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ETRUSCAN

エトルリア神話

イタリア半島中部(エトルリア=現トスカーナ・ラツィオ北部・ウンブリア西部) · 前8世紀(ヴィッラノーヴァ文化以降)〜前1世紀(ローマへの同化)

エトルリア神話は、前8世紀から前1世紀にかけてイタリア半島中部で栄えたエトルリア人の神々と伝承の総体である。ギリシアローマという二つの体系に挟まれた位置にあり、双方から受け取り、双方へ渡した。ただしその実像を語ることは難しい。エトルリア人は、自らの神話を語る文献をひとつも残していない。

LECTIO — 解説

地域は現在のトスカーナ、ラツィオ北部、ウンブリア西部を中心に、北はポー川流域、南はカンパーニアまで及んだ。時代は先行するヴィッラノーヴァ文化を経て前7世紀に都市国家が成立し、前4世紀以降ローマに併呑され、前1世紀には言語そのものが失われる。

原典資料の事情が、この体系の性格を決めている。エトルリア語で書かれた宗教書は一冊も伝わらない。碑文は一万点を超えるが、その大半は墓碑と奉献銘で、短い定型句にすぎない。したがって神話の内容は三つの経路から復元される。第一に墓室壁画・骨壺・石棺・銅鏡の図像、第二に神名を四十区画に並べたピアチェンツァの肝臓のような祭祀の器物、第三にローマの著述家——とりわけ注釈家セルウィウス——が「エトルリア人はこう呼ぶ」と書き留めた断片である。図像は名を伴わないことが多く、文献はローマ側の解釈を経ている。エトルリアの神について書かれたことの多くは、この二重の隔たりを承知したうえで読む必要がある。

神々の構造には、ギリシアからの借用と土着の層が重なっている。天空の主神ティニアはゼウスと重ねられ、ウニがヘーラー、メンルヴァがアテーナーに対応する。この三柱がローマへ渡ってカピトーリーヌスの三神になった。名の借用は前6世紀以降に加速し、アプル(アポローン)、アルトゥメ(アルテミス)、フフルンス(ディオニューソス)、そして冥界のアイタ(ハーデース)とその妃ペルシプナイ(ペルセポネー)が、ギリシアの名をエトルリア語の音に写した形で現れる。

一方、ギリシアに対応を持たない神々もいる。冥界には槌を振るうカルン、松明と鍵を携えて死者を導くウァント、蛇の髪を持つトゥクルカ、門を見張るクルスがいて、いずれもエトルリア固有の存在である。伝令のトゥルムス、愛のトゥラン、軍神ララン、境界のセルヴァンスも、名の上ではギリシア語からの借用ではない。ローマの資料がマントゥスの名で伝える古い冥界神、ピュルギの聖域に祀られたカタ、火と地下をあわせ持つシュリ(ローマ名ソーラーヌス)も、ギリシアの枠には収まらない。主神よりも従者のほうがはるかに多く描かれるという点で、エトルリア美術の冥界はギリシアと際立って異なる。

この宗教の中心は、物語ではなく占いにあった。犠牲獣の肝臓から神意を読むハルスペクスの技術、落雷の解釈、天空と土地を区画する作法は、ローマ人が「エトルリアの学(ディスキプリーナ・エトルスカ)」と