レヴァント地方で用いられた22文字の子音文字体系で、前9世紀頃にギリシア人がこれを受容し、余った記号を母音に転用してギリシア文字が成立した。アルファベットが西方へ広がる出発点にあたる。ヘーロドトスは、テーバイに来住したフェニキア人カドモスがこの文字をギリシアにもたらしたと記し、ボイオーティアで見たという古い碑文を「カドモス文字」と呼んだ。ギリシア人自身が自国の文字を外来のものと認識していた証言であり、実際の伝来経路とも大枠で合致する。字母の名(アルパ、ベータ)がセム語の語彙に由来することも、この系譜を裏づけている。
GLOSSARIUM · PHOENICIAN ALPHABET