ナワル
ナワル · ナグアル · ナワリ
自らのトナル(生まれた日によって定まる動物の対応者)に変身する力を持つ人間、およびその観念。神々もナワルを持ち、テスカトリポカのそれはジャガーと七面鳥である。スペイン人に弾圧されたが今日も生きている。
解説
概要
メソアメリカの民間信仰において、ナグアルあるいはナワル(いずれもナワトル語ナワリに由来)は、自らのトナル——動物の対応者——に変身する力を持つ人間である。
ナワリスモは、内なるトナルの動物とつながることによって力と霊的な洞察を得られるという信仰に結びついている。
なお本サイトの分類では、アステカを含むメソアメリカ全域の観念として扱う。
語源
ナグアルの語は、ナワトル語のナワリに由来する。先住民の宗教的な実践者を指す語であり、スペイン人はこれを「魔術師」と同定した。
「ナワリ」の語根は「隠す」「覆う」を意味するとされる。姿を隠す、あるいは別の姿をまとうという含意である。
トナルとナワル
トナルとは、人が生まれた日によって定まる動物の対応者である。トナルポワリ(二百六十日暦)の日符号が、その人の動物を決める。
すべての人がトナルを持つが、ナワルになれるのは特定の力を持つ者だけである。ナワルは自らのトナルに変身し、その姿で行動する。
神々もまたナワルを持つ。テスカトリポカのナワルはジャガーと七面鳥である。
征服後の展開
スペイン人はナワリスモを悪魔崇拝とみなし、弾圧した。異端審問の記録に、ナワルとされた者の裁判が残る。
一方、この信仰は今日まで残った。グアテマラとメキシコ南部の先住民社会において、ナワルの観念は生きている。マヤ諸語の話者のあいだでも、同様の観念が広く見られる。
村の有力者が夜にナワルとなって行動するという話は、今日も語られる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ボルジア絵文書の一葉である。
人と動物の対応という観念が、この存在を規定する。人は誰でも動物の分身を持ち、その動物の生死が人の生死に対応する。
北米先住民のスキンウォーカーと比較されることがあるが、両者は別の伝統に属する。
関わる伝承
トナルと対をなす概念。テスカトリポカのナワル。
文化的足跡
カルロス・カスタネダの著作を通じて、「ナワル」の語は西洋に広く知られた。ただしカスタネダの記述は民族誌としての信頼性を欠くとされ、その用法は先住民の観念とは大きく異なる。
なおメソアメリカ先住民の信仰は今日も継承されている生きた伝統であり、本項の記述はその学術的な整理である。