ヘレニズム期のエジプトで、知恵と書記の神トートとギリシアの神ヘルメースとが習合して生まれた伝説上の賢者。「三重に偉大な」を意味する名をもち、神とも太古の賢人とも見なされた。彼の名に仮託された一群の文書(『ヘルメス文書』)は、宇宙・神・魂をめぐる神秘思想を説き、後世の錬金術・占星術・自然魔術の源泉となった。ルネサンス期のヨーロッパで再発見され、近代初期の思想に大きな影響を与えた。二つの文化の神が一人の賢者に溶け合った、習合の代表例である。
GLOSSARIUM · HERMES TRISMEGISTUS