHARUSPEX 犠牲獣の内臓、とりわけ肝臓のかたちを読んで神意を知る占い、およびそれを行う占い師。エトルリアに由来し、ローマは共和政期を通じてエトルリア出身の専門家を招き、のちに公の占い師団として
初夢HATSUYUME 日本で、新年に初めて見る夢。元日から二日、あるいは二日から三日の夜のものとするなど時期には諸説がある。その内容で一年の吉凶を占う習俗があり、「一富士二鷹三茄子」の言い回しはこの吉夢
流行神HAYARIGAMI ある神仏の霊験が評判となり、短期間に多くの参詣者を集めては、やがて熱が引いて忘れられていく現象、およびその対象となった神をいう。近世の都市に多く、疫病・災害・経済変動といった不安を
隼人HAYATO 古代の南九州(薩摩・大隅)に居住したとされる集団の呼称。律令国家との間にたびたび衝突があり、養老四年(七二〇)の隼人の乱を最後に服属したとされる。以後は隼人司のもとで宮廷の警護や、
首級崇拝HEAD CULT 首を人の力と魂の座とみなす観念。古典古代の著述家は、ケルト人が討った敵の首を馬の首にかけて持ち帰り、家の入口に釘で留めたと伝える。南フランスのロクペルテューズやアントルモンの聖所か
平家物語HEIKE MONOGATARI 平家一門の興亡を描く軍記物語。十三世紀前半までに成立し、琵琶法師が語り物として全国に伝えた。諸本が多く、覚一本などの語り本系と、読み物として増補された『源平盛衰記』などの読み本系に
ヘイムスクリングラHEIMSKRINGLA スノッリ・ストゥルルソンが1230年ごろに編んだノルウェー王たちのサガ集。書名は冒頭の語「世界の円環」に由来する。第一部『ユングリング家のサガ』は、オーディン以下の神々を、アジアか
ヘーライア祭HERAIA ヘーラーに捧げられた祭。アルゴスのものが名高く、女神像を牛車で神域へ運び、百頭の牛を犠牲にした(ヘカトンベー)。オリュンピアでも同名の祭が四年ごとに行われ、未婚の少女たちが短い衣で
紋章学HERALDRY 中世ヨーロッパに発達した、紋章の意匠と規則を体系化する学問・実務。盾や旗に描かれる図形によって個人・家門・都市を識別した。獅子や鷲とならんで、竜・ワイバーン・コカトリス・バジリスク
ヘルマHERMA 道端や境界、家の戸口に立てられた四角柱の標識。上端にヘルメースの頭部を彫り、柱の中ほどに男根を突き出させた。もとは旅人が石を積んだ塚であり、前6世紀のアテーナイでヒッパルコスがこれ
ヘルメス・トリスメギストスHERMES TRISMEGISTUS ヘレニズム期のエジプトで、知恵と書記の神トートとギリシアの神ヘルメースとが習合して生まれた伝説上の賢者。「三重に偉大な」を意味する名をもち、神とも太古の賢人とも見なされた。彼の名に
ヒエロス・ガモスHIEROS GAMOS 「聖婚」。神と女神の婚姻を儀礼として再演する祭祀。ギリシアではゼウスとヘーラーの婚姻が各地の祭で行われ、サモスやクノーソスに古い形が残る。メソポタミアの王とinannaの婚姻儀礼も
ヒラニヤガルバHIRANYAGARBHA 「黄金の胎児」を意味するサンスクリット語。『リグ・ヴェーダ』10巻121歌に、原初の水に生じ、そこから万物が展開する胚として現れる。後のブラーフマナ文献・プラーナ文献では宇宙卵とし
ヒルピー・ソーラーニーHIRPI SORANI 「ソーラーヌスの狼たち」の意(ヒルプスはサビニ語で狼を指す)。ソラクテ山のsoranusに仕えた祭司の一族で、年ごとの祭に燃える薪の上を裸足で歩き、火傷を負わなかったと伝えられる。
放生会HŌJŌE 殺生を戒める仏教の思想に基づき、捕らえた生き物を放つ法会。日本では宇佐八幡宮に始まると伝えられ、養老四年(七二〇)の隼人の乱で多くを殺したことへの償いとして修められたという由緒が語
ホメーロス風讃歌HOMERIC HYMNS ホメーロスの名に仮託された、個々の神を讃える詩の集成。実際の成立は前7世紀から前4世紀頃に散らばり、作者もホメーロスではない。長篇はアポローン・ヘルメース・アプロディーテー・デーメ
本地垂迹HONJI SUIJAKU 日本で神と仏を結びつけた説。仏・菩薩が本地(本体)であり、日本の神々はそれが姿を変えて現れた垂迹であるとする。奈良時代の神宮寺建立に萌芽があり、平安中期以降に個々の神と仏の対応が定
角冠HORNED CROWN 前3千年紀以降のメソポタミア美術で、人物像が神であることを示す標識として用いられた頭飾り。牡牛の角を左右に張り出させ、これを幾重にも重ねて円錐状に積む。角の段数が神格の位階に対応す
ワカHUACA ワカ(ケチュア語 wak'a)は、アンデスの人々が聖性を認めた対象の総称である。山や岩、泉、洞窟といった自然物から、祖先のミイラ(マルキ)、神像、境界標に至るまで、種類は幅広い。ワ
淮南子HUAINANZI 前2世紀、前漢の淮南王劉安が学者を集めて編ませた思想書。全21巻。道家を軸に諸家の説を集成した百科全書的な書物で、中国神話の断片を多く伝えるため神話研究の基本資料となる。女媧が五色
黄粱の夢GOLDEN MILLET DREAM 人の世の栄華のはかなさをいう故事。唐の沈既済『枕中記』が伝えるもので、邯鄲の宿で立身を願う若者盧生が道士呂翁から枕を借りて眠り、科挙に及第して栄達し、罪を得て左遷され、また返り咲い
ワロチリ写本HUAROCHIRÍ MANUSCRIPT 16世紀末に古典ケチュア語で書かれた文書。ペルーのワロチリ地方に伝わる神話・宗教観念・慣習を記す。先住民の言語で記された、アンデスの伝統的信仰を伝える唯一の文献であり、「アンデスの
ウェイ・トソストリHUEY TOZOZTLI シウポワリ(365日暦)の第4月にあたり、グレゴリオ暦の4月から5月頃に営まれた。名は「大いなる徹夜」ほどの意で、これに先立つ第3月トソストントリ(小さな徹夜)と対をなす。播種を控
人身供犠HUMAN SACRIFICE 神への供物として人間の生命を捧げる祭祀。世界の古代宗教に広く見られるが、アステカではとりわけ組織的に営まれた。太陽を運行させて世界を保つには神々の血が要り、人もそれに応えねばならな
フースドラーパHÚSDRÁPA ウルヴ・ウッガソンが985年頃に詠んだスカルド詩。『ラクスデーラ・サガ』によれば、首長オーラーヴ・パーイがヒャルザルホルトに建てた館の婚礼の宴で披露された。館の壁面を飾る神話の場面
百怪図巻HYAKKAI ZUKAN 江戸中期の画家・佐脇嵩之(1707〜1772)が元文2年(1737年)に描いた妖怪絵巻。全三十図を一体ずつ並べて名を添える図鑑的な構成をとる。奥書によれば狩野元信の筆と伝えられた写
百器徒然袋HYAKKI TSUREZURE BUKURO 鳥山石燕の妖怪画集四作の最後にあたり、天明四年(一七八四)に上中下三巻で刊行された。『画図百器徒然袋』とも呼ぶ。『百鬼夜行絵巻』に描かれた器物妖怪を下敷きとし、その器物にまつわる故
百鬼夜行絵巻HYAKKI YAGYŌ EMAKI 妖怪たちが夜の道を連れ立って行く「百鬼夜行」を主題とした絵巻の総称。最も古い作例とされるのは大徳寺塔頭真珠庵に伝わる一巻(室町時代・重要文化財)で、土佐光信の筆と伝えられてきた。詞
百物語HYAKU MONOGATARI 怪談を語り合う会の形式。行燈に青い紙を貼り、百本の灯心を立てて、一話語り終えるごとに一本ずつ消していく。灯が尽きて闇となる百話目に怪異が現れるとされ、多くは九十九話でやめるのが常で
合成獣HYBRID CREATURE 複数の動物——多くは獅子・山羊・蛇・鷲・人などの部分を一体に接ぎ合わせた、神話や伝説上の生き物を指す。ギリシアのキマイラやスフィンクス、グリフォン、エジプトやメソポタミアの獣頭神・
ヒュペルボレオイHYPERBOREANS 北風ボレアースの彼方(ヒュペル+ボレアース)にあるとされた土地と、そこに住む人々。ヘーロドトスやピンダロスの伝えるところでは、住民は病も老いも戦も知らず、長寿を全うして飽きれば海に
日向三代THREE GENERATIONS OF HYŪGA 高天原から降ったニニギと、その子ホオリ、さらにその子ウガヤフキアエズの三代を指す呼称。舞台がいずれも日向(現在の宮崎県から鹿児島県にかけて)とされることによる。天照大神から数える地
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イファIFÁ 西アフリカのヨルバ人に伝わる占いの体系であり、同時にそこで唱えられる口承詩の総体を指す。知恵の神orunmilaに帰され、司祭はババラウォ(秘儀の父)と呼ばれる。棕櫚の実イキンや占
イレ・イフェILE-IFE ナイジェリア南西部オスン州にあるヨルバ人の聖都。単にイフェとも呼ぶ。ヨルバの伝承では、至高神の命によってここに大地が造られ、最初の人間が創られたとされ、各地の王家はこの地から分かれ
イーリアスILIAD 前8世紀末頃の成立とされるホメーロスの叙事詩。全24巻、六脚韻。トロイア戦争の全体ではなく、十年目に生じたアキレウスとアガメムノーンの不和から、パトロクロスの死、ヘクトールの殺害と
インボルクIMBOLC ケルト暦の四大祭の一つで、2月1日ごろに行われた。アイルランドの伝統では春の初日にあたり、羊の出産と乳の出はじめに結びつけられる。語源は「腹のなかに」あるいは「乳」を意味する語に遡
イムラヴIMMRAM 中世アイルランド文学の物語区分の一つで、「漕ぎ渡ること」を意味する。主人公が西の海へ乗り出し、島ごとに異なる異界を訪ね歩く。『ブランの航海』『マイル・ドゥーンの航海』が代表作で、キ
参籠INCUBATION (ENKOIMESIS) 病を得た者が神殿に泊まり込んで眠り、夢のうちに神からの治療やお告げを授かろうとする古代の宗教習俗。ギリシア語ではエンコイメーシスと呼ばれる。とりわけ医神アスクレーピオスの聖所(アス
稲生物怪録INŌ MONONOKE ROKU 備後国三次(現・広島県三次市)の少年、稲生平太郎(のちの武太夫)が、寛延2年(1749年)の7月、一箇月のあいだ毎夜おびただしい妖怪に見舞われながら、ついに屈しなかったと語る怪談。
インテルプレタティオ・ゲルマーニカINTERPRETATIO GERMANICA ゲルマン語圏の人々が、ローマの神々を自分たちの神の名で読み替えた解釈。ローマ側からの読み替え(インテルプレタティオ・ロマーナ)と向きが逆である。曜日名に痕跡が濃い。dies Mer
インテルプレタティオ・グラエカINTERPRETATIO GRAECA ギリシア人が異民族の神を自分たちの神の名で呼び、対応づけた解釈。ヘロドトス『歴史』第2巻がエジプトの神々をゼウス(アメン)、ディオニューソス(オシリス)、アテーナー(ネイト)と呼び
インテルプレタティオ・ロマーナINTERPRETATIO ROMANA 異民族の神を自民族の神の名で呼び、対応づけて理解する古代の解釈慣行。タキトゥス『ゲルマニア』の語に由来する。ローマ人がゼウスをユーピテル、ヘルメースをメルクリウスと同定したのが代表
異類婚姻譚INTERSPECIES MARRIAGE TALE 人と、動物・神・妖怪など人ならざるものとの結婚を語る説話の型。日本の例は「鶴女房」「蛇婿入り」「狐女房」のように、正体が露見して相手が去る破局型が多いのが特徴とされる。神話では、海
伊勢神宮ISE GRAND SHRINE 三重県伊勢市に鎮座する神社。正式名称は単に「神宮」という。五十鈴川のほとりに天照大神を祀る皇大神宮(内宮)が、そこから離れた山田原に豊受大神を祀る豊受大神宮(外宮)があり、両宮とそ
伊勢神道ISE SHINTŌ 鎌倉時代後期、伊勢神宮外宮の神職である度会行忠・度会家行らによって唱えられた神道説。度会神道、外宮神道とも呼ばれる。偽書とされる『神道五部書』を根本の経典とする。教説の核は祭神論に
イスフェトISFET 古代エジプトの世界観で、真理と秩序の原理マアトに対立する、混沌・不正・虚偽・暴力の原理。世界は本来マアトによって整えられているが、たえずイスフェトの脅威にさらされており、これを退け
イシェルISHERU カルナック南のムト神域にある馬蹄形の聖池。神殿を三方から抱くように掘られ、同種の池はブバスティスなど獅子の女神を祀る聖域にも見られる。ムトは「イシェルの女主人」と呼ばれ、ラーの目と
イシュタル門ISHTAR GATE 前569年頃、ネブカドネザル2世がバビロン内城の北側に築いた第八の門。瑠璃を模した深い青の釉薬煉瓦で覆われ、マルドゥクの神獣ムシュフシュとアダドの野牛が浮彫で交互に並ぶ。門から市内
イストミア大祭ISTHMIAN GAMES コリントス地峡のポセイドーン聖域で二年ごとに開かれた競技祭。オリュンピア・ピューティア・ネメアと並ぶ四大祭の一つで、勝者は松の冠を受けた。海と陸の結び目にあたる地峡という土地柄が、
イシュイプトラIXIPTLA 祭に先立って選ばれた者が神の衣裳と持物を与えられ、一定の期間その神として遇され、祭の終わりに犠牲とされた。人だけでなく、像や練り粉で造られた形代もイシュイプトラとなりえた。神が像に
J
ヤルンヴィドJÁRNVIÐR 『巫女の予言』に現れる森で、名は「鉄の森」を意味する。ミズガルズの東にあり、そこに住む老いた女巨人が「フェンリルの眷属」を産み育てると語られる。『ギュルヴィたぶらかし』はこの女巨人
ジャータカJĀTAKA 釈迦が悟りを開く以前、幾度もの前世で積んだ善行を語る仏教説話群。パーリ語聖典には五百余の話が収められ、菩薩は王・商人・動物などさまざまな姿で登場する。布施・忍辱といった徳目を物語と
郊祀SUBURBAN SACRIFICE 都城の郊外に築いた祭壇で天地を祀る国家儀礼。冬至に南郊の円形の祭壇(圜丘)で天を、夏至に北郊の方形の祭壇(方沢)で地を祀るのを基本形とし、天は円、地は方とする宇宙観を配置そのもので
