ウェウェテオトル
ウェウェテオトル · 老いた神 · Huehueteotl
メソアメリカの老いた火の神。前500年頃から千年以上にわたり、背を丸めて坐し頭に火鉢を載せた香炉の形で作られ続けた。火は最も古い神であるゆえ最も老いた姿で表される。五十二年ごとの新火の儀礼の対象。
解説
概要
ウェウェテオトル(Huehueteotl)は、メソアメリカで古くから祀られた老いた火の神である。名はナワトル語で「老いた神」を意味する。背を丸めて座り、頭に火鉢を載せた老人の香炉の形で表され、その型は前1千年紀からアステカの時代まで千年以上にわたって作り続けられた。アステカでは火の神シウテクトリと同一視されることが多いが、両者を区別する見方もある。
神話・物語
アステカの記録でウェウェテオトルの名が最もよく現れるのは、火の儀礼の文脈である。サアグンの記録は、火の神を「神々の母、神々の父、老いた神」と呼び、世界の中心、家の炉の中心に座す者として祈る言葉を伝える。
火の神に捧げられた最大の儀礼が、52年ごとの「年を結ぶ」祭、新しい火の儀礼である。暦の一巡りが終わる夜、すべての火が消され、人々は世界が終わらぬことを祈った。神官たちはテノチティトランの南東の山ウィシャチトラン(現在のセロ・デ・ラ・エストレージャ)の頂で、犠牲となる者の胸の上で火切り棒を回して新しい火を起こし、その火が各地の神殿と家々に分けられた。最後にこの儀礼が行われたのは、スペイン人の到来に先立つ1507年である。
図像と象徴
最も古い作例は、メキシコ盆地南部のクイクイルコ遺跡(前1千年紀後半)から出土した土製の香炉で、皺の刻まれた顔、歯の抜けた口、痩せた体の老人が、背を丸めて頭上に鉢を支える。テオティワカンでは同じ型が石で大きく作られ、頭上の火鉢の縁には菱形と縦の棒を組み合わせた文様が刻まれた。頭上の鉢で実際に火を焚く、香炉として使われる神像である。
本サイトの主画像は、こうした老いた神の頭部の像である。火は最も古い神であるという観念が、老いた姿に表されているとする解釈がある。
系譜と関係
アステカでは火の神シウテクトリと同一視されることが多く、若々しく華やかなシウテクトリと、老いて背を丸めたウェウェテオトルは、同じ火の神の異なる相とみる説もある。マヤ高地で「祖父」と呼ばれる老神マムとの結びつきを論じる研究もある。
文化的足跡
クイクイルコとテオティワカンから出たウェウェテオトルの香炉は、メキシコ国立人類学博物館の主要な展示品として知られる。
なおメソアメリカの先住民の伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。