水浴する天女の衣を人が隠したために、天女が天に帰れず地上に留まるという説話の型。日本では風土記の逸文に古い形が伝わる。『丹後国風土記』逸文の奈具社縁起では、比治山頂の真奈井で水浴していた八人の天女のうち一人が老夫婦に羽衣を隠され、その家で万病に効く酒を醸して夫婦を富ませたが、十余年ののち追い出され、漂泊の末に奈具村へ至って鎮まった。『近江国風土記』逸文では天女が男と夫婦になり、『駿河国風土記』逸文に基づく三保松原の伝えは能『羽衣』の題材となった。異類の女が人と交わり、やがて去るという点で異類婚姻譚と重なるが、去る理由が正体の露見ではなく衣の返還にある点が異なる。同型の説話は東アジアから北ユーラシアに広く分布し、比較研究では白鳥処女説話と呼ばれる。
GLOSSARIUM · HAGOROMO LEGEND