神武東征JIMMU'S EASTERN EXPEDITION 『古事記』中巻と『日本書紀』巻第三が伝える、神日本磐余彦(かむやまといわれびこ、のちの神武天皇)が日向を発ち、瀬戸内海を東へ進んで大和を平定し、橿原宮で即位するまでの一連の物語。当
浄土JŌDO / PURE LAND 煩悩に汚れたこの世(穢土)に対し、仏が主宰する清らかな国土をいう。仏の数だけ浄土があるとされ、薬師如来の東方浄瑠璃世界、弥勒菩薩の兜率天などが説かれるが、東アジアで圧倒的に広まった
ヨトゥンJÖTUNN 北欧神話に登場する巨人の一族で、原初の存在ymirに始まるとされる。神々のアース神族としばしば敵対し、山や氷、海といった荒ぶる自然の力を体現する。住処はヨトゥンヘイム。知恵や富をも
浄玻璃鏡MIRROR OF KARMA 閻魔の法廷に据えられるとされる鏡。業鏡(ごうきょう)ともいう。亡者が生前に行ったことをことごとく映し出し、審理の場でそのまま示すため、いかに言い繕っても偽りはただちに露見するとされ
西遊記JOURNEY TO THE WEST 明代(16世紀)に成立した長編白話小説。呉承恩の作と伝えられる。唐の高僧玄奘(三蔵法師)が経典を求めて天竺へ旅した史実を核に、孫悟空・猪八戒・沙悟浄ら従者と道中の妖魔との戦いを描く
パリスの審判JUDGEMENT OF PARIS 最も美しい者に、と投じられた黄金の林檎をめぐり、ヘーラー・アテーナー・アプロディーテーの三女神がトロイアの王子パリスに判定を仰いだ話。パリスは最も美しい女を約束したアプロディーテー
十二天TWELVE DEVAS 密教で仏法と修法の道場を守護する十二の天部。東の帝釈天、南東の火天、南の焔摩天、南西の羅刹天、西の水天、北西の風天、北の毘沙門天、北東の伊舎那天という八方位に、上の梵天・下の地天と
十王TEN KINGS OF HELL 死者が冥途で受ける裁きを担う十人の王。晩唐に撰述された偽経『預修十王生七経』により、道教の冥界観と仏教の地獄が結びついて成立した。初七日から三回忌までの十度の法要に対応し、秦広王に
ジョーティシャJYOTISHA インドの天文学と占星術を包含する学問で、ヴェーダを補助する六学(ヴェーダーンガ)の一つに数えられる。現存最古の『ヴェーダーンガ・ジョーティシャ』は祭式の日取りを定めるための暦法書で
K
カーKA エジプトが人を構成する要素の一つとして数えた生命力。誕生のとき本人とともに形づくられ、死後は墓に留まって供物を受け取り続けるとされた。クヌムは轆轤の上で人の身体とカーを同時に捻り出
カリキ・ペレホージエKALIKI PEREKHOZHIE 聖地巡礼を経験した、あるいは巡礼を装った遍歴の物乞い歌い手。多くは盲人で、数人ずつ組を作って村を巡り、聖者伝や世界の終わりを歌う宗教詩(ドゥホーヴヌィ・スチフ)を歌って施しを受けた
カリノフ橋KALINOV BRIDGE ロシアの昔話と叙事詩に現れる橋。火の川スモロジナに架かり、生者の世界と死者の国とを隔てる。名は「カリナ(ガマズミ)の」とも「焼けて赤い」とも解され、定説はない。物語のなかでこの橋は
劫KALPA インドの宇宙論における時間の単位。一劫はブラフマーにとっての一日にあたり、人間の年で43億2千万年とされる。同じ長さの夜が続き、そのあいだ世界は眠る。ブラフマーの寿命は百年で、それ
神産みKAMIUMI 国産みによって島々を生んだイザナギとイザナミが、続いて家宅・海・風・木・山・野などを司る神々を生んだと語る神話。『古事記』は三十余柱を列挙する。この系列は、火の神kagu-tsuc
カムテフKAMUTEF エジプト語 kꜣ-mwt.f、「己が母の牡牛」を意味する称号。母である女神に自ら子を宿らせ、その子として生まれ直す——父も自分、子も自分という循環を言い表す。もとはミンの称号で、ア
勧請KANJŌ 本社の神霊を分けて新たな社に迎え祀ること。日本の神は分けても減じないと観念されたため、この方式によって同じ神を各地で祀ることが可能になった。稲荷・hachiman・天神といった信仰
観音経UNIVERSAL GATE CHAPTER 『妙法蓮華経』第25「観世音菩薩普門品」の通称。観音の名を称える者は火にも水にも刃にも害されないと説き、救うべき相手に応じて三十三の姿に身を変えて現れる(三十三身)と語る。鳩摩羅什
カルマKARMA 行為と、それが必然的に生む結果との連関を指す。漢訳は業(ごう)。もとはヴェーダの祭式行為そのものを指す語であったが、ウパニシャッド以降、思い・言葉・行いのすべてが果報を生み、次の生
カタバシスKATABASIS 「下ること」を意味するギリシア語で、生きた者が冥界へ降りて帰還する物語の型を指す。霊を地上へ呼び上げるネキュイアと対をなす。ギリシアではケルベロスを連れ出したヘーラクレース、妻を求
カウラヴァKAURAVA 広義にはクル族の子孫全体を指すが、『マハーバーラタ』では通常、盲目王ドリタラーシュトラと妃ガーンダーリーの百人の息子を指す。ガーンダーリーが産み落とした鉄のように堅い肉塊を、聖仙ヴ
カヴァディ・アッタムKAVADI AATTAM 南インドの軍神ムルガンに捧げられる巡礼の行。語義は「重荷の踊り」で、信者は飾り立てた棒状の荷「カヴァディ」を肩に担ぎ、打楽器の律動に合わせて踊りながら参道を進む。多くは病者の平癒を
ケニングKENNING 古ノルド語や古英語の詩に用いられる迂言的な比喩。事物を直接名指さず、海を「鯨の道」のように言い換える。とりわけスカルド詩では神話が前提になる。黄金を「シヴの髪」と呼ぶには、ロキがト
ケーリューケイオンKERYKEION ヘルメースの持つ伝令杖。二匹の蛇が絡み合い、上端に翼を戴く。ラテン語ではカドゥケウス。伝令の身分を示す標識であり、これを掲げる者は敵中でも不可侵とされた。争う者を和解させ、人を眠ら
フワルナフKHVARENAH アヴェスター語フワルナフ(xᵛarənah)、中期ペルシア語フワッラ、新ペルシア語ファッル。「輝き」を原義とし、王権と英雄的な力の源として語られる。ヤシュト第19歌はこの光輝の来歴
黄表紙KIBYŌSHI 江戸中期、安永四年(一七七五)の『金々先生栄花夢』を画期として流行した草双紙の一種。黄色い表紙にちなむ呼称で、絵を主体に本文を余白へ流し込む体裁をとる。大人向けの洒落本的な機知と諷
記紀KIKI (KOJIKI AND NIHON SHOKI) 『古事記』(712年)と『日本書紀』(720年)を合わせた呼称である。ともに天皇家の由来を語る国家的な編纂物だが、古事記が国内向けの物語性を重んじるのに対し、日本書紀は漢文の編年体
鬼門KIMON 陰陽道・道教の方位観で、北東を鬼の通り道として忌む考え。十二支では丑と寅にあたるため丑寅とも呼ぶ。oniが牛の角を生やし虎の皮を身に着ける姿は、この方位の組み合わせから生まれたとす
キスプKISPU 月の定まった日に営まれた死者供養の儀礼。食物を供え、粘土の管を通して墓に水を注ぎ、祖先の名を順に呼び上げる。冥界の死者は生者の注ぐ献水によってのみ渇きを癒せるとされたため、この務め
今昔画図続百鬼KONJAKU GAZU ZOKU HYAKKI 絵師の鳥山石燕が安永8年(1779年)に刊行した妖怪画集。雨・晦・明の三巻からなり、『画図百鬼夜行』の続編にあたる。前作が図と名のみであったのに対し、本作以降は一体ごとに解説や讃の
今昔百鬼拾遺KONJAKU HYAKKI SHŪI 鳥山石燕の妖怪画集四作のうち第三作で、天明元年(一七八一)に刊行された。上中下の三巻をそれぞれ「雲」「霧」「雨」と題し、天象になぞらえて妖怪を配する構成をとる。『画図百鬼夜行』『今
今昔物語集KONJAKU MONOGATARISHŪ 平安時代後期、12世紀前半に成ったとみられる説話集。編者は未詳。天竺(インド)・震旦(中国)・本朝(日本)の三部構成で、全31巻に千余話を収める(巻8・18・21は伝わらない)。各
クーロスKOUROS 前7世紀から前5世紀初頭のギリシアで作られた、直立する裸体の青年像。左足をわずかに前に出し、両腕を体側に下ろし、口許にアルカイック・スマイルを浮かべる型で、正面性の強い構成にはエジ
赤い隅KRASNY UGOL ロシアの農家において、竈の対角にあたる室内の一隅を指す。「赤い」は古い語義では「美しい」「最上の」を意味する。聖像を掲げ、その下に食卓を据え、家長と客がそこに座った。婚礼でも葬儀で
クリスKRIS インドネシア、マレーシア、フィリピン南部などに広く分布する短剣。波形の刃をもつ形が有名だが、直刃のものも多い。鍛接によって生じる縞模様パモールが珍重され、刀身そのものに霊力が宿ると
クシャトリヤKSHATRIYA 古代インドの四姓(ヴァルナ)のうち、祭官バラモンに次ぐ第二の階層で、王族と武人がこれに属する。統治と防衛を務め(ダルマ)とし、戦場で退かないこと、挑まれた勝負を断らないことが規範と
クドゥルKUDURRU 王が臣下に土地を下賜した記録を刻み、神殿に納めた石碑。文面の上部や側面には神々の標章が段状に並べられ、契約の破棄に対する呪詛の担保とされた。鋤、止まり木の鳥、三叉の稲妻、犬、三日月
鯨供養KUJIRA KUYŌ 捕鯨によって命を奪った鯨を弔う営み。捕鯨の盛んだった地域ほど篤く行われ、鯨墓・鯨塚が築かれ、寺には過去帳や位牌が納められた。山口県長門市の向岸寺には胎児の鯨を葬った鯨墓があり、鯨に
熊野三山KUMANO SANZAN 紀伊半島南部に鎮座する熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社の総称。三社はもと別個の社であったが、平安中期以降に互いの祭神を勧請し合い、一体の信仰圏をなした。本地垂迹のもとで熊野
クマーラサンバヴァKUMĀRASAMBHAVA 5世紀頃の詩人カーリダーサによるサンスクリットの叙事詩(カーヴィヤ)。題は「クマーラ(スカンダ)の誕生」を意味し、ヒマーラヤの娘パールヴァティーの苦行、シヴァとの結婚、そして軍神の
国産みKUNIUMI (BIRTH OF THE LAND) 天浮橋に立ったイザナギとイザナミが天沼矛(あめのぬぼこ)で海をかき混ぜ、矛先から滴った潮が凝って淤能碁呂島(おのごろじま)となる。二神はそこに降りて結婚し、大八島(本州・四国・九州
国譲りKUNIYUZURI okuninushiが築いた葦原中国を、高天原の神々へ明け渡したと語る神話。度重なる使者の失敗ののち、『古事記』ではtakemikazuchiが出雲の稲佐の浜に降り、波の穂に逆立て
クンティレト・アジュルドKUNTILLET AJRUD シナイ半島北東部、ネゲヴ南部の交易路上にある前9〜前8世紀の遺跡。1975〜76年の発掘で、壁と大型の貯蔵壺(ピトス)に記された多数のヘブライ語碑文と図像が見つかった。そのうち「サ
クルクシェートラの戦いKURUKSHETRA WAR 『マハーバーラタ』の中心をなす戦い。十八日間続き、パーンダヴァ側七軍、カウラヴァ側十一軍がデリー北方のクルクシェートラの野で激突した。開戦にあたって戦意を失ったアルジュナにクリシュ
狂歌百物語KYŌKA HYAKU MONOGATARI 嘉永六年(一八五三)に刊行された狂歌集。天狗・河童・雪女・noppera-boなど妖怪を題として詠んだ狂歌を集め、竜斎閑人正澄の挿絵を添える。百物語の名を冠するが怪談集ではなく、妖
L
ヘーラクレースの十二功業LABOURS OF HERACLES ヘーラクレースがミュケーナイ王エウリュステウスの命で果たした一連の難行。ネメアーの獅子、レルネーのヒュドラー、ケルベロスの連行などからなり、幻獣退治の話型がここに集中する。十二とい
ラビュリントスLABYRINTH ギリシア神話で、名匠ダイダロスがクレタ王ミーノースの命によって築いた迷宮。牛頭人身の怪物ミーノータウロスを閉じ込めるためのもので、ひとたび足を踏み入れれば二度と出口にたどり着けぬほ
帰らざる国LAND OF NO RETURN シュメール語でクル・ヌ・ギ(kur-nu-gi₄)、アッカド語でエルツェトゥ・ラ・ターリと呼ばれた冥界の別称。地の下に広がる暗く乾いた洞のような場所とされ、そこに降った者は二度と戻
ラピテース族LAPITHS テッサリア北部のペーネイオス川流域に住んだと伝えられる部族。王イクシーオーンとその子ペイリトオスの名で知られる。ペイリトオスの婚礼に招かれたケンタウロス族が酒に酔って花嫁を奪おうと
アイルランド来寇の書LEBOR GABÁLA ÉRENN 11世紀以降に編まれたアイルランドの擬史書。ノアの洪水以後、島に相次いで渡来した諸種族の系譜を、聖書の世界史に接続する形で語る。トゥアハ・デ・ダナーンもその一つとして扱われ、異教の
レクティステルニウムLECTISTERNIUM 神像を寝椅子に並べ、供物の食卓を据えて饗応するローマの儀礼。ギリシア由来で、前399年、疫病に際してシビュラの書の託宣により初めて行われた。このとき迎えられた神々のなかにネプトゥー
ソロモンの小さな鍵THE LESSER KEY OF SOLOMON 17世紀に編まれた西欧の魔術書(グリモワール)。『レメゲトン』とも。五部から成り、第一部「ゴエティア」がソロモン王の使役したとされる七十二柱の悪魔を、位階・姿・能力・印章とともに列
亜麻布の書LIBER LINTEUS エトルリア語で書かれた亜麻布の巻物。前3世紀のものと推定される。エジプトでミイラの包帯に裁ち直されて用いられたために失われず、19世紀にザグレブへ渡って現在クロアチア考古学博物館が
リーベラーリアLIBERALIA 3月17日に行われたliberの祭。神の携行祭壇が市区(ウィークス)を巡り、蔦の冠をかぶった老いた女祭司たちが蜂蜜菓子を売って、買い手に代わって犠牲を捧げた。同じ日、少年たちは初め
