ギリシアの冥界を流れるとされた河の総称。通例、誓いのステュクス、嘆きのアケローン、号泣のコーキュートス、忘却のレーテー、炎のプレゲトーンの五つを数える。ただしこの整理は後代のもので、古い資料が五つを揃えて挙げるわけではない。上下関係も一定せず、ホメーロスはコーキュートスとプレゲトーンがアケローンに注ぐとし、ウェルギリウスは逆にアケローンから他が発するとする。日本語の資料に多い「ステュクスの四支流」という説明も、原典が一様に述べるものではない。カローンが死者を渡す河も、ギリシアの資料ではアケローン、ローマの詩人ではステュクスと分かれる。名がそれぞれ嘆き・忘却・炎といった観念を負っており、地理ではなく死の諸相を河の形で並べたものと読める。
GLOSSARIUM · RIVERS OF THE UNDERWORLD