チャンティコ
チャンティコ · 家に住む女 · Chantico
「家に住む女」を意味する家庭の炉の火のアステカの女神。断食の日に焼いた魚と唐辛子を食べたため犬に変えられた。神殿の火を司るシウテクートリらに対し、家の内側の火を司る。石工と戦士の守護神でもあった。
解説
概要
チャンティコ(Chantico)は、アステカの宗教で家の炉の火をつかさどる女神である。名はナワトル語で「家に住む女」を意味すると解される。暦の名を「九の犬」(チコナウィ・イツクィントリ)といい、メキシコ盆地南部の湖畔の町ショチミルコで特に祀られた。
神話・物語
植民地時代初期の『テレリアーノ・レメンシス絵文書』と『リオス絵文書』の注記は、チャンティコについて次の話を伝える。断食の日に、チャンティコは焼いた魚に唐辛子を添えて食べ、断食を破った。そのため天の神トナカテクートリの怒りを受け、犬に変えられた。注記は、この女神の暦名「九の犬」をこの話と結びつけている。祭に先立つ断食を重んじたアステカの宗教観のなかで、神でさえ断食を破れば罰を免れないことを示す話である。
神殿や新しい火の儀礼の火をつかさどるシウテクートリやウェウェテオトルに対し、チャンティコは家の内側の火を受け持つ。サアグンの記録では、宝石や貴石を細工する職人たちが「九の犬」を守り神の一つとして祀っており、チャンティコは宝石細工師の守護神とも考えられた。
図像と象徴
赤い身色で描かれ、蛇の冠を戴き、金の耳飾りをつける。戦いを表す盾と武器を伴うこともあり、家の火の女神が戦士の性格もあわせもっていたことがうかがえる。
占いの暦トナルポワリの第18の13日間(トレセーナ)の守護神として、『ボルボニクス絵文書』などに描かれる。本サイトの主画像は、『ボルボニクス絵文書』の該当の頁(1899年刊行の複製による)に描かれたチャンティコである。
系譜と関係
火の神シウテクートリ、ウェウェテオトルと火を分け合い、トナカテクートリに罰せられた。家の炉の火を守る神という点で、ローマのウェスタや日本の荒神と職能が重なる。
文化的足跡
ショチミルコ(現在のメキシコシティ南部)は、スペイン人の到来以前からチャンティコの祭祀の中心であった。
なおメソアメリカの先住民の伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。