リンガLINGA シヴァを表す円柱形の標識。台座(ヨーニ)と組み合わせて祀られる。人体形の像より古い作例があり、アーンドラのグディマッラム出土例は前3〜前1世紀に遡ると見られる。プラーナはこれを果て
ローカパーラLOKAPALA インドの宇宙観で、天地の各方位を守護するとされる神格の総称。八方位に配される八体は「アシュタ・ディクパーラ」と呼ばれ、東をインドラ、南東を火神アグニ、南をヤマ、西をヴァルナ、北をク
法華経LOTUS SUTRA 『妙法蓮華経』。1〜2世紀頃にインドで成立したとされる大乗経典で、鳩摩羅什の漢訳が東アジアに広く流布した。すべての衆生が等しく成仏しうると説く。観音菩薩の霊験を説く普門品(観音経)
ルボークLUBOK ルボーク(лубок)は、17世紀から19世紀にかけてロシアで大量に刷られた民衆版画である。はじめは木版、のちに銅版やリトグラフで刷られ、素朴な線と鮮やかな彩色、画中に書き込まれた
世紀祭LUDI SAECULARES 一世代(サエクルム)の終わりを画して催された祭。共和政期にはティベリス河畔のタレントゥムと呼ばれる場所で、地下に埋めた祭壇を掘り起こし、dis-paterとproserpinaに夜
ルガル・エLUGAL-E 前3千年紀末に成立したとみられるシュメール語の長篇。冒頭句 lugal-e(「王よ」)が通称となり、728行・最大13枚の粘土板に写された。石の軍勢を率いる悪魔アサグとの戦い、倒し
ルグナサドLUGHNASADH ケルト暦の四大祭の一つで、8月1日ごろに行われた収穫の祭。名は「ルーの集まり」を意味する。神ルーが養母タルティウの葬送競技として創始したと伝えられ、競馬・武技の披露・市・仮の婚姻の
風馬LUNGTA / WIND HORSE チベット語でルンタ(rlung rta)、風の馬を意味する。旗の中央に、背に宝を負った馬を描き、四隅にsnow-lion・虎・garuda・龍の四獣を配する。周囲には経文や真言が刷
論衡LUNHENG 後漢の王充(27年〜約100年)が著した全三十巻の評論。天は意志をもって人に応えるのではなく、事象は自然の気によって起こると論じ、当時流布していた俗信や瑞応・災異の説を項目ごとに検
リカントロピーLYCANTHROPY 人が狼へと変身する現象・能力・呪いをさす語。ギリシア語の lykos(狼)と anthropos(人)に由来し、狼に変えられたアルカディア王リュカーオーンの神話に語源が重ねられる。
M
マビノギオンMABINOGION 中世ウェールズ語で書かれた散文物語の集成。「レズルフ・ヘルゲストの赤本」「リゼルヒの白本」といった写本に伝わり、収められた物語の多くは11〜13世紀ごろに成立したとみられる。プイス
マハーバーラタMAHABHARATA バラタ族の同族戦争を主軸とするインドの大叙事詩。十万詩節に及び、前4世紀から後4世紀にかけて増補を重ねて現在の形になったとされる。戦記のほかに神話・法・教説を大量に取り込んでおり、
マハーヴィディヤーMAHĀVIDYĀ 「大いなる知」を意味し、シャークタ派(女神信仰)がタントラの体系のなかで立てる十柱の女神群を指す。ダシャ・マハーヴィディヤー(十大明妃)とも呼ばれる。一般に行われる一覧はカーリー、
マンミシMAMMISI 大きな神殿の前面に付設された小神殿で、末期王朝期以降に建てられた。語はコプト語の「生まれる場所」に由来し、シャンポリオンが用いはじめた訳語である。三柱一組の神々を祀る神殿では、女神
マナMANA マナは、ポリネシアをはじめオセアニア一帯の宗教観で中心を占める概念で、人・物・場所・言葉に宿るとされる霊的な力・効能をいう。血統や手柄によって増減する量的なものとして捉えられ、首長
曼荼羅MANDALA 仏・菩薩の世界を一定の規則で配置した図。サンスクリットのマンダラの音写で、本来は「本質を有するもの」「円」を意味する。密教では儀礼の場そのものであって、鑑賞のための絵ではない。日本
天命MANDATE OF HEAVEN 天が徳ある統治者を選び、天下を治めさせるという思想。周が殷を滅ぼしたとき、支配権の根拠は血統ではなく徳にあると説いて武力による王朝交替を正当化したのが、その始まりとされる。『詩経』
鳥の言葉THE CONFERENCE OF THE BIRDS ファリードゥッディーン・アッタール(1145頃-1221頃)のペルシア語詩『マンティク・ッタイル』。世界じゅうの鳥が王を求めて旅立ち、七つの谷を越えるうちに次々と脱落して、ついに三
海のティアソスMARINE THIASOS 海の神々とその眷属が連なって進む情景を表した図像の型。ティアソスはもともとdionysusに付き従う一行を指す語で、それを海に移したものである。poseidonとamphitrit
マルス・ティンクススMARS THINGSUS イングランド北部ハウスステッズのローマ軍砦で見つかった3世紀の奉献祭壇に、「ティンクスス(Thincsus)たるマールス神と、二柱のアライシアギアエ、ベーダとフィンミレーナに」と刻
マルト神群MARUTS 『リグ・ヴェーダ』に歌われる暴風の神々。単独では登場せず、輝く武具をまとい斑毛の鹿に引かれた車を駆る青年の一団として現れる。数は七、二十一、四十九など諸説あり定まらない。ルドラの子
マースレニツァMASLENITSA 正教会の大斎に先立つ一週間に行われる東スラヴの祭り。丸く焼いたブリヌィ(薄焼きのクレープ)を食べ、橇遊びや拳闘、家々を巡る訪問が続く。最終日の「赦しの日曜日」には、藁と古着で作った
マーテル・ウェルボールムMATER VERBORUM 13世紀のボヘミアで作られたラテン語の語彙集写本。19世紀初頭に余白の古チェコ語注記が「発見」され、スラヴの神名をギリシア・ローマの神に対応させる稀少な史料として重んじられた。しか
マートラーリアMATRALIA 6月11日、フォルム・ボアリウムのマートゥータ神殿で行われた祭。参加できるのは一度だけ結婚した女性(ウニウィラ)に限られ、彼女たちは自分の子ではなく姉妹の子を腕に抱いて祈った。また
マートリカーMATRIKA 「母たち」を意味する女神の群。多くは七母神(サプタ・マートリカー)として一組で祀られ、ブラーフミー、マーヘーシュヴァリー、カウマーリー、ヴァイシュナヴィー、ヴァーラーヒー、インドラ
マトロナエMATRES AND MATRONAE ローマ支配下の西方諸州で広く崇拝された女神の集団。ラテン語碑文にはマトレス(Matres、母たち)またはマトロナエ(Matronae、母上たち)と記される。1100点を超える奉献が
マーヤーMAYA 幻を作り出す力。ヴェーダでは神々やアスラが用いる不思議な能力を指し、変身、分身、姿を消す術などがこれにあたる。『ラーマーヤナ』のインドラジットが姿を隠して戦い、偽のシーターを作り出
メME シュメール語で、世界の諸制度をあらかじめ定めている神的な力ないし規範を指す。王権・神官職・都市・工芸・音楽・戦・嘆き・性愛など、文明を構成するものが列挙され、そこには望ましいものも
詩の蜜酒MEAD OF POETRY アース神族とヴァン神族の和睦から生まれた賢者クヴァシルを、ドヴェルグの兄弟フィヤラルとガラルが殺し、その血に蜜を混ぜて醸した酒。飲む者は詩人となり、賢者となる。酒はやがて巨人スット
メーコーネーの供犠TRICK AT MECONE ヘーシオドス『神統記』が語る、神々と人間の取り分が決まった場面。メーコーネーの地で、プロメーテウスは牛を二つに分け、食える肉を胃袋に隠し、食えない骨を光る脂で包んだ。ゼウスは脂のほ
メンフィス神学MEMPHITE THEOLOGY メンフィスの主神プタハを万物の始原に据える創世神学。第25王朝のファラオ、シャバカが古文書を写させたと称する玄武岩板「シャバカ石」(大英博物館蔵)に刻まれて伝わる。プタハは心(思考
メルゼブルクの呪文MERSEBURG CHARMS ドイツのメルゼブルクの大聖堂文庫で1841年に発見された、9〜10世紀の古高ドイツ語の呪文二篇。第一の呪文は捕虜の解放を、第二の呪文は馬の脱臼の治療を扱う。第二の呪文にはヴォーダン
メソアメリカMESOAMERICA メキシコ中部から現在のグアテマラ・ベリーズ・ホンジュラス西部にかけて、共通の文化的特徴をもつ諸文明が興った地域を指す。前2千年紀のオルメカに始まり、テオティワカン、マヤ、トルテカ、
メソアメリカの球戯MESOAMERICAN BALLGAME メソアメリカの球戯(ナワトル語でトラチトリ、マヤ語でピッツ)は、前2千年紀にさかのぼる球技である。石壁に囲まれたI字形の球戯場で、重いゴム球を腰・臀部・肘で打ち返し、地面に落とさぬ
変身物語METAMORPHOSES オウィディウスが西暦8年頃までに完成させたラテン語の叙事詩。全15巻。天地の生成からカエサルの神格化までを、人や神が別の姿へ変わる約250の挿話でつないでいく。ギリシア・ローマ神話
ミクトランMICTLAN ミクトラン(Mictlān、「死者の地」)は、アステカ神話における冥界である。北方かつ最下層に位置し、九つの層に分かれる。戦場や出産で死んだ者、水に関わって死んだ者などは別の行き先
中秋節MID-AUTUMN FESTIVAL 旧暦8月15日、満月の夜の節句。唐代から月見の習俗が記録され、宋代に節日として定着した。月餅を供え、家族が集まって月を賞でる。民間信仰では月神としての嫦娥を祀る日とされ、嫦娥奔月の
ミン祭FESTIVAL OF MIN シェムウ季(収穫期)の初めに、ミンの神像を神殿から担ぎ出して畑へ運ぶ祭。王が最初の穀束を刈り、神に捧げて実りを祈った。メディネト・ハブのラメセス3世葬祭殿に刻まれた祭礼一覧から、四
見るなのタブーTABOO OF LOOKING 「見るな」と告げられた者が禁を破って覗き、その結果として相手を永久に失う説話の型。禁室型とも呼ばれる。日本神話ではイザナギが黄泉でイザナミの姿を見てしまう場面、トヨタマヒメが出産の
禊MISOGI (RITUAL PURIFICATION) 川や海の水で身を清め、罪や穢れ(けがれ)を除く行為である。神道の祓(はらえ)の中核をなす。死者の国から戻ったイザナギが筑紫の阿波岐原で禊を行い、その過程で三貴子をはじめ多くの神が成
ミトラス教MITHRAISM ローマ帝国内で1世紀後半から4世紀にかけて信奉された密儀宗教。信徒はミトラエウムと呼ばれる地下または半地下の聖所に集い、鴉から父まで七つの位階を段階的に経た。入信者は男性に限られ、
ミトナルMITNAL ユカタンのマヤが死者の国を指して用いた語。メトナル(Metnal)とも綴る。ディエゴ・デ・ランダの『ユカタン事物記』は、悪しき者が落ちて責め苦を受ける下の場所として記し、その主をフ
ミョルニルMJÖLNIR トールの槌。名は「打ち砕くもの」と解されることが多い。『スノッリのエッダ』によれば小人の兄弟ブロックとシンドリが鍛えたが、ロキが虻に化けて鍛冶の目蓋を刺したため柄が短いまま仕上がっ
モーダカMODAKA 米粉や小麦粉の皮でヤシ糖やココナッツの餡を包み、蒸すか揚げて作るインドの甘い団子菓子。地域によって呼称や作り方に幅がある。象頭の神ガネーシャの好物として知られ、この神を表す図像では
モーリュMOLY ホメーロス『オデュッセイア』第10巻で、ヘルメースがodysseusに授ける薬草。根は黒く花は白く、神々がモーリュと呼ぶこの草を人の力で地から抜くことはできないと語られる。これを携
単一神話MONOMYTH 比較神話学者ジョゼフ・キャンベルが『千の顔をもつ英雄』(1949年)で提唱した概念で、「英雄の旅」とも呼ばれる。あらゆる英雄譚は、日常からの出立、境界の越境、試練、報酬、帰還という
ムーシケーMOUSIKE ムーサに属する技芸を意味するギリシア語。今日の「音楽」より範囲が広く、詩の朗唱、竪琴や笛の演奏、歌唱、舞踏、さらにそれらが一体となった上演の全体を指した。言葉と旋律と身体の動きが分
ムスペルヘイムMÚSPELLSHEIMR 北欧神話の炎の世界。ムスペル(Múspell)の名でも呼ばれる。『ギュルヴィたぶらかし』によれば、氷と霧のニヴルヘイムより先に存在し、燃え、輝き、そこの生まれでない者は立ち入れない
妙見信仰MYOKEN CULT 北極星および北斗七星を神格化した尊(妙見菩薩)への信仰。もとは中国の星辰信仰にさかのぼり、仏教の経典を通じて日本へ伝わった。国土と人の寿命を守り、災いを除くとされ、平安期以降に広ま
明王MYŌŌ / VIDYĀRĀJA 梵語ヴィディヤーラージャの訳で、明(真言・呪)の王を意味する。密教に特有の尊格の一群であり、憤怒の相をとり、武器を執り、火焔を背負う姿で表される。三輪身の説では如来の教令輪身にあた
神話物語群MYTHOLOGICAL CYCLE アイルランド神話の四大物語群の一つで、トゥアハ・デ・ダナーンをはじめとする神々の世代を扱う。『アイルランド来寇の書』『マグ・トゥレドの戦い』『エーディンへの求婚』『リルの子らの最期
N
ナーガNAGA インド神話に登場する蛇、あるいは上半身が人・下半身が蛇の姿をとる種族。水源や泉、地下界と結びつき、雨や豊穣、地中の財宝を守る存在として神聖視される。母をめぐる因縁から、鳥の王ガルダ
ナワトル語NAHUATL ナワトル語(Nahuatl)は、メキシコ中央高原を中心に話されたユト・アステカ語族の言語で、アステカ(メシカ)をはじめナワ系諸族の母語であった。テスカトリポカ(「煙る鏡」)やコアト
ナクシャトラNAKSHATRA 月の運行を基準に黄道を27(一部の伝承では28)に分けた星宿。月がおよそ27日で天を一周することに対応し、インドの暦法・占星術・儀礼の日取りの基礎をなす。アシュヴィニーに始まりレー
ナルメルのパレットNARMER PALETTE エジプト第1王朝の王ナルメルの名を刻む粘板岩製の儀礼用化粧パレット。前3100年頃、ヒエラコンポリスの神殿域から19世紀末に出土し、現在はカイロのエジプト博物館が蔵する。一面では白
