作家・山田野理夫(1922〜2012)が1974年に自由国民社から刊行した怪談集。東北地方に伝わる話という体裁で、多数の妖怪譚を短い読み物として収める。ところが、そこに語られる話の多くは現地の民間伝承として確認できず、鳥山石燕の妖怪画に後から筋書きを与えたとみられるものが少なくない。村上健司ら妖怪研究者は、赤舌・網切・油赤子をめぐる話など、収録された話のいくつかを山田自身の創作と指摘している。昭和以降の妖怪図鑑がこの書を典拠として引いたため、そこで生まれた設定が「古来の伝承」として広く流通する結果を招いた。江戸の図像と近代の解説とを切り分けるうえで、注意して扱うべき文献である。
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