アステカ神話
アステカ神話は、15〜16世紀にメキシコ中央高原で覇を唱えたメシカ(アステカ)を中心に、ナワトル語を話す諸族が伝えた神々と宇宙観の体系である。テスココ湖の島に築かれた都テノチティトラン(現メキシコシティ)を核とし、1519年のスペイン人到来まで栄えた。
もっとも、その神々の多くはアステカに固有ではない。雨神トラロックや羽毛の蛇ケツァルコアトルは、千年以上前のテオティワカンにまで遡る古い神格であり、アステカはメソアメリカが積み重ねてきた信仰を受け継いだ後発の民である。これに対し、太陽と戦争の神ウィツィロポチトリは、北方から移り住んだメシカが自分たちの守護神として奉じた、この体系に固有の神である。
原典資料の事情は独特である。アステカ人自身の絵文書(コデックス)の多くは征服期に焼かれて失われ、いま骨格を伝えるのは、征服後にナワトル語とスペイン語で記録された資料である。フランシスコ会士サアグンが先住民の証言をもとに編んだ『フィレンツェ写本』、貢納と暦を伝える『メンドサ絵文書』、創世を語る『太陽の伝説』や『絵によるメキシコ人の歴史』などがそれにあたる。いずれも征服者の視点や布教の関心を経ている点に、読む側の注意がいる。
神々の構造の根には、両性を備えた二元の神オメテオトルが置かれる。その現れである黒・白・赤・青の四柱のテスカトリポカが世界の四方位と創造を担い、白が羽毛の蛇ケツァルコアトル、青がウィツィロポチトリに重ねられる。宇宙は一度で完成したのではなく、四つの太陽(時代)が生まれては滅び、いま我々が生きるのは第五の太陽だとする五つの太陽の観念が全体を貫く。その第五の太陽がトナティウであり、テオティワカンの廃墟は、神々が身を焼いてこれを生んだ場所と考えられた。太陽は放っておけば止まる。それを動かし続けるには神々の血が要り、人もまた人身供犠によって応えねばならない——この論理がアステカの祭祀の底を流れている。
美術では、テオティワカンの壁画からアステカの石彫・絵文書まで、ゴーグル状の目や羽毛の蛇、火の蛇といった様式化された徴によって神が示される。テンプロ・マヨールの発掘は、伝承と実際の祭祀を結びつけた。蛇を咥えた鷲がサボテンにとまるウィツィロポチトリの神託は、いまもメキシコ国旗の中央に描かれている。
この体系の神格・幻獣
74柱を収載(知名度順)
アステカ神話
ケツァルコアトル
Quetzalcōātl — 創造神・主神
PLATE
アステカ神話
トラロック
Tlāloc — 雷神
PLATE
アステカ神話
ウィツィロポチトリ
Huītzilōpōchtli — 太陽神
PLATE
アステカ神話
コアトリクエ
Cōātlīcue — 死神・冥界神
PLATE
アステカ神話
テスカトリポカ
Tēzcatlīpohca — 創造神・主神
PLATE
アステカ神話
ショロトル
Xolotl — 雷神
PLATE
アステカ神話
チャルチウィトリクエ
Chālchiuhtlīcue — 水神・海神
PLATE
アステカ神話
ショチケツァル
Xōchiquetzal — 愛と美の神
PLATE
アステカ神話
ショチピリ
Xōchipilli — 愛と美の神
PLATE
アステカ神話
シペ・トテック
Xīpe Totēc — 軍神
PLATE
アステカ神話
エエカトル
Ehēcatl — 創造神・主神
PLATE
アステカ神話
トナティウ
Tōnatiuh — 太陽神
PLATE
アステカ神話
ミクトランテクートリ
Mictlāntēcutli — 死神・冥界神
PLATE
アステカ神話
トラソルテオトル
Tlazōlteōtl — 愛と美の神
PLATE
アステカ神話
ミシュコアトル
Mixcōātl — 天空神
PLATE
アステカ神話
シウテクトリ
Xiuhtēuctli — 火神
PLATE
アステカ神話
センテオトル
Centēōtl — 豊穣神
PLATE
アステカ神話
チコメコアトル
Chicōmecōātl — 豊穣神
PLATE
CREATURE
アステカ神話
シパクトリ
Cipactli — 大地
PLATE
アステカ神話
ナナワツィン
Nanāhuātzin — 太陽神
PLATE
アステカ神話
テクシステカトル
Tēcciztēcatl — 月神
PLATE
アステカ神話
トラルテクトリ
Tlāltēuctli — 豊穣神
PLATE
アステカ神話