博物誌NATURALIS HISTORIA 大プリニウス(ガイウス・プリニウス・セクンドゥス)が77年頃に著した全37巻の百科全書。天文・地理・人類・動植物・鉱物・美術など古代の知識を博く集成した。実見と伝聞が混在し、バジリ
ナヴァグラハNAVAGRAHA インドの占星術(ジョーティシュ)と寺院儀礼における九つの天体神。スーリヤ(日)、チャンドラ(月)、マンガラ(火星)、ブダ(水星)、ブリハスパティ(木星)、シュクラ(金星)、シャニ(
ナウィギウム・イシディスNAVIGIUM ISIDIS 3月5日、帝国各地のisis神殿から海や川へ、模型の船を担いで運んだ祭。さまざまな扮装と聖具を連ねた祭司と信徒の行列で知られ、航海の安全を祈願した。ローマの食糧はエジプトなど属州か
ナーヤナールNAYANAR 6世紀から9世紀にかけて、タミル語圏でシヴァへの信愛(バクティ)を歌った聖者たちの総称。名は「導く者」を意味する。チャンデーシャをはじめ一般に六十三人が数えられ、バラモンから漁師、
ネブティNEBTY (TWO LADIES) 上エジプトを守るハゲワシの女神ネクベトと、下エジプトを守るコブラの女神ウアジェトの対を指す語。エジプト語でネブティといい、統一国家の守護者とされた。ファラオが名乗る五つの称号のうち
不浄なる力NECHISTAYA SILA ロシア語で「不浄な力」を意味し、東スラヴの民間信仰に現れる霊的存在の総称として用いられる。家の精、浴場の精、森の主、水の主、野の霊、そしてナヴと呼ばれる死者の霊や吸血鬼までを一括り
ハルモニアーの首飾りNECKLACE OF HARMONIA ヘーパイストスが作りアプロディーテーがハルモニアーに贈ったとされる黄金の首飾り。妻の不義から生まれたハルモニアーへの報復として鍛えられたともいい、身につける者に美と若さを与える一方
ネクタルNECTAR オリュンポスの神々が飲む酒で、食物のアムブロシアーと対で語られる。語源は「死(nek-)を越える(-tar)」とする解釈が有力だが定説ではない。宴で杯に注いで回るのは給仕役の務めで
ネキュイアNEKYIA 死者の霊を招いて問いを立てる儀礼を指すギリシア語。とくにホメーロス『オデュッセイア』第11巻——odysseusが大洋の果てに穴を掘り、乳と蜜・酒・水を注ぎ、羊を屠って血を与え、預
ネメトンNEMETON ガリア語をはじめとするケルト諸語で、聖なる場所を指す語。語幹 nemeto- はガリアからブリタンニア、小アジアのガラティアに至る広い範囲の地名に残る(ネメトドゥルム、ドルネメトン
ネーレーイスNEREID nereusとdorisの娘たちとされる海の女神群。単数形ネーレーイス、複数形ネーレーイデス。『神統記』は五十人を数えて名を列挙するが、アポロドーロスの一覧とは顔ぶれが一致せず、数
ネワールNEWAR ネパールのカトマンズ盆地に古くから住む集団で、独自の言語ネパール・バサ(ネワール語)をもつ。盆地の都市文化と宗教儀礼の担い手であり、ヒンドゥーと仏教が対立せずに重なり合う点に大きな
日本霊異記NIHON RYŌIKI 正式には『日本国現報善悪霊異記』。薬師寺の僧・景戒が九世紀初頭に編んだ、日本最古の仏教説話集である。上中下三巻に百十余話を収め、善悪の行いが現世で報いを受けるという現報の思想を説く
二十八部衆TWENTY-EIGHT ATTENDANTS OF KANNON 千手観音の眷属として付き従う二十八体の護法神。『千手経』系の経典に基づき、インドの神格を取り込んだ諸尊が並ぶ。平安時代後期から鎌倉時代にかけて、中央に千手観音を据え周囲に二十八部衆
ナイルの氾濫INUNDATION OF THE NILE 上流の雨によって毎年夏に水位が上がり、秋口に頂点を迎えて全土の耕地に肥沃な泥を残した増水。エジプトの一年はアケト(増水)・ペレト(播種)・シェムウ(収穫)の三季からなり、暦そのもの
竜生九子NINE SONS OF THE DRAGON 竜が生んだ九匹の子とされる霊獣の一覧。明代の文人が、建築や器物にあらわれる伝統的な意匠を整理する枠組みとして挙げたもので、李東陽『懐麓堂集』と楊慎『升庵外集』とで顔ぶれが異なるなど
ニヨーガNIYOGA 夫が生殖能力を欠くか、子を残さずに没した場合に、別の男性が妻あるいは寡婦との間に子をもうけ、その子を夫の嫡子として家系を存続させる古代インドの慣行。多くは夫の兄弟か、招かれた聖仙が
ノストスNOSTOS 「帰還」「帰郷」を意味するギリシア語。トロイア陥落後に諸将が故国へ戻る道のりを歌った物語群の呼称でもあり、叙事詩環には『ノストイ(帰還譚)』と題する散逸作があった。帰り着いた館で殺
ノウルーズNOWRUZ 新ペルシア語で「新しい日」の意。春分の日をもって年が改まる祭で、ゾロアスター教の暦の第1月ファルワルディーンの朔日にあたる。『シャー・ナーメ』は、王ジャムシードが玉座を魔たちに担が
如来NYORAI / TATHĀGATA 梵語タターガタの訳で、真如より来た者、あるいは真如へ去った者と解される。悟りを完成した仏を指す最も基本的な称号であり、釈迦如来・amitabha・大日如来・薬師如来などがこれにあた
O
オボロテニOBOROTEN ロシア語オボロテニ(оборотень)、ウクライナ語ペレヴェルテニ、ベラルーシ語ペレヴァラツェニは、いずれも「裏返る、転じる」を意味する動詞から作られた語で、人が獣や物に姿を変え
オーケアニスOCEANID ヘーシオドス『神統記』が伝える、オーケアノスとtethysの娘たち。同数の息子である河神と対をなし、いずれも三千人と数えられる。三千は実数ではなく無数の意である。ゼウスの最初の妻メ
オチパニストリOCHPANIZTLI シウポワリ(365日暦)の一月にあたり、グレゴリオ暦の9月頃に営まれた祭。名は「掃くこと」を意味する。家と神殿を掃き清めて修繕し、トウモロコシの種を撒き、舞踏と軍事儀礼が行われた。
十月の馬OCTOBER HORSE 古代ローマで毎年十月十五日、カンプス・マルティウス(マールスの野)で行われた馬の供犠。二頭立ての戦車競走ののち、勝った側の右の馬が軍神マールスに捧げられた。切り取られた頭は菓子で飾
オデュッセイアODYSSEY 『イーリアス』と並ぶホメーロスの叙事詩。前8世紀末から前7世紀初頭の成立とされ、六脚韻で全24巻からなる。トロイア戦争を生き延びたodysseusが、ポセイドーンの妨害を受けながら
オグドアドOGDOAD 古代エジプトのヘルモポリス(クムヌ)で説かれた、世界創造以前の混沌を担う八柱の原初神。四組の男女一対からなり、原初の水(ヌン/ナウネト)、無限(ヘフ/ハウヘト)、闇(ケク/カウケト
オガムOGHAM 4世紀から6世紀ごろのアイルランドと西ブリテンで用いられた文字体系。オガム文字とも。石柱の縁の稜線を基準線とし、その左右あるいは横断方向に一本から五本の刻み目を入れて音を表す。現存
オルメカOLMEC メキシコ湾岸のベラクルス州・タバスコ州一帯に、前1200年頃から前400年頃にかけて栄えた文化。サン・ロレンソ、ラ・ベンタなどの中心地が知られ、玄武岩の巨石人頭像と翡翠の小像を残し
オナムONAM 南インド・ケーララ州の収穫祭。マラヤーラム暦チンガム月に十日間にわたって行われる。地底世界に沈められたアスラの王マハーバリが、年に一度だけ民のもとへ帰ることを許されたという伝承にも
オネイロイONEIROI 夢を意味するギリシア語オネイロスの複数形で、夢を神格化した神々を指す。ヘーシオドス『神統記』では夜の女神ニュクスが単独で生んだ子とされ、個々の名も姿も語られない。ホメーロスでは、真
鬼瓦ONIGAWARA 大棟や降棟の端に据える飾り瓦。奈良時代には蓮華文が主で、鬼面のものが現れるのは平安期以降とされる。正面を睨む面によって厄を退けるという発想に立ち、oniを退けるのでなく鬼の顔をもっ
開口の儀式OPENING OF THE MOUTH ミイラ・神像・棺の顔に、手斧(ネチェルティ)や鉤状の道具を当てて口を「開く」儀礼。これによって死者や像は息を吸い、供物を食べ、言葉を発する力を得るとされた。埋葬の直前に墓前で行われ
オペト祭OPET FESTIVAL アケト季(増水期)第2の月に催されたテーベ最大の祭。テーベ三柱神の像を載せた聖船が、カルナックからルクソール神殿までおよそ2キロを渡る。行路はスフィンクス参道を人が担ぐ形と、ナイル
神託ORACLE 神意を人に伝える託宣、またそれを授ける聖所を指す。多くは特定の神殿や巫者を介し、王侯から庶民までが吉凶や進退を問うた。ギリシアのデルポイ、アンデス海岸のパチャカマックなどが知られ、
甲骨文ORACLE BONE SCRIPT 殷(商)代後期に、亀の腹甲や牛の肩甲骨へ刻まれた文字。骨に熱を加えて生じた亀裂の形で吉凶を判じ、その問いと結果を刻みつけた占いの記録である。1899年、薬材として売られていた「竜骨
デルポイの神託ORACLE OF DELPHI パルナッソス山麓のデルポイに置かれたアポローンの神託所。巫女ピューティアーが三脚台の上で口にした言葉を、神官が韻文に整えて伝えた。植民市の建設、開戦、立法といった公的な決定がここに
オリシャORISHA 西アフリカのヨルバ人の宗教における神格・霊的存在の総称。至高神オロドゥマレ(オロフィ)のもとで自然の諸力や人の営みを司り、人と至高神とを媒介する。もとは河・鉄・雷といった自然物や、
オルペウス教ORPHISM 前6世紀頃から現れる、伝説の楽人オルペウスの名に帰された詩群を典拠とする信仰と実践。魂は肉体に囚われた存在であり、輪廻を繰り返しながら浄化を経て解放されると説く。神統記もヘーシオド
異界OTHERWORLD アイルランドとウェールズの伝承に共通して現れる、地上とは別のもう一つの世界。遠い彼方にあるのではなく、塚の内、湖底、海の西、あるいは霧の向こうと、地上に接して置かれるのが特徴である
御伽草子OTOGI-ZŌSHI 室町時代から江戸初期にかけて作られた、短編の絵入り物語の総称。作者は多く不詳で、公家物・僧侶物・武家物・異類物など主題は幅広い。享保年間に渋川清右衛門が二十三編を『御伽文庫』として
大津絵ŌTSU-E 江戸初期、東海道の大津宿周辺で旅人向けに量産された絵画。当初は仏画が中心だったが、やがて鬼・藤娘・雷神・槍持奴といった定型画題が生まれ、簡素な筆致と限られた色数で描かれた。なかでも
P
パラディオンPALLADION トロイアに天から落ちたと伝えられたアテーナーの古拙な木像。これがある限り城市は落ちないとされ、オデュッセウスとディオメーデースが盗み出したことで陥落の条件が整った。のちにローマは、
パンアテナイア祭PANATHENAIA アテーナイがアテーナーに捧げた祭。毎年行われ、四年ごとに競技を伴う大祭となった。市民が織り上げた新しいペプロスを女神像に着せる行列が中心で、パルテノーンのフリーズはこの行列を描いた
パンチャカニヤーPANCHAKANYA 「五人の乙女」を意味し、朝の祈りで名を唱えれば大罪も消えるとされる五人の女性を指す。一般に行われる一覧は、アハリヤー、ドラウパディー、クンティー、ターラー、マンドーダリーの五人であ
パーンダヴァPANDAVA クル王パーンドゥの息子とされる五兄弟の総称。呪いのために子をもうけられぬ父に代わり、妃クンティーとマードリーが神々を招いて産んだとされ、ユディシュティラはダルマ神、ビーマは風神ヴァ
パンドーラーの箱PANDORA'S BOX 『仕事と日』によれば、prometheusの火の窃盗に対する報いとして、zeusはhephaestusに土から最初の女パンドーラーを造らせ、epimetheusのもとへ贈った。パン
パテラPATERA 献酒に用いる浅い皿状の器。ギリシア語ではフィアレーと呼ぶ。神に酒を注ぐ儀礼(リバティオ)の道具であり、彫像や浮彫で人物がこれを手にしていれば、供犠を行う者であるか、供物を受ける神で
蟠桃PEACHES OF IMMORTALITY 崑崙山(こんろんさん)の西王母の園に実るとされる仙桃。食せば不老長寿を得るとされ、三千年に一度花を咲かせ、さらに三千年をかけて実るなど、途方もない周期で結実すると語られた。西王母は
ペルガモンの大祭壇PERGAMON ALTAR 小アジアのペルガモンに、エウメネス2世の治世(前2世紀前半)に建てられた祭壇。基壇の外周およそ110メートルを、神々と巨人族ギガースの戦いを刻んだ高浮彫が巡る。登場する神格の多くに
擬人化PERSONIFICATION 正義・愛・勝利・夜・運命といった抽象概念や自然現象を、人のかたちと意思を持つ神格として表すこと。ギリシア・ローマの宗教と美術はこれを好み、テミスやディケー(正義)、ニュクス(夜)、
フェニキア文字PHOENICIAN ALPHABET レヴァント地方で用いられた22文字の子音文字体系で、前9世紀頃にギリシア人がこれを受容し、余った記号を母音に転用してギリシア文字が成立した。アルファベットが西方へ広がる出発点にあた
フィシオロゴスPHYSIOLOGUS 後2〜4世紀のアレクサンドリアで成立したとされるギリシア語の動物譚。実在・架空の動物を一つずつ挙げ、その生態をキリスト教の教義の寓意として読み解く。フェニックスの再生は復活に、セイ
ピアチェンツァの肝臓LIVER OF PIACENZA 1877年にピアチェンツァ近郊で発見された、羊の肝臓をかたどった青銅の模型。前150年から前100年ごろのものとされる。表面は四十の区画に分割され、そのそれぞれにエトルリアの神名が
太陽の石PIEDRA DEL SOL 重さ約24トンの玄武岩に彫られた円盤。「アステカの暦石」とも呼ばれるが日付を知る道具ではなく、宇宙観と時間観を表した記念碑である。中央の顔を囲んで、滅び去った四つの時代の日符号が配
