マクイルショチトル
五の花 · Macuilxōchitl · マクイルソチトル
「五の花」を意味するアステカの遊戯・賭博・歌舞の神。過度を戒める五柱アウィアテテオの筆頭で、宮殿の人々に祀られた。断食の戒めを破った者に病を下したとされ、花の神ショチピリと同一視される。
解説
概要
マクイルショチトル(Mācuīlxōchitl)は、アステカの宗教で遊戯と賭博、歌と踊りをつかさどる神である。名は占いの暦トナルポワリの日の名「五の花」で、ナワトル語のマクイリ(五)とショチトル(花)からなる。過度と放縦を戒める五柱の神々アウィアテテオの筆頭とされ、花と遊びの神ショチピリと同じ神ともみなされた。
神話・物語
サアグンの『フィレンツェ絵文書』第1巻第14章は、マクイルショチトルをショチピリの別名とし、宮殿に仕える人々が祀った神と記す。祭の前には四日間の断食が行われ、そのあいだ男女は交わりを慎んだ。この戒めを破った者は、神によって陰部などの病に罹らされたという。病を得た者は、この神に誓いを立てて断食し、癒しを願った。祭そのものは「花の祭」(ショチルウィトル)と呼ばれた。快楽を与える神が、その過度に病という罰を下すという性格は、アウィアテテオ全体に通じる。
サアグンの初期の記録『プリメロス・メモリアレス』は、マクイルショチトルを「五」の名をもつ神々マクイルトナレケの首座に置く。アウィアテテオは、日の名が「五」で始まり南の方角に配される五つの日、すなわち五の花、五の兎、五の蜥蜴、五の禿鷹、五の草の神々で、酒や賭け事、色事にふける者に病をもたらすと考えられた。『ボルジア絵文書』や『ヴァティカヌスB絵文書』では、この神々はテスカトリポカに似た装いをとり、西に配される女の霊シワテテオと対をなす。
遊戯の神としては、とりわけ盤上の賭け遊びパトリと結びつく。16世紀のドミニコ会士ディエゴ・ドゥランは、パトリに興じる者が豆の賽を投げる際に、マクイルショチトルの名を大声で呼んだと記している。
図像と象徴
アウィアテテオに共通する目印として、口のまわりに五本の指を広げた手の形を描く。数の五を手で表したものと解されている。
本サイトの主画像は、16世紀の『マリアベッキアーノ絵文書』の一場面(1903年刊行の複製による)である。十字形の盤を囲んでパトリに興じる四人の男を、腰掛けに座ったマクイルショチトルが見守り、頭上には五つの円で「五」の数が示されている。同じ絵文書の説明は、神も遊戯に加わっているものと考えられていたことを伝える。
石の彫像も残り、メトロポリタン美術館には、頭頂に飾りを立てた小さな石像がマクイルショチトルとして収蔵されている。
系譜と関係
ショチピリと同一視され、その別名とも、遊戯の面を受け持つ別の神ともされる。花と愛の女神ショチケツァルが女性の側の対にあたるとされる。子どもの病を癒す神イシュトリルトンは兄弟とされる。同じアウィアテテオの一柱に、酩酊にかかわるマクイルトチトリ(五の兎)がいる。
なおメソアメリカの先住民の伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。