シグルズによる竜ファフニール退治を刻んだ中世の彫刻群。文献より古い、あるいは同時代の証言として重視される。
スウェーデンのセーデルマンランドにあるラムスンドの刻画(11世紀前半)は、岩面に彫られた蛇の帯そのものが竜の胴体をなし、その下から剣を突き上げるシグルズ、心臓を焼く場面、指を吸う所作、囀る鳥、殺されたレギンと鍛冶道具が一続きに彫られている。物語のほぼ全編が一枚の岩に収まっている。ノルウェーのヒュレスタード木造教会(12〜13世紀)の門柱にも同じ連続場面が浮彫にされ、現在はオスロの文化史博物館にある。マン島のジャービー十字架をはじめとする石十字にも同主題が現れる。
注目すべきは、これらの多くがキリスト教の記念物である点である。ラムスンドの刻画は橋の建造を記念するもので、ゴスフォース十字架と同じく、異教の英雄譚がキリスト教の文脈のなかで彫られている。竜を倒す英雄という図式が、聖ゲオルギオスや悪魔を打ち破るキリストの像と重ねて読まれた可能性が指摘されている。