ヘーラクレースの柱PILLARS OF HERCULES ジブラルタル海峡の両岸をなす二つの岬の古代の呼び名。北はカルペー(ジブラルタルの岩)、南はアビュラに比定される。heraclesがgeryonの牛を求めて西へ向かった際に立てた、あ
詩人の風刺SATIRE (ÁER) 中世アイルランドの詩人が持つとされた、言葉によって人の名誉を損なう力。アイルランド語でアールという。法文書はこれを実際の加害として扱い、不当な風刺を加えた詩人には賠償を課した。物語
大地への懺悔CONFESSION TO THE EARTH 司祭を介さず、大地に向かって直に罪を告白する習俗。14世紀末、ノヴゴロドとプスコフの異端ストリゴーリニキを論駁した文書がこれを糾弾している。著者はペルミのステファンとされるが異論も
ポリャニーツァPOLENITSA ロシアの口承叙事詩に現れる女の勇士。名は「野を駆ける者」に由来するとされる。彼女たちは草原を馬で行き、出会った男の勇士に一騎打ちを挑み、しばしば勝つ。ilya-murometsの相
ポメリウムPOMERIUM ローマ市を囲む宗教上の境界線。物理的な城壁とは一致せず、建物のない帯として画された。伝承ではロムルスが鋤で溝を引いたことに始まるとされ、以後、領土を広げた一部の将帥や皇帝だけがこれ
ポポル・ヴフPOPOL VUH グアテマラ高地のキチェ・マヤに伝わる神話・歴史の書。16世紀に口承・写本として伝わった内容がラテン文字で書き留められ、のちにスペイン語訳が作られた。世界と人間の創造、冥界シバルバー
補陀落POTALAKA 観音菩薩が住むとされる浄土。サンスクリットのポータラカの音写で、『華厳経』入法界品は南インドの海に臨む山とする。実在の地に比定する営みが各地で行われ、中国では舟山群島の普陀山が、日
ポトニア・テローンPOTNIA THERON 「獣の女主人」。ホメーロスがアルテミスに与えた呼称で、左右に獣を従えて正面を向いて立つ女性像の型を指す美術史の用語でもある。この構図は青銅器時代のエーゲ海・オリエントに遡り、ギリシ
般若PRAJÑĀ 般若(梵 prajñā)は、物事のありのままを見抜く智慧を指す仏教語である。とりわけ大乗仏教では、あらゆる存在に固定した実体がない(空)と洞察する根本の叡智をいい、悟りに至る六波羅
プラクリティPRAKRITI サーンキヤ哲学で世界を成り立たせる物質原理。サットヴァ・ラジャス・タマスという三つのグナ(構成要素)から成り、その均衡が破れたときに知性・自我・五大などが順に展開すると説かれる。た
ラファエル前派PRE-RAPHAELITE BROTHERHOOD 1848年にロンドンでダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ、ジョン・エヴァレット・ミレイ、ウィリアム・ホルマン・ハントらが結成した画家集団。ラファエロ以前の初期ルネサンス絵画を理想とし
原初年代記PRIMARY CHRONICLE 12世紀初頭にキエフで編まれた古代ルーシの年代記。『過ぎし年月の物語』とも呼ぶ。980年の条にウラジーミル1世が丘に立てた偶像としてペルーン、ホルス、ダジボーグ、ストリボーグ、セマ
原初神PROTOGENOI ギリシア神話で、世界の始まりに最初に生じたとされる神格を指す。カオス(虚空)、ガイア(大地)、ニュクス(夜)、エレボス(闇)、タルタロス、エロースなどがこれにあたり、多くは宇宙の構
プリュタネイオンPRYTANEION 古代ギリシアの都市国家(ポリス)に置かれた公館。その中核には国家の炉があり、女神ヘスティアーに捧げる、消えることのない火が守られた。この火は共同体そのものを象徴し、外交使節の饗応や
プシュコポンポスPSYCHOPOMPOS ギリシア語で「魂を導く者」(ψυχοπομπός)。死者の魂を冥界へ送り届ける役を担う存在を指す語で、ヘルメースの添え名として用いられたのが古い例である。裁く者でも罰する者でもなく
プルケPULQUE リュウゼツラン(マゲイ)の花茎を切って集めた樹液アグアミエルを発酵させた白濁した酒。ナワトル語ではオクトリという。神々に捧げる聖なる飲み物とされ、その起源は、身を裂かれた女神マヤウ
プントPUNT エジプト人が船と隊商を送った紅海沿岸の地。乳香・没薬・黒檀・象牙・金・ヒヒなどをもたらし、「神の国(タ・ネチェル)」と呼ばれた。ハトシェプストがデイル・エル=バハリの葬祭殿に刻ませ
プラーナPURANA 「古き物語」を意味する百科全書的な聖典群。世界の生成と消滅、神々の系譜、王統、祭祀と巡礼地を収める。主要なものは十八とされ、4〜10世紀にかけて増補を重ねた。ヴィシュヌ派・シヴァ派
プルリ祭PURULI FESTIVAL ヒッタイトの年頭を画した春の祭で、ハッティ人の伝統に発する。粘土板の記述によれば、嵐の神が大蛇イルルヤンカシュを討つ物語はこの祭のために語られた。冬のあいだ閉ざされていた大地が再び
プルシャPURUSHA サーンキヤ哲学の二元論において、変化も作用もしない純粋な観照者を指す。動くのはつねに物質原理プラクリティのほうであり、この両者が結び合うことで現象世界が展開すると説かれる。語そのも
プルシャールタPURUSHARTHA 人が生において追求すべきものとして立てられた四つの目的。ダルマ(法・義務)、アルタ(実利・財)、カーマ(愛欲・快)、モークシャ(解脱)を数える。特徴は、快や富を退けるべきものとせず
ピラミッド・テキストPYRAMID TEXTS 前24世紀、第5王朝末のウナス王の墓に刻まれたのを最初とする古代エジプトの葬祭呪文群。現存する最古級の宗教文書である。死んだ王が天に昇り、太陽神ラーの船に乗り、あるいは星となるため
ピュルギの金板PYRGI TABLETS 1964年、エトルリアの港市ピュルギの聖域から出土した三枚の薄い金板。前500年ごろのもので、二枚はエトルリア語、一枚はフェニキア語で書かれ、カエレの支配者による神殿奉献を記す。奉
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窮奇QIONGQI 中国の古典に現れる怪獣。『山海経』は、牛に似て毛は針鼠のごとく、その声は犬に似て人を食らうと記す一方、別の条では翼を持つ虎の姿で、争う者があれば正しい側を食い、忠信の者を見れば鼻を
全真教QUANZHEN SCHOOL 金代の王重陽(おうじゅうよう、1113〜1170)が山東で開いた道教の教派。符籙(ふろく)と儀礼を主とする正一教に対し、出家・持戒と坐禅に近い修養を重んじ、身中の気を練る内丹の修行
ケチョリQUECHOLLI シウポワリの第14月にあたり、グレゴリオ暦の11月頃に営まれた。名は緋色の水鳥(ベニヘラサギとされる)を指す。祭の中心は集団狩猟であり、狩人たちは狩猟神の装いをして野に出た。仕留め
クインクアトルスQUINQUATRUS 古代ローマで女神ミネルウァに捧げられた祭り。3月19日から数日(名は「五日目」に由来するともいう)にわたり、手仕事の守護神たる女神のもと、職人や学徒は仕事と学びを休んで祝った。やが
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ラグナロクRAGNARÖK 北欧神話が語る世界の終末。狼フェンリルとヨルムンガンドが束縛を解き、巨人とムスペルの子らがヴィーグリーズの野で神々と最終戦を交える。オーディンはフェンリルに呑まれ、トールはヨルムン
ラークシャサRAKSHASA インド神話に登場する半神的な種族で、羅刹(らせつ)と漢訳される。夜に跳梁し人を惑わし、時に食らう存在とされる一方、ランカー王ラーヴァナのように学識と武勇を兼ね備えた者もいる。神・人
ラーマーヤナRAMAYANA 古代インドの二大叙事詩の一つ。詩人ヴァールミーキの作と伝えられ、コーサラ国の王子ラーマの生涯を、妃シーターの略奪と奪還、ランカー島の羅刹王ラーヴァナとの戦いを軸に語る。全七巻・約二
ラーマチャリタマーナサRAMCHARITMANAS 16世紀の詩人トゥルシーダース(1511頃-1623)が、サンスクリットではなく口語のアワディー語で著した『ラーマーヤナ』の再話。題は「ラーマの行いの湖」を意味する。ヴァールミーキ
ラームリーラーRAMLILA ラーマの物語を野外で演じる民衆劇。秋の祭礼ナヴラートリに合わせて北インド各地で上演され、最終日のヴィジャヤダシャミー(ダシャラー)にラーヴァナら羅刹の巨大な人形を焼いて幕を閉じる。
ラーサ・リーラーRASA-LILA クリシュナがブラジ地方の牧女(ゴーピー)たちと月夜に踊る輪舞。『バーガヴァタ・プラーナ』第10巻と『ギータ・ゴーヴィンダ』に語られる。神が一人ひとりの牧女の傍らに同時に現れるという
ヘルゲストの赤本RED BOOK OF HERGEST 14世紀末から15世紀初頭にかけて編まれた大部のウェールズ語写本。現在はオックスフォードのジーザス・カレッジが所蔵し、ボドリアン図書館に寄託されている(MS 111)。『マビノギオ
赤絵式RED-FIGURE POTTERY 前530年頃のアテーナイで始まった陶器の装飾技法。人物を塗り残して背景を黒い泥漿で埋め、素地の赤い色で像を表す。線刻に頼らず筆で内部の線を引けるため、衣の襞・筋肉・四分の三正面の顔
ユカタン事物記RELACIÓN DE LAS COSAS DE YUCATÁN フランシスコ会士ディエゴ・デ・ランダ(1524〜1579、のちユカタン司教)が1566年頃にまとめたユカタン報告。暦・儀礼・神々・文字・農事・住居を扱い、マヤ文字解読の出発点となっ
レークス・ネモレーンシスREX NEMORENSIS 「森の王」。アリーキア近郊、ネミ湖畔のディアーナ聖域に仕えた祭司の称号。逃亡奴隷が神木の枝を折り取り、現職の祭司を殺すことで職を継いだと伝えられる。ストラボーンやスウェートーニウス
リーグスュラRÍGSÞULA 「リーグの歌」の意。散文の前書きは、リーグをheimdallの別名とする。海辺を歩いたリーグは三つの家に泊まり、いずれも夫婦のあいだで一夜を過ごす。貧しい家からは黒い肌のスレル(奴
聖仙RISHI ヴェーダの讃歌を作ったのではなく「見た」とされる古代インドの賢者で、リシとも呼ばれる。神々と人間の中間に位置づけられ、苦行(タパス)によって蓄えた力で、神々にすら要求を通し、呪いを
リタṚTA 『リグ・ヴェーダ』が説く宇宙の秩序。天体の運行、季節の循環、祭儀の正しさ、人の守るべき道が、ひとつの理法として貫かれているとする観念で、ヴァルナとミトラがその守護者とされる。破るこ
冥界の五つの河RIVERS OF THE UNDERWORLD ギリシアの冥界を流れるとされた河の総称。通例、誓いのステュクス、嘆きのアケローン、号泣のコーキュートス、忘却のレーテー、炎のプレゲトーンの五つを数える。ただしこの整理は後代のもので
アスクレピオスの杖ROD OF ASCLEPIUS 医神アスクレーピオスが手にする、一匹の蛇が巻きついた杖。蛇が脱皮によって新たな身を得ることから治癒と再生の象徴とされ、古代の癒しの聖所から現代の医療機関の紋章にいたるまで、医術のし
ロドノヴェーリエRODNOVERY 「родная вера(固有の信仰)」を語源とする、20世紀後半以降のスラヴ圏の新異教運動の総称。キリスト教受容以前の神々への信仰の復興を掲げ、ロシア、ウクライナ、ポーランド、チ
六道SIX REALMS 仏教で、衆生が業に応じて生まれ変わりを繰り返すとされる六つの世界。地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人道・天道からなる。天道であっても輪廻の内にあり、解脱とは区別される点が要である。
ローマ石棺ROMAN SARCOPHAGUS ローマ帝政期、とくに2世紀前半に火葬から土葬への移行が進んだのに伴って盛んに作られた、浮彫で飾られた石棺。ローマや地中海の主要都市、アテーナイをはじめとするギリシア語圏の諸都市で製
ロータ・フォルトゥナエROTA FORTUNAE 「運命の輪」。fortunaが回すとされる輪で、言及自体は前1世紀のキケロにさかのぼるが、図像として定着させたのは6世紀のボエティウス『哲学の慰め』第2巻である。中世の写本挿絵や大
ルーン文字RUNES ゲルマン諸族が2世紀頃から中世にかけて用いた表音文字の体系。角ばった字形は石・木・金属への刻書に適し、記念碑や墓標、装身具、呪符などに残る。北欧神話では、オーディンが世界樹に身を捧
ルサールカ週間RUSALNAYA WEEK 三位一体祭(聖霊降臨祭)の前後に置かれる東スラヴの民俗暦の一週間。名は古い異教の祭りルサーリヤに遡る。この期間、水に沈んだ者や婚礼を待たずに死んだ娘たちが地上に戻ると信じられ、水浴
ロシア・クロノグラフRUSSIAN CHRONOGRAPH ビザンツの世界年代記を土台に、天地創造から同時代までを編年で叙述した中世ロシアの編纂書。15世紀以降いくどか改訂を重ね、聖書の物語や古代史とともに、東方由来の伝説や自然誌の知識を取
S
賽の河原SAI NO KAWARA 親に先立って死んだ子が行くとされる冥途の河原。子は父母の供養のために石を積んで塔を作るが、積み上げるたびに鬼が来て崩してしまう。そこへ地蔵菩薩が現れ、袈裟の内に子を抱いて救うと説か
サリイSALII 古代ローマの神官団で、主に軍神マールスの祭祀をつかさどった。古風な武具に身を固めた十二人からなり、アンキーリアと呼ばれる聖なる盾を携える。伝承では、王ヌマ・ポンピリウスの治世に一枚
三昧耶形SAMAYA FORM 三昧耶形(さんまやぎょう、梵 samaya)は、密教において仏・菩薩をその姿ではなく、本誓すなわち衆生救済の誓いを象徴する持物や標識によって表したものである。蓮華・宝塔・剣・金剛杵