トシ
Tocih — 豊穣神
PLATE
アステカ神話
イツパパロトル
Ītzpāpālōtl — 軍神
PLATE
アステカ神話
トラウィスカルパンテクートリ
Tlāhuizcalpantēuctli — 天空神
PLATE
アステカ神話
コヨルシャウキ
Cōyolxāuhqui — 月神
PLATE
アステカ神話
センツォンウィツナワ
Centzonhuītznāhua — 星
PLATE
アステカ神話
オメテオトル
Ōmeteōtl — 原初の対
PLATE
アステカ神話
トナカテクートリ
Tōnacātēcuhtli — 創造
PLATE
アステカ神話
トナカシワトル
Tōnacācihuātl — 原初の対
PLATE
アステカ神話
ミクテカシワトル
Mictēcacihuātl — 死
PLATE
アステカ神話
メツトリ
Mētztli — 月
PLATE
アステカ神話
ウェウェテオトル
Huēhuetēotl — 火
PLATE
アステカ神話
パテカトル
Patecatl — プルケ
PLATE
CREATURE
アステカ神話
ツィツィミトル
Tzitzimitl — 星
PLATE
CREATURE
アステカ神話
シワテテオ
Cihuātēteoh — 出産
PLATE
CREATURE
アステカ神話
アウィツォトル
Āhuitzotl — 水辺
PLATE
アステカ神話
オショモコ
Oxomoco — 最初の人間
PLATE
アステカ神話
シパクトナル
Cipactonal — 最初の人間
PLATE
アステカ神話
チャンティコ
Chantico — 家の火
PLATE
アステカ神話
ヤカテクートリ
Yacatēcuhtli — 商業
PLATE
CREATURE
アステカ神話
シウコアトル
Xiuhcōātl — 火
PLATE
アステカ神話
チャルチウトトリン
Chalchiuhtotolin — 疫病
PLATE
CREATURE
アステカ神話
ナワル
Nāhualli — 変身
PLATE
アステカ神話
イシュトリルトン
Īxtlīltōn — 医術
PLATE
アステカ神話
オポチトリ
Ōpōchtli — 漁
PLATE
アステカ神話
パイナル
Payīnal — ウィツィロポチトリの代理
PLATE
アステカ神話
テポステカトル
Tepoztēcatl — プルケ
PLATE
アステカ神話
アウィアテテオ
Āhuiatēteoh — 過度
PLATE
アステカ神話
テペヨロトル
Tepēyōllōtl — 洞窟
PLATE
アステカ神話
ウェウェコヨトル
Huēhuecoyōtl — トリックスター
PLATE
アステカ神話
イツトラコリウキ
Itztlacoliuhqui — 霜
PLATE
アステカ神話
シトラリクエ
Citlālicue — 星の衣
PLATE
アステカ神話
ウィシュトシワトル
Huixtocihuatl — 塩
PLATE
アステカ神話
マリナルショチトル
Malīnalxōchitl — 妖術
PLATE
アステカ神話
コピル
Copil — 心臓
PLATE
アステカ神話
オメトチトリ
Ometochtli — プルケ
PLATE
アステカ神話
マクイルトチトリ
Macuiltochtli — 酩酊
PLATE
アステカ神話
アトラワ
Atlahua — 水
PLATE
アステカ神話
テマスカルテシ
Temazcalteci — 蒸し風呂
PLATE
アステカ神話
セー・アカトル・トピルツィン
Cē Ācatl Topiltzin Quetzalcōātl — トルテカ
PLATE
アステカ神話
ウェマク
Huemac — トルテカ
PLATE
アステカ神話
トロケ・ナワケ
Tloqueh Nāhuaqueh — 添え名
PLATE
アステカ神話
ショチトリクエ
Xōchitlicue — 豊穣
PLATE
アステカ神話
トラルチトナティウ
Tlālchitōnatiuh — 日没
PLATE
アステカ神話
コヨトリナワル
Coyotl Ināhual — 羽根細工
PLATE
アステカ神話
トラコツォントリ
Tlacotzontli — 道
PLATE
アステカ神話
チャルチウトラトナル
Chalchiuhtlatonal — 水
PLATE
アステカ神話
ポポカテペトル
Popōcatepētl — 火山