上流の雨によって毎年夏に水位が上がり、秋口に頂点を迎えて全土の耕地に肥沃な泥を残した増水。エジプトの一年はアケト(増水)・ペレト(播種)・シェムウ(収穫)の三季からなり、暦そのものがこの周期に従う。増水を体現するのがハピ、急湍で水量を按配するのがクヌム、水を注ぐのがサテト、その到来を告げるのがアヌケトとされた。シリウス(ソプデト)が明け方の空に再び現れる時期が増水の開始と重なるため、星の観測と暦もここに結びついた。水位は各地のナイロメーターで測られ、その数値がそのまま税額の算定に使われている。1970年のアスワン・ハイ・ダム完成により、この周期は失われた。
GLOSSARIUM · INUNDATION OF THE NILE