サウィンSAMHAIN ケルト暦の四大祭の一つで、10月31日の夜から11月1日にかけて行われた。夏の終わりと放牧期の終了を告げ、家畜を屠って冬に備える。一年の境目にあたるため、この夜は現世と異界(シー)
乳海攪拌SAMUDRA MANTHANA 神々(デーヴァ)と魔神(アスラ)が、不死の霊薬アムリタを求めて協力し、乳の海を攪拌したヒンドゥー神話の一大事件。大蛇ヴァースキを攪拌の綱、マンダラ山を攪拌棒とし、ヴィシュヌが亀(ク
山岳信仰MOUNTAIN WORSHIP 山そのもの、あるいは山に宿る力を神聖なものとみなす信仰。日本では、山を神の宿る場(神奈備)とみて麓に里宮を、山上に山宮を設ける形が各地にみられ、山を仰ぐ位置に社が構えられた。里の暮
三身TRIKĀYA 仏の身のあり方を三種に分ける大乗仏教の教説。姿も形もない真理そのものである法身、衆生を救うために功徳を積んで成った報身、人としてこの世に現れた応身の三つをいう。四世紀ごろまでは法身
サンジーヴァニーSANJIVANI 死に瀕した者、あるいは死者すら蘇らせるとされる霊草。名は「生命を与えるもの」を意味する。『ラーマーヤナ』では、インドラジットの武器に倒れたラクシュマナを救うため、ハヌマーンがヒマー
三輪身SANRINJIN 密教が立てる尊格論で、一つの仏が三通りの姿をとって働くとする。自性輪身は悟りの境地そのものを体現した如来の姿、正法輪身はその真理を平易に説く菩薩の姿、教令輪身は教えに従わない者を恐
サンテリアSANTERÍA キューバで成立したアフリカ系の宗教。大西洋奴隷貿易でヨルバランドから連れ去られた人々が奉じたオリシャの信仰が、支配下でカトリックの聖人崇敬と結びついて成立した。神格の呼称はスペイン
サプタルシSAPTARṢI ヴェーダの讃歌を「見た」とされる七人の大聖仙(マハーリシ)。北斗七星の七つの星に配され、夜空に見えるその並びが彼らの姿とされてきた。顔ぶれは文献によって異なり、プラーナで広く行われ
蛇供祭SARPA SATRA クル王ジャナメージャヤが、父パリークシットを咬み殺した蛇王タクシャカへの復讐として営んだ供犠。真言に引き寄せられた蛇が次々と祭火へ落ちてゆく大祭で、蛇族は絶滅の淵まで追い込まれた。
寡婦殉死SATI (PRACTICE) 夫の火葬の火に妻が身を投じるインドの旧習。英語のsutteeを含め「サティー」と呼ばれるのは、女神サティーの名(「貞節な女」を意味するサンスクリット語)に由来する。ただし神話のサテ
サテュロス劇SATYR PLAY 古代アテナイのディオニュシア祭で、悲劇三部作の上演に続けて演じられた滑稽な劇。サテュロスに扮した合唱隊が登場し、神話の題材を茶化しながら、深刻な悲劇のあとの緊張をほぐす余興の役割を
スカラベSCARAB フンコロガシ(タマオシコガネ)をかたどった護符・印章の総称。糞を丸めた球から成虫が現れる生態が、無からの誕生と太陽の日々の再生に重ねられ、朝日の神ケプリの名と姿の由来となった。ファ
シェルハス分類SCHELLHAS CLASSIFICATION 19世紀末にパウル・シェルハスが、マヤの絵文書に繰り返し現れる神々を、判読の難しい名ではなく姿の特徴によってA・B・C…とアルファベットで整理した便宜的な分類。死神ア・プチは神A、
セイズSEIÐR 古ノルド語圏に伝わった呪術の一種で、運命を予見し、あるいはこれを操作するとされた。恍惚状態を伴う点でシャーマニズムとの関連が指摘される。担い手は主に女性(ヴォルヴァ)であり、男性が
セラペウムSERAPEUM セラピスを祀る神殿・聖域の呼称。最も有名なのはサッカラのセラペウムで、アピス牛を葬る地下墓所である。新王国期からプトレマイオス朝末までおよそ千四百年にわたり、少なくとも六十頭が葬ら
節分SETSUBUN 本来は立春・立夏・立秋・立冬それぞれの前日を指す語だが、今日ではもっぱら立春の前日をいう。「鬼は外、福は内」と唱えて炒った豆を撒く。淵源は大晦日に宮中で修された追儺(鬼やらい)で、
テーバイ攻めの七将SEVEN AGAINST THEBES テーバイの王位をめぐって兄弟エテオクレースとポリュネイケースが争い、追われたポリュネイケースがアルゴス王アドラーストスの支援を得て七人の将を集め、テーバイの七つの門を攻めたとされる
シャー・ナーメSHAHNAMEH フェルドウスィー(940頃-1020頃)がおよそ30年を費やして完成させたペルシア語の民族叙事詩。書名は「王たちの書」を意味し、原初の王から651年のサーサーン朝滅亡までを、約五万
シヴァ派SHAIVISM シヴァを至高の存在とするヒンドゥー教の宗派群の総称。至聖所に据えるのは人体形の像ではなくリンガであり、その正面に牡牛を伏せさせるのが基本の構えである。カシミールの非二元論、南インド
シャクティSHAKTI サンスクリットで「力・能力」を意味し、神格に内在してその働きを可能にする女性原理を指す。男性神が静かな意識であるのに対し、シャクティはそれを動かす動的な力とされ、両者は一対で完全な
シャクティ・ピータSHAKTI PITHA 女神サティーの遺体の断片が落ちたとされる聖地の総称。「シャクティの座」を意味する。夫シヴァが妻の亡骸を抱いて世界をさまよったとき、ヴィシュヌが円盤で遺体を断ったため、破片が各地に落
山海経CLASSIC OF MOUNTAINS AND SEAS 前4世紀頃から前漢にかけて累積して成った、中国最古の地理書。山経(五蔵山経)と海経に大別され、山川の位置・産物を記す体裁のなかに、異形の神・怪物・遠方の民を淡々と列挙する。祝融を「
鴟尾SHIBI 宮殿・寺院の大棟の両端に据えられる飾りで、沓を伏せたような形をとる。中国の漢代から南北朝期に成立し、朝鮮半島を経て日本へ伝わった。奈良の唐招提寺金堂に天平期の作例が残る。名の「鴟」
式年遷宮SHIKINEN SENGŪ 定められた年数ごとに社殿を新たに造り、神体を新しい宮へ遷す儀。伊勢神宮のものが最もよく知られ、二十年に一度、内宮・外宮とも隣接する敷地に社殿を建て替え、御装束神宝もことごとく新調し
シルパ・シャーストラSHILPA SHASTRA 造像・工芸・建築の規範を定めたサンスクリットの技法書群の総称。神像の寸法比、持物、手印、姿勢を細かく規定し、工房が世代を越えて同じ型を再現することを可能にした。建築を扱うヴァースト
神仏分離SHINBUTSU BUNRI 慶応四年/明治元年(一八六八)以降の一連の法令によって、神社から仏教的要素を排除した政策。神宮寺は廃され、社僧は還俗し、本地垂迹に基づく仏像・仏具・神号が神社から取り除かれた。ha
神使SHINSHI 神使(しんし)は、特定の神に仕え、その使いをつとめるとされる動物である。稲荷の狐、春日の鹿、日吉の猿、天満宮の牛、八幡の鳩などが広く知られる。要となるのは、神使が神そのものではなく
尻子玉SHIRIKODAMA 人の肛門の奥にあると想像された玉状の臓器。kappaがこれを抜いて食うという俗信が江戸期に広まり、天明八年(一七八八)刊の『夭怪着到牒』には「河太郎尻子玉を抜く」の図がある。抜かれ
諸国里人談SHOKOKU RIJIN DAN 江戸中期、寛保年間(1741〜44年)に刊行された雑書。作者は俳人の菊岡沾涼(米山)。日本各地の名所・産物・風習を記すなかに奇談と怪談を多く収め、片輪車・輪入道・姥ヶ火・狐火・油坊
修験道SHUGENDŌ 修験道は、山を聖地とする古来の山岳信仰に、仏教(とりわけ密教)・道教・神道が習合して体系化された、日本独自の宗教である。開祖は伝説的な呪術者、役小角(役行者)とされる。実践者は修験
須弥山SHUMISEN / SUMERU 梵語スメールの音写で、仏教およびインドの宇宙観において世界の中心にそびえるとされる山。周囲を九山八海が取り巻き、四方の海に四大洲が浮かぶ。北の北倶盧洲、南の閻浮提などがこれにあたり
シビュラの書SIBYLLINE BOOKS ローマ国家が保管した神託集。クーマエの巫女シビュッラが王タルクィニウスに売ったと伝えられる。疫病・怪異・敗戦などの非常時に元老院の議決を経てのみ開かれ、解読は専任の神官団が担った。
シーSÍDHE 古アイルランド語 síd は「塚」を意味し、人間(ミレー族)に敗れたトゥアハ・デ・ダナーンが退いた住処とされた。実際には新石器時代の通路墓や青銅器時代の古墳が「シー」と呼ばれ、神々
シグルズ図像SIGURD CARVINGS シグルズによる竜fafnir退治を刻んだ中世の彫刻群。文献より古い、あるいは同時代の証言として重視される。
スウェーデンのセーデルマンランドにあるラムスンドの刻画(11世紀前半)
シストラムSISTRUM 手に持って振り鳴らす楽器。U字形またはナオス形の枠に横棒を通し、そこに嵌めた金属片が触れ合って澄んだ音を立てる。ハトホルの祭祀と深く結びつき、柄にこの女神の顔を象ったものが多い。i
スカルド詩SKALDIC POETRY ノルウェーとアイスランドの宮廷で、王侯や有力者への頌詩・追悼詩として詠まれた韻文。作者名が伝わり、詠まれた機会も特定できるものが多い点で、匿名で伝承された『古エッダ』の歌謡とは資料
スキーズブラズニルSKÍÐBLAÐNIR freyrの船。『詩語法』によれば、ドヴェルグ「イーヴァルディの息子たち」がグングニル・シヴの黄金の髪とともに鍛えた。どこへ向かうときも順風を受け、用がなければ布のように畳んで懐に
スコモローフSKOMOROKH 中世ロシアの遍歴芸人。グースリやドゥダーを奏で、歌い、踊り、熊を連れ、道化芝居を演じて市や祝宴を渡り歩いた。原初年代記はすでに11世紀にその存在を記している。教会は一貫して異教の残
太陽の船SOLAR BARQUE エジプトの神学は、太陽の運行を船旅として語る。ラーは昼の船マンジェトで東から西へ空を渡り、日没とともに夜の船メセケテトに乗り換えて冥界の十二時間を進む。船には神々の一団が乗り組み、
ソーマSOMA ヴェーダ祭式で用いられた神々の飲料。ある植物の搾り汁とされるが、原植物が何であったかは今日まで同定されていない。飲む者に活力と霊感をもたらす不死の霊薬とされ、『リグ・ヴェーダ』第9
蘇民将来SOMIN SHŌRAI 『備後国風土記』逸文(『釈日本紀』所引)に見える説話の人物。旅の神・武塔神に宿を乞われた際、富裕な弟の巨旦将来が断ったのに対し、貧しい兄の蘇民将来は歓待した。神は蘇民の子孫には疫病
主権女神SOVEREIGNTY GODDESS 土地を体現し、王と結ばれることで統治の正統性を与える女神を指す類型。王が正しければ土地は実り、王が不正であれば土地は荒れる。アイルランド伝承ではマッハ、エリウ、メイヴらがこの相をも
スパラグモスSPARAGMOS 「引き裂くこと」を意味するギリシア語で、ディオニューソスの信女たちが山中で生きた獣を素手で八つ裂きにする行為を指す。引き裂いた肉をそのまま食べるオーモパギアー(生食)と対で語られ、
スパルトイSPARTOI カドモスがアレースの大蛇を討ち、アテーナーの指示に従ってその牙を地に播いたとき、地中から現れた武装した男たち。カドモスが投げた石をきっかけに同士討ちを始め、エキーオーン、ウーダイオ
スーダSUDA 10世紀後半のビザンツ帝国で編まれたギリシア語の辞典兼百科事典。約三万の項目をアルファベット順に並べ、語義、文法、人物、地名、故事を解説する。編者は不明で、書名の由来にも定説がない
水虎考略SUIKO KŌRYAKU 儒学者・古賀侗庵が文政三年(一八二〇)に編んだ、kappaに関する口碑と図像の集成。豊後日田藩が採録した『河童聞合』の記事と図を多く引き写しており、失われた原本の内容を伝える資料で
シュメール王名表SUMERIAN KING LIST 王権がどの都市からどの都市へ移ったかを、王名と在位年数の羅列として記した文書。前2千年紀初頭の写本が複数伝わり、オックスフォードのウェルド・ブランデル角柱が最も完全な一本として知ら
スヴァルトアールヴヘイムSVARTÁLFHEIMR 『スノッリのエッダ』にのみ現れる地名で、「黒いアールヴ(スヴァルトアールヴ)の国」の意。神々が狼を縛る紐グレイプニルを求めたとき、使者スキールニルはここへ下ってドヴェルグに作らせた
スヴァヤンヴァラSVAYAMVARA 花嫁が居並ぶ求婚者のなかから自ら夫を選ぶ婚姻の儀。語義は「自ら(スヴァヤム)選ぶ(ヴァラ)」で、多くは武技の競技を伴い、勝者が婿となる。『ラーマーヤナ』ではシーターがシヴァの弓を引
スヴャートキSVYATKI 東方正教会の降誕祭から主の洗礼祭までの十二日間を指す、東スラヴの民俗暦の呼称。この間は現世と異界の境が緩むとされた。仮装した若者が家々を巡って祝い歌をうたうコリャダと、未婚の娘たち
感応呪術SYMPATHETIC MAGIC ジェームズ・フレイザーが『金枝篇』(初版1890年)で整理した呪術理解の枠組み。似たものは似たものを生むとする「類感呪術」と、かつて接触したものは離れたのちも影響し合うとする「感染
シュンプレーガデスSYMPLEGADES 黒海への入口に立ち、船が通ろうとするたびに閉じ合わさって砕いたとされる二つの巨岩。「打ち合う岩」(プランクタイ)とも呼ばれる。盲目の予言者ピーネウスの助言に従い、イアーソーンは先に
習合SYNCRETISM 異なる信仰・神格が接触し、同一視や融合を経て一つの信仰形態になること。ゼウスとアメンが結びついたゼウス・アンモン、ギリシアとエジプトの神々を統合したセラピスが典型で、日本の神仏習合
T
運命の書板TABLET OF DESTINIES アッカド語でトゥプシマーティ。神々の頂点に立つ者が身に帯びる粘土板で、世界の運行と秩序をあらかじめ定めるとされた。所持することが主権そのものを意味したため、その奪取と奪還がメソポタ
太平記TAIHEIKI 後醍醐天皇の討幕から南北朝の争乱までを描く軍記物語。十四世紀後半までに現在の四十巻の形にまとまったとみられ、作者は複数と考えられている。史実の記述に中国の故事や怪異譚をふんだんに織
