イツトラコリウキ
イツトラコリウキ · 曲がった黒曜石の刃 · Itztlacoliuhqui
アステカの霜の神で、生命を失った物質を表す。もと明けの明星の神トラウィスカルパンテクートリだったが、動かぬ太陽に矢を射て射返され、目を布で覆われて霜の神になった。目を覆う姿は無情と公平の双方を表す。
解説
概要
アステカ神話において、イツトラコリウキは霜の神である。また、生命を失った状態の物質を表す。
ナワトル語の名イツトラコリウキは、通常「曲がった黒曜石の刃」と英訳される。J・リチャード・アンドリューズは、これは誤訳であり、正しくは「すべてが寒さによって曲げられた」あるいは「植物を殺す霜」と解すべきだと論じる。
起源
伝承によれば、イツトラコリウキはもとトラウィスカルパンテクートリ——明けの明星の神——であった。
第五の太陽が創られたとき、太陽トナティウは動くことを拒み、神々の血を求めた。トラウィスカルパンテクートリはこれに怒り、太陽に矢を射た。
しかし矢は届かず、太陽が射返した矢がその頭を貫いた。以後、彼は目を布で覆われ、霜と寒さと石の神イツトラコリウキとなった。
光の神が霜の神になる。 明けの明星は夜明け前の最も寒い時刻に輝く。星と霜の結びつきが、この変身の背後にある。
職能
罪と罰。 イツトラコリウキは、罪と罰、そして無情の神でもある。目を覆われていることから、盲目の正義——見ずに裁く——と結びつけられた。
姦通を犯した者の裁きにおいて、この神の名が呼ばれた。
曲がった黒曜石の刃。 その頭には、曲がった黒曜石の刃の意匠がある。名の由来である。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ボルジア絵文書のイツトラコリウキである。
目を覆われた姿が、この神を規定する。見えないことが、無情と公平の双方を表す。
西洋の正義の女神が目隠しをするのと同じ図像的な発想であるが、両者に系譜関係はない。
関わる神格・伝承
トラウィスカルパンテクートリの変じた姿。トナティウに射られた。
暦において、第十二のトレセナ「一のクエツパリン(蜥蜴)」を支配する。
文化的足跡
日本語圏でこの名が挙げられることは少ない。アステカの第五の太陽の創造を論じる文脈で言及される。