北欧神話の宇宙を貫いて立つ世界樹。常緑のトネリコとされ、その枝は天に広がり、三本の根がそれぞれ別の泉——アース神族の国のウルズの泉、巨人の国のミーミルの泉、ニヴルヘイムのフヴェルゲルミル——に届く。神々は日ごとウルズの泉のもとに集まり、裁きを行う。
樹には多くの獣が棲む。頂に鷲、その眉間に鷹ヴェズルフェルニル、根を齧る蛇ニーズヘッグ、両者のあいだを走って悪口を伝えるリスのラタトスク、枝葉を食む四頭の牡鹿。『グリームニルの言葉』は、この樹が人の知る以上の苦しみに耐えていると歌う——上で鹿が食み、脇で朽ち、下で蛇が齧るからである。
名は「イグ(オーディンの別名)の馬」と解するのが通説で、自らを槍で貫き九夜この樹に吊り下がってルーンを得た伝承に結びつく。絞首台を馬に喩えるケニングの型があるためである。