トナカテクートリ
トナカテクートリ · オメテクートリ · 二の主
アステカの創造と豊穣の神で、名は「我らの糧の主」を意味する。天の最高層オメヨカンに住み、人の運命と生まれた日の運勢を定める。オメテクートリと等置され、配偶者はトナカシワトル。日常の祭祀の対象ではない。
解説
概要
トナカテクートリ(Tonacatecuhtli)は、アステカ神話で天の最上層に住む創造の神である。名はナワトル語で「我らの糧の主」と解され、食物と生命を与える者を表す。植民地時代の記録の多くは、この神を「二の主」オメテクートリと同じものとし、配偶の女神トナカシワトル(オメシワトル)とともに、世界と神々の始まりに置く。
神話・物語
16世紀の『絵によるメシカ人の歴史』によれば、トナカテクートリとトナカシワトルは十三層ある天の最上層に住み、四柱の子をもうけた。赤いテスカトリポカ(カマシュトリ)、黒いテスカトリポカ、ケツァルコアトル、ウィツィロポチトリである。この四柱がのちに火や暦、人間、天地を造り、世界の創造を担う。トナカテクートリ自身は直接の働き手ではなく、創造する神々の親として頂点に置かれている。
天の最上層はオメヨカン(「二の場所」)とも呼ばれ、人の子が生まれるとき、その魂はここから下されると考えられた。断食を破って焼いた魚を食べた女神チャンティコを犬に変えたのも、この神であると伝えられる。
図像と象徴
冠を戴き、豪華な衣をまとった老いた主として描かれる。占いの暦トナルポワリでは、最初の日「一のワニ」に始まる第一の13日間(トレセーナ)の守護神とされ、『ボルボニクス絵文書』や『ボルジア絵文書』に描かれる。本サイトの主画像は、『ボルジア絵文書』の図をもとにした現代の描き起こしである。
系譜と関係
配偶神はトナカシワトル。オメテクートリと同一視され、男女一対の創造神オメテオトルの男性の側にあたる。子は二柱のテスカトリポカ、ケツァルコアトル、ウィツィロポチトリ。
日々の祭祀の対象として目立つ神ではなく、神々の系譜の頂点に置かれた存在である。
なおメソアメリカの先住民の伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。