クアルンゲの牛捕りTÁIN BÓ CÚAILNGE アルスター・サイクルの中核をなす散文叙事詩。コナハトの女王メイヴが名牛ドン・クアルンゲを奪うためアルスターへ攻め入り、マッハの呪いで男たちが伏せるなか、クー・フーリンが浅瀬の一騎討
高天原TAKAMAGAHARA (THE PLAIN OF HIGH HEAVEN) 天照大神を中心とする天津神(あまつかみ)が住む天上の高原である。地上の葦原中国、地下の黄泉と並ぶ、日本神話の三層構造の最上層をなす。スサノオが昇って乱暴を働き、のちに天孫瓊瓊杵尊(
他化自在天PARANIRMITA-VAŚAVARTIN 他化自在天(梵 Paranirmita-vaśavartin)は、仏教の宇宙観で欲界に属する六欲天の最上、第六天である。他者が生み出す快楽を思いのままに我がものとして享受する天とさ
イーゴリ遠征物語THE TALE OF IGOR'S CAMPAIGN 1185年のノヴゴロド・セヴェルスキー公イーゴリのポロヴェツ遠征と敗北を題材とする、12世紀末の古東スラヴ語の叙事詩。『イーゴリ軍記』『イーゴリ遠征譚』とも訳される。ルーシの諸公に
タモアンチャンTAMOANCHAN 中央メキシコの神話が語る原初の楽園で、花と霧に覆われた庭園として描かれる。多くの神々の住まいであり、最初の人間の男女が造られた地でもあった。名はマヤ語系に由来するとみられ、この観念
タンガタ・マヌTANGATA MANU タンガタ・マヌ(「鳥人」の意)は、ラパ・ヌイ(イースター島)で毎年行われた儀礼競技と、その勝者に与えられた称号である。各氏族が代理の泳ぎ手ホプを立て、沖の小島モツ・ヌイでセグロアジ
端午の節句DUANWU / TANGO NO SEKKU 陰暦五月五日の節句。五月は古来「悪月」とされ、中国では菖蒲や蓬を門に掛け、五毒を描いた符を貼って邪気と疫病を祓う日であった。明末清初以降は魔除けの鍾馗図を家々に飾る風習が広まり、『
タントラTANTRA 5世紀以降のインドで展開した宗教実践の体系と、その聖典群を指す。ヴェーダとは別系統の権威に立ち、真言(マントラ)、観想、曼荼羅、印契を組み合わせて、行者が神格と一体化することを目指
タプTAPU タプは、神聖である、あるいは危険であるがゆえに接触・使用が禁じられた状態を指すポリネシアの概念である。マオリのtapu、ハワイのkapuなど各地に同源の形があり、英語のtaboo(
タウロボリウムTAUROBOLIUM 大地母神キュベレーの祭祀において行われた、牡牛を犠牲に捧げる儀礼。2世紀以降のローマ世界の碑文に多く現れる。犠牲獣の睾丸を女神に捧げる形が知られ、ガッリの去勢に代わる献供とみなされ
タウロクトニーTAUROCTONY ギリシア語で「牡牛殺し」を意味する。フリギア帽をかぶったミトラースが牡牛にまたがり、顔を背けたまま短剣を突き立てる場面で、ミトラエウムの奥に必ず据えられた。牡牛の傷口に犬と蛇が寄り
テマスカルTEMAZCAL ナワトル語のテマスカリに由来し、「湯気の家」ほどの意。低く小さなドーム状の小屋に入り、焼いた石へ水を掛けて立てた蒸気で発汗する。薬草を用いることも多い。病の治療、産前産後の養生、そ
ウプサラの神殿TEMPLE AT UPPSALA アダム・フォン・ブレーメンが1070年代の『ハンブルク教会史』に記した、ウプサラ(現ガムラ・ウプサラ)の祭祀施設。三座の中央にthor、両脇にウォーダンとフリッコの像が据えられ、飢
天部TENBU / DEVA 梵語デーヴァの訳で、バラモン教・ヒンドゥー教の神々が仏教に取り込まれ、護法善神として再配置されたものの総称。如来・菩薩・明王に次ぐ第四の階層に置かれる。sakra・梵天・vaisr
天神信仰TENJIN WORSHIP 平安時代の学者・官人である菅原道真(845〜903)の霊を天神として祀る信仰。大宰府に左遷されて没したのち、都では要人の死や落雷が相次ぎ、これを道真の祟りとみる見方が広まった。延長
天孫降臨DESCENT OF THE HEAVENLY GRANDCHILD 国譲りを経て、天照大神の孫にあたるニニギが、葦原中国を治めるために高天原から地上へ降ったとする物語。『古事記』『日本書紀』ともに神代の要となる一段に置く。ニニギは八尺勾玉・鏡・草薙
テオティワカンTEOTIHUACAN メキシコ盆地北東部の都市遺跡。最盛期には十万人規模を擁したとされるが、建設者の民族と言語は特定されていない。アステカ人がこの都に入ったのは、すでに廃墟となって数百年を経たのちである
ソロモンの遺訓TESTAMENT OF SOLOMON 1世紀から5世紀のあいだに成立したとみられるギリシア語の偽典。ソロモン王が大天使ミカエルから神の名を刻んだ指輪を与えられ、これによって悪魔を使役し、エルサレム神殿を建てさせたと語る
テーベ三柱神THEBAN TRIAD 古代エジプトの都テーベで、アメンを父、ムトを母、コンスを子として組まれた三神一組。三柱を家族として括る編成は各地の神殿にあり、メンフィスのプタハ・セクメト・ネフェルトゥム、コム・オ
神統記THEOGONY ヘーシオドスが前8世紀末頃に著した叙事詩。カオスからの世界生成と神々の系譜を、ウーラノス・クロノス・ゼウスの三代にわたる王権交代を軸に語る。ギリシア神話の系譜情報の最重要典拠だが、
テスモポリアTHESMOPHORIA 古代ギリシアで、穀物の女神デーメーテールとその娘を祀り、既婚の女性のみが参加して営まれた祭。秋の播種期に数日にわたって行われ、供犠に用いた豚の遺骸を地中に埋めては掘り返し、種子と混
ティアソスTHIASOS dionysusに付き従う随神と信徒の一行。サテュロス、老いたシーレーノス、そして忘我の女信徒マイナデスからなり、テュルソスや太鼓を手に、笛と歌のうちに踊り進む。神が単独で描かれる
三貴子MIHASHIRA NO UZU NO MIKO (THREE NOBLE CHILDREN) 黄泉から戻ったイザナギが禊で身を清めた際、最後に成った三柱の神を指す(『古事記』)。左目から天照大神、右目から月読命、鼻から須佐之男命が生まれ、イザナギは自ら生んだ神の中で最も貴い
三種の神器THREE SACRED TREASURES (IMPERIAL REGALIA) 鏡(八咫鏡)・剣(草薙剣、すなわち天叢雲剣)・玉(八尺瓊勾玉)の三つを指す。天岩戸で用いられた鏡、スサノオが八岐大蛇の尾から得て天照大神に献じた剣、そして勾玉という、いずれも神話上
三皇五帝THREE SOVEREIGNS AND FIVE EMPERORS 中国神話・古史における伝説的な帝王群の総称。天地開闢ののち、人々に火・農耕・文字などの文化をもたらした聖王として語られる。三皇・五帝の顔ぶれは典拠により一定せず、三皇には伏羲・神農
テュルソスTHYRSUS ディオニューソスとマイナデス、サテュロスらが手にする杖で、豊穣と陶酔の象徴。大茴香(ジャイアント・フェンネル)の中空の茎に蔦や葡萄の蔓を巻きつけ、先端に松かさを載せる。松かさは樹脂
チベット仏教TIBETAN BUDDHISM 七世紀以降にチベットへ伝わり、独自に展開した仏教。インドの後期密教を体系のまま受け継いだ点に最大の特色があり、日本に伝わった中期密教とは尊格の構成も儀礼も異なる。十一世紀にアティー
ティル・ナ・ノーグTÍR NA NÓG アイルランド伝承の異界を指す名の一つで、「常若の国」の意。老い・病・死・偽りを知らぬ土地とされ、西の海の彼方、あるいは湖底や塚の内にあると語られる。マグ・メル(歓びの平原)、ティー
ティーターンTITANS ギリシア神話で、ウーラノスとガイアの子である第一世代の神々。ヘーシオドス『神統記』は十二柱を数え、末子クロノスが父を斃して支配権を握る。そのクロノスの子ゼウスらオリュンポスの神々に
ティーターノマキアーTITANOMACHY ゼウス率いるオリュンポスの神々と、クロノス率いるティーターン神族との十年に及ぶ戦争。『神統記』が主要典拠で、キュクロープスの雷霆とヘカトンケイルの投石が勝敗を決した。勝利したゼウス
トラカシペワリストリTLACAXIPEHUALIZTLI シウポワリ第二月にあたる祭で、春分のころ、雨季の始まる前に営まれた。名は「人の皮剥ぎ」を意味する。戦争捕虜が犠牲に供され、剥がれた皮は黄色く染められて「金の衣」と呼ばれ、神官が二十
エーディンへの求婚TOCHMARC ÉTAÍNE 神話物語群に属する古アイルランド語の物語で、三部からなる。ミディールの妻となったエーディンが先妻フアヴナハの呪いで蠅に変えられ、千と十二年ののちに人として生まれ変わって上王エオヒド
東北怪談の旅TŌHOKU KAIDAN NO TABI 作家・山田野理夫(1922〜2012)が1974年に自由国民社から刊行した怪談集。東北地方に伝わる話という体裁で、多数の妖怪譚を短い読み物として収める。ところが、そこに語られる話の
トナルポワリTONALPOHUALLI 20種の日符号(ワニ・風・家・トカゲ…)と1から13までの数を組み合わせ、13×20=260日で一巡する暦。メソアメリカ全域で用いられた。13日ずつの区切りをトレセーナと呼び、各ト
遠野物語TŌNO MONOGATARI 柳田國男が明治四十三年(一九一〇)に自費出版した説話集。遠野出身の佐々木喜善が語った土地の伝承を、柳田が簡潔な文体で書き留めた一一九話からなる。座敷童子・山男・オシラサマ・kapp
トフェトTOPHET カルタゴをはじめとする西地中海のフェニキア(ポエニ)系都市に設けられた聖域。壺に納めた幼児や仔羊・仔山羊の火葬骨を、タニトやバアル・ハンモンへの奉献を記した石碑の下に埋めた。カルタ
トルクTORC 金属の棒をねじり、あるいは編んで作る首環・腕環。鉄器時代のケルト社会で広く用いられ、戦士や有力者の身分、富、そして聖なる性格を示す徴とされた。エリートの墓や神々の像に伴ってしばしば
トーテムポールTOTEM POLE 北アメリカ北西海岸の先住民が、杉の巨木に紋章的な動物や精霊を彫り重ねた記念柱。氏族の系譜や権利、物語を可視化する装置であり、文字を持たない社会にとっての記録媒体でもあった。最上部に
トレセーナTRECENA トナルポワリを構成する13日一組の区切り。20の日符号と1から13までの数を組み合わせる体系のうち、数の側が一巡する周期にあたり、260日は20のトレセーナからなる。呼び名には区切
三十番目の国TRIDESYATOE TSARSTVO ロシアの昔話の定型句「三十九の国の彼方、三十番目の国に」で示される異界。主人公は森を抜け、川を渡り、あるいは鳥や狼に運ばれてそこへ至る。この国のものはみな黄金であり、黄金の林檎、黄
トリムールティTRIMURTI ブラフマー(創造)・ヴィシュヌ(維持)・シヴァ(破壊)の三神を一組とする図式。プラーナ文献期に整えられた比較的新しい枠組みであり、実際の信仰はヴィシュヌ派・シヴァ派・シャークタ派に
ブリテンの三題詩TRIOEDD YNYS PRYDEIN 中世ウェールズで伝えられた、人物や出来事を三つ一組にして列挙する詩句の集成。「ブリテン島の三人の力ある豚飼い」「ブリテン島の三つの空しい戦い」といった形をとる。語り手が物語の目録を
凱旋式TRIUMPHUS ローマで、規定の戦果を挙げた将軍に元老院が認めた祝勝行進。戦利品と捕虜を連ね、将軍は四頭立ての戦車に乗り、顔を朱で染め、月桂冠を戴いてカピトーリウム丘のjupiter神殿まで練り歩
トロイア戦争TROJAN WAR パリスによるヘレネー奪取を発端に、アガメムノーンを総大将とするギリシア連合軍がトロイア(イーリオス)を包囲し、十年の後に木馬の計略で陥落させたとされる戦い。ホメーロスの二大叙事詩(
憑き物TSUKIMONO 人や家に取り憑き、病や禍、あるいは富をもたらすとされた霊的な存在の総称。また、それに憑かれた状態をも指す。多くは狐・蛇・犬などの動物の霊で、地方ごとに管狐、オサキ、人狐、犬神、トウ
徒然草TSUREZUREGUSA 兼好法師が十四世紀前半に書いた随筆で、序段と二百四十三段からなる。無常を説く章段と、作法・故実・処世をめぐる具体的な助言とが並ぶ構成が特色である。近世に古典として広く読まれ、絵画・
トゥアハ・デ・ダナーンTUATHA DÉ DANANN アイルランド神話における神々の一族。名は「ダヌ女神の民」と解される。『アイルランド来寇の書』は彼らを島に相次いで渡来した種族の一つとして扱い、フィル・ボルグを破って島を得たのち、マ
兜率天TUṢITA 兜率天(梵 Tuṣita、「知足」の意)は、仏教の宇宙観で欲界に属する六欲天の第四に位置する天界である。ここには一生補処の菩薩、すなわち次に仏となる者が住むとされ、釈迦も成道前はこ
二十八宿TWENTY-EIGHT MANSIONS 中国天文学で、月の運行を目安に天の赤道帯を二十八の区画に分けた星座の体系。東方の角・亢・氐・房・心・尾・箕、北方の斗・牛・女・虚・危・室・壁というように、四方へ七宿ずつを配し、四神
大地の重みTYAGA ZEMNAYA ロシアの叙事詩に繰り返し現れる主題。農夫mikula-selyaninovichが道に落とす小さな袋には「大地のすべての重み」が入っており、これを持ち上げようとした巨人svyato
イシスの結び目TYET アンクに似た記号で、環から二本の帯が垂れる。エジプト語ではテト(tyet)と呼ぶ。記号そのものは古くからあるが、遅くとも新王国期にはisisの標章と見なされるようになった。赤い碧玉
ツォルキンTZOLK'IN 20の日名と1から13までの数を掛け合わせ、260日で一巡する暦。アステカのトナルポワリと同一の仕組みであり、両者はメソアメリカ全域に共有された古い体系の地域変種である。日名も対応
