パイナル
パイナル · パイナルトン · Painal
ウィツィロポチトリの代理としてサアグンが記録した神。その像を担いで都を走り巡る儀礼が営まれた。ただし独立した神格か、一つの相か、そもそも地名が人と混同されたものかは確定しておらず、征服後の資料の限界を示す例。
解説
概要
アステカの宗教において、パイナル(パイナル、パイナルトンとも綴る。「小さなパイナル」)は、スペインの植民者によってウィツィロポチトリの代理として仕える神(テオトル)と解釈されることがあった。
他の研究者は、パイナラが地名であり、人と混同された可能性を指摘している。
サアグンの記述
ベルナルディーノ・デ・サアグンの『ヌエバ・エスパーニャ全史』——通称『フィレンツェ絵文書』——は、パイナルをウィツィロポチトリの「代理」「副官」と記す。
パナケツァリストリの祭において、パイナルの像を担いで都を走り巡る儀礼が営まれた。祭司が像を持って速く走り、その後を人々が追う。
名は「急ぐ」を意味するパヤナに由来し、「速い者」を意味するとされる。
解釈の問題
パイナルが独立した神格であったのか、ウィツィロポチトリの一つの相であったのか、あるいはそもそも神ではなく地名であったのかは、確定していない。
スペインの記録者が先住民の情報提供者から聞き取った内容を、ヨーロッパの神の観念に当てはめて記述した結果、実態と異なる理解が生じた可能性がある。
記録の性格。 アステカの神々の多くは、征服後にスペイン人が編纂した資料からしか知られない。サアグンは先住民の情報提供者から丹念に聞き取ったが、その枠組みはヨーロッパのものである。
パイナルは、この資料の性格が生む困難を典型的に示す例である。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、『フィレンツェ絵文書』のパイナルである。
関わる神格・伝承
ウィツィロポチトリの代理とされる。パナケツァリストリの祭に関わる。
文化的足跡
日本語圏でこの名が挙げられることはまずない。アステカ宗教の資料論において、記録の限界を示す例として言及される。