トロケ・ナワケ
トロケ・ナワケ · トロケナワケ · イパルネモアニ
「近きと隣りの主」を意味するテスカトリポカの添え名で、遍在を表す。神を名指さずその働きによって指す形式。レオン=ポルティーヤはこれをアステカ哲学の証拠としたが、キリスト教の神概念に近づけた解釈との批判がある。
解説
概要
アステカ神話において、トロケナワケ、トロケ・ナワケ(あるいはトロケ・ナオアケ。「近きと隣りの主」)は、テスカトリポカの添え名の一つであった。
ミゲル・レオン=ポルティーヤは、トロケ・ナワケがアステカの仮説上の二元の創造神オメテオトルの添え名としても用いられたと論じる。
名の意味
「トロケ」は「近くにあるものの持ち主」、「ナワケ」は「隣にあるものの持ち主」を意味する。
合わせて「あらゆるものの近くにある者」——遍在を表す。
イパルネモアニ。 同じ神格に用いられる別の添え名「イパルネモアニ」は、「それによって我らが生きる者」を意味する。
これらの添え名は、神を名指さずにその働きによって表す。名を呼ぶことを避け、性質によって指すという形式である。
哲学的な解釈
レオン=ポルティーヤ『ナワトルの哲学』(1956年)は、これらの添え名をアステカの哲学的な思考の証拠とした。
具体的な神々の背後に、遍在する唯一の原理があるとする理解である。
批判。 ただしこの解釈には批判がある。添え名を集めて一つの抽象的な神格を構成することは、アステカの資料そのものが行っていない。
キリスト教の神概念に近づけて解釈しているのではないか、という指摘である。オメテオトルをめぐる議論と同じ問題である。
本項は、トロケ・ナワケを「テスカトリポカの添え名」として扱い、独立した神格とはみなさない立場をとる。
詩における用法
ネサワルコヨトル(テスココの王にして詩人、1402〜1472年)の作とされる詩に、この添え名が現れる。
「トロケ・ナワケよ、我らは汝の夢のなかにあるのみ」——存在の不確かさを歌う一節として知られる。
ただしこれらの詩の成立と作者についても、征服後の編集の可能性が議論されている。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。添え名であり、独立した図像を持たない。
関わる神格・伝承
テスカトリポカの添え名。オメテオトルと結びつけられることがある。
文化的足跡
ネサワルコヨトルの詩は、メキシコの100ペソ紙幣にその肖像とともに引かれた。