U
産屋UBUYA (BIRTH HUT) 出産のために母屋から離して建てた仮屋。出産に伴う血の忌みを日常の生活空間から隔てる装置であり、近代まで各地で用いられた。産が済めば焼き捨てたり壊したりする例も多い。記紀神話では、木
ウトゥク・フルUDUG-HUL シュメール語で「悪しきウトゥック」を意味し、その名で呼ばれる呪文の集成を指す。アッカド語では拡大された十六書板の形をとり、ウトゥックー・レムヌートゥと呼ばれた。当初はシュメール語の
ウガリットUGARIT 地中海に面した古代シリアの都市国家で、前2千年紀に栄えた。20世紀にラス・シャムラの遺跡から大量の粘土板が出土し、そこに記された楔形文字の神話文書——とりわけ嵐神バアルの戦いを語る
宇治拾遺物語UJI SHŪI MONOGATARI 鎌倉時代前期に成立した説話集で、編者は不詳。約二百話を収める。『今昔物語集』と重なる話も多いが、教訓を前面に出さず、平明な和文で語る点に特色がある。瘤取り爺、わらしべ長者、雀の恩返
氏神UJIGAMI 本来は氏族の祖神または守護神で、藤原氏の春日、中臣氏の枚岡、清和源氏のhachimanのように、一族の結束の核となった。氏族を離れて土地に定着した鎮守神・産土神(うぶすながみ)と観
ウク・パチャUKU PACHA アンデスの宇宙観では、世界は天上のハナン・パチャ、地上のカイ・パチャ、地下のウク・パチャに分かたれる。incaの体系でこの領域と最も強く結びつけられるのがsupayである。ウク・パ
アルスター物語群ULSTER CYCLE 中世アイルランド文学を整理する四つの物語群の一つで、アルスターの王コンホヴァル・マク・ネサの宮廷と、英雄クー・フーリンの事績を中心に据える。中核をなすのは『クアルンゲの牛捕り』で、
海幸山幸UMISACHI AND YAMASACHI 『古事記』『日本書紀』が天孫降臨のあとに置く物語。漁を得意とする兄と狩りを得意とする弟が道具を交換し、弟は借りた釣針を海に失う。塩土老翁の導きで海神の宮へ下った弟は、その娘トヨタマ
ウルワンURVAN アヴェスター語で「魂」を意味する語(urvan)。ゾロアスター教では人の非物質的な側面をいくつかの部分に分けて考え、ウルワンは現世に送り出されて善悪の戦いに加わる部分にあたる。死後
V
ヴァーハナVĀHANA サンスクリットで「運ぶもの」を意味し、神格が騎乗・随伴する動物の乗騎を指す。単なる移動の手段ではなく、その神の性格や領分を映す象徴として、図像に欠かせない要素である。インドラの白象
ヴァジュラVAJRA インドラが敵に投じる雷霆の武器。工匠神トヴァシュトリが鍛えたとされ、蛇ヴリトラを打ち殺して天の水を解き放った一撃で知られる。ダイヤモンドのように砕けず、稲妻のように打ち砕く——堅固
ヴァルハラVALHALLA 北欧神話における、主神オーディンの館。名は古ノルド語で「戦死者の広間」を意味する。戦場で名誉ある死を遂げた勇士(エインヘリャル)は戦乙女ヴァルキュリャに選ばれてここへ導かれ、昼は戦
ヴァナラVANARA ヒンドゥーの叙事詩『ラーマーヤナ』に登場する、森に住む猿の一族。人語を話し、社会と王をもち、しばしば神々の子として超人的な力をそなえる。ラーマがさらわれた妃シーターを取り戻す戦いで
ヴァン神族VANIR 北欧神話に登場する神々の一族で、豊穣・海・富・予見の力と結びつく。主神オーディンらのアース神族とは別系統で、両者は太古に戦い、のちに人質を交換して和解したと伝えられる。この和睦によ
ヴァサント・パンチャミーVASANT PANCHAMI ヒンドゥー暦の春先(おおむね一月から二月)に祝われる祭で、女神サラスヴァティーへの崇敬を中心とする。人々は黄色い衣をまとい、学問・音楽・芸術の加護を願う。幼子に初めて文字を書かせる
ヴァス神群VASUS 自然の諸力を担う八柱の神々。構成は文献によって揺れるが、火(アグニ)、風(ヴァーユ/アニラ)、地、水、太陽、月、星、暁などが数えられる。ヴェーダではインドラに従う神群として現れ、後
ヴェーダVEDA インド最古の宗教文献群。『リグ』『サーマ』『ヤジュル』『アタルヴァ』の四種からなり、最古層の『リグ・ヴェーダ』は前1500〜前1200年頃に口承で成立したとされる。ここで主役を張る
ヴィーナーVEENA 南アジアで古くから用いられてきた撥弦楽器の総称。長い棹に共鳴用の瓢箪を備え、豊かな余韻をもつ音色で知られる。ヒンドゥー教の女神サラスヴァティーは、しばしば四本の腕の一組でこのヴィー
ヴェールVEL タミルの軍神ムルガン(スカンダ)が執る槍。母パールヴァティーから授けられたとされ、その力(シャクティ)の顕現とみなされる。アスラの王スーラパドマンを討った武器であり、南インドの寺院
ウェスタの巫女VESTAL VIRGINS フォルム・ロマーヌムのウェスタ神殿で国家の火を絶やさぬよう守った女性祭司(ウェスターリス)。定員は六名で、良家の少女が六歳から十歳のうちに選ばれ、原則三十年を勤めた。最初の十年を学
ヴィスム・エト・レペルトゥムVISUM ET REPERTUM 「検分および所見」。1732年、ハプスブルク領セルビアのメドヴェジャ村で吸血鬼の噂を調査した軍医ヨハン・フリュッキンガーの公式報告書。掘り出された遺体の状態を淡々と記録し、複数の将
バンベルクのオットー伝VITAE OF OTTO OF BAMBERG バンベルク司教オットー(1060頃–1139)による1124年と1128年のポメラニア布教を記した聖人伝。修道士エボの筆になるもの(1151年頃)と、ヘルボルトによる対話体のもの(
ヴォルスンガ・サガVÖLSUNGA SAGA 13世紀後半のアイスランドで、古い英雄歌謡を散文に編み直した伝説サガ。ヴォルスング一族の興亡を、始祖からシグルズによる竜fafnir退治、ブリュンヒルドとの悲恋、そしてグズルーンの
奉献碑文VOTIVE INSCRIPTION 神格に願をかけた者が、それが叶えられた証しとして祭壇・像・板に刻んだ銘文。ローマ世界では「誓願を進んで、当然のこととして果たした」を意味する定型句 votum solvit lib
ヴリシュニ族の英雄VRISHNI HEROES 前4世紀頃からマトゥラー周辺で信仰された五人の英雄神で、パンチャヴィーラ(五勇士)とも呼ばれる。顔ぶれは資料によって入れ替わるが、サンカルシャナとヴァースデーヴァは共通し、それぞれ
W
和漢三才図会WAKAN SANSAI ZUE 大坂の医師である寺島良安が編み、正徳2年(1712年)頃に成った図入りの百科事典。全105巻。明の王圻『三才図会』に倣い、天部・地部・人部の三才に万物を分類して、図と漢文の解説を並
和名類聚抄WAMYŌ RUIJUSHŌ 源順(みなもとのしたごう)が承平年間(九三一〜九三八)に編んだ辞書。漢語を天地・人倫・動植物などの部門に分類し、出典を挙げて和名を対応させる。当時どの漢語がどの和語に当てられていた
ウジャトWEDJAT 「無事なるもの・健全なるもの」を意味し、古代エジプトで最も広く用いられた護符の一つ。神話でホルスがセトとの争いに損ない、のちに癒やされた目に由来し、傷ついたものが再び全きに復するこ
心臓の計量WEIGHING OF THE HEART 古代エジプトの来世信仰で、死者が冥界に入る資格を判ずる審判。死者の書の描くところ、「二つの真理の広間」で死者の心臓が正義の女神マアトの羽根と天秤にかけられ、山犬頭のアヌビスがこれを
ウェストカー・パピルスWESTCAR PAPYRUS ベルリン・エジプト博物館蔵のパピルス(Berlin 3033)。クフ王の宮廷で王子たちが語る五つの奇蹟譚を、中エジプト語の神官文字で12欄にわたって記す。現存写本は第2中間期のもの
ウィッカーマンWICKER MAN カエサル『ガリア戦記』とストラボンが伝える、ガリアの人身供犠に用いられたとされる巨大な人形。枝を編んで作り、内部に人を入れて焼いたという。ルカヌス注釈がタラニスへの供犠として木製の
有翼日輪WINGED SUN DISK 円盤に一対の翼を添えた意匠。古代エジプトでベフデトのホルスの標識として現れ、前2千年紀のうちにレヴァント、アナトリア、メソポタミアへ広がった。新アッシリアの浮彫や印章では、円盤の中
シーレーノスの知恵WISDOM OF SILENUS プリュギア王midasに捕らえられたsilenusが、しつこく問い詰められた末に語ったとされる言葉。人にとって最も善いのは生まれてこないこと、それに次いで善いのは早く死ぬことだ、と
妖術WITCHCRAFT 超自然的な力を用いて他者に害をなす術。多くの社会において、癒しや守護をもたらす正統な宗教的実践と対をなす、負の領域として観念される。誰を妖術師と見なすかは、しばしば共同体の規範や不
仕事と日WORKS AND DAYS 前8世紀末から前7世紀初頭のヘーシオドスによる教訓叙事詩。遺産をめぐって争った弟ペルセースに正義と労働を説く形をとり、農事暦・航海の適期・吉凶の日を列挙する。神話を語ることが主目的
武当山MOUNT WUDANG 湖北省北西部にそびえる道教の聖地。太和山ともいう。浄楽国の太子が四十二年の修行の末に昇天し、真武大帝(玄天上帝)となった山と伝えられ、真武信仰の中心地となった。明の永楽帝は靖難の役
五行WUXING (FIVE PHASES) 木・火・土・金・水という五つの働き(行)の消長で万物を説明する中国の思想。戦国期の鄒衍(すうえん)らによって整えられ、前漢に国家の学説として定着した。五行には方位・季節・色・音・臓
X
シバルバーXIBALBA シバルバー(Xibalba、「恐怖の場所」の意)は、キチェ・マヤの冥界である。フン・カメー(一の死)とウクブ・カメー(七の死)を筆頭とする死の主たちが治め、暗黒の館、寒気の館、ジャ
シウポワリXIUHPOHUALLI 20日からなる月を18並べ、末尾にネモンテミと呼ぶ凶日の5日を加えて365日とする太陽暦。各月には固有の名と大祭が結びついていた。第二月トラカシペワリストリはシペ・トテックに、第五
Y
林檎の救世主祭APPLE FEAST OF THE SAVIOUR 主の変容祭(ユリウス暦8月6日、現行の暦で8月19日)にあたる東スラヴの民俗の祝日。この日まで新しい林檎を口にせず、教会で果実を聖別してもらってから食べ始める。蜂蜜・林檎・胡桃と三
ヤジュナYAJNA 古代インドのヴェーダに規定された供犠儀礼で、祭場に灯した聖火へ供物(バターや穀物など)を捧げる。火は神々の口とされ、供物は火神アグニを介して天上の神々へ運ばれると伝えられる。ヴェー
ヤザタYAZATA アヴェスター語で「崇拝に値する者」を意味する。ザラスシュトラの改革はアフラ・マズダーを唯一の創造神としたが、古いイランの神々が消えたわけではなく、創造神に仕える下位の神格として体系
ユグドラシルYGGDRASIL 北欧神話の宇宙を貫いて立つ世界樹。常緑のトネリコとされ、その枝は天に広がり、三本の根がそれぞれ別の泉——アース神族の国のウルズの泉、巨人の国のミーミルの泉、ニヴルヘイムのフヴェルゲ
妖怪YŌKAI 妖怪は、日本の民間伝承や説話に登場する超自然的な存在の総称である。鬼・天狗・河童・雪女など、その姿も性質もさまざまで、山川や家屋、古びた道具にまで宿るとされた。神が祭祀の体系のなか
妖怪談義YŌKAI DANGI 民俗学者・柳田國男(1875〜1962)の妖怪に関する論文・随筆をまとめ、昭和31年(1956年)に刊行された著作。柳田は当初、天狗や山男を山中へ逃れた先住民の記憶とみていたが、の
妖怪名彙YŌKAI MEII 民俗学者の柳田國男が昭和13年(1938年)に発表した、妖怪の語彙集。各地の民間伝承から採取した妖怪の名を項目に立て、その性質や現れ方を簡潔に記す。のちに評論集『妖怪談義』(195
黄泉YOMI (THE LAND OF THE DEAD) 死者の赴く国で、「黄泉の国」「黄泉津国(よもつくに)」とも呼ばれる。火の神を生んで命を落としたイザナミがここへ去り、夫イザナギが連れ戻そうと訪ねるが、変わり果てた姿を見て逃げ帰る。
寄り神YORIGAMI 海から寄り来るものに神性を認める信仰。漂着した流木・石・鯨、さらには水死体までもが「寄り神」「寄り仏」として祀られ、豊漁をもたらすと信じられた。海の彼方に富の源をみる観念に立ち、え
ユガYUGA インドの循環的な時間論における世界の一時代。クリタ(サティヤ)、トレーター、ドヴァーパラ、カリの四期からなり、順を追って法(ダルマ)が衰え、人の寿命と徳が減じてゆく。四つを合わせた
Z
ザゴヴォルZAGOVORY ロシア・ウクライナ・ベラルーシの民間に伝わる呪文(ロシア語 заговор、複数 заговоры)。病・出血・不眠・恋・家畜・狩りなど目的ごとに型があり、19世紀以降に大量に採集
ズブルチの石像ZBRUCH IDOL ドニエストル川の支流ズブルチ川の川底から1848年に引き上げられた石灰岩の四角柱。高さ約2.7メートル。頂部に東西南北を向く四つの顔を彫り、柱の四面は三段のレリーフで覆われる。三段
ジッグラトZIGGURAT 日干し煉瓦を積み、焼成煉瓦で表面を覆った階段状の巨大建造物。名はアッカド語 ziqqurratum(高く築くもの)に由来する。層は二段から七段まであり、傾斜路や螺旋状の登り道で頂へ
ゾロアスター暦ZOROASTRIAN CALENDAR 三十日からなる月を十二重ね、末尾に五日を加えて一年とする暦。日と月のそれぞれに神格の名が与えられ、月名と日名が重なる日がその神格の祭日となる。第1日はアフラ・マズダー、第2日から第
瑞獣AUSPICIOUS BEAST 中国で、徳の高い為政者の治世や太平の世に姿を現し、吉兆を告げるとされた霊獣の総称。麒麟・鳳凰・霊亀・竜(四霊)を代表とするが、白沢・九尾狐・貔貅・獬豸なども時代により瑞獣に数えられ