病を得た者が神殿に泊まり込んで眠り、夢のうちに神からの治療やお告げを授かろうとする古代の宗教習俗。ギリシア語ではエンコイメーシスと呼ばれる。とりわけ医神アスクレーピオスの聖所(アスクレピエイオン)で盛んに行われ、参籠者は身を清めて供物を捧げ、聖なる眠りにつくと、夢のなかに神や聖なる蛇が現れて患部に触れ、あるいは処方を告げたと伝えられる。エピダウロスなどの聖所には、こうして癒えたと称する人々の奉納碑が数多く残る。ガリアとブリタンニアの治癒聖所にも同じ作法が見られ、ラテン語ではインクバティオと呼ばれる。ブリタンニアのノドンスの神殿は北西端が三つの小室に分かれており、病を得た巡礼が眠るための施設と解されてきた。ブルボン=ランシーのダモナへの奉献の一つも、この儀礼と結びつけられている。
GLOSSARIUM · INCUBATION (ENKOIMESIS)