ミクテカシワトル
ミクテカシワトル · ミクトランシワトル · 死者の貴婦人
「死者の貴婦人」を意味するアステカの死の女神で、冥界ミクトランを統べるミクトランテクートリの配偶神。夫とともに死者の骨を守り、ケツァルコアトルがその骨から今の人類を造ったと伝えられる。
解説
概要
ミクテカシワトル(ミクトランシワトルとも、「死者の貴婦人」の意)は、アステカ神話の死の女神で、冥界ミクトランの最下層を統べるミクトランテクートリの配偶神である。夫とともに死者の国の主とされ、死者の骨を守る。
神話・物語
夫とともに、死者の骨を守る。ミクトランの最下層に、これまでに死んだすべての人の骨が集められているとされる。
ケツァルコアトルが前の時代の人類の骨を取りに冥界へ下ったとき、ミクトランテクートリとミクテカシワトルがこれを妨げた。骨を持ち帰ったケツァルコアトルは、これを挽いて自らの血を混ぜ、現在の人類を作った。
死者の骨から新しい人類が作られるという構成である。
アステカの太陽暦には、第9月トラショチマコと第10月ショコトル・ウェツィに、死者を祀る「小さな死者の祭」「大きな死者の祭」が置かれていた。ミクテカシワトルはこうした死者の祭と結びつけられ、現代メキシコの「死者の日」(ディア・デ・ムエルトス)の遠い起源の一つとみなされることがある。
ただしこの結びつきには注意が必要である。現在の死者の日は、11月1〜2日のカトリックの諸聖人の日と死者の日に営まれ、その形式の大半はスペイン由来である。アステカの祭は別の月に営まれ、直接の連続性は証明されていない。
先住民の祭の記憶と、カトリックの祭日が混じって現在の形になったと理解するのが妥当である。
図像と象徴
夫と同じく、骸骨の顔や剥き出しの骨をもつ姿で描かれ、髑髏や骨の装身具を着ける。顎を大きく開いて星を呑むとする説明が近年の概説書に見られるが、典拠ははっきりしない。本サイトの主画像は、『ボルジア絵文書』の図をもとにした現代の描き起こしである。
系譜と関係
夫はミクトランテクートリ。ミクトランを統べる。
文化的足跡
「死者の日」の象徴として用いられる骸骨の貴婦人「カトリーナ」は、20世紀初頭の版画家ホセ・グアダルーペ・ポサダの風刺画に始まり、のちに画家ディエゴ・リベラが壁画に描いて広めたもので、ミクテカシワトルとは直接の関係がない。両者はしばしば混同される。
なおメソアメリカの先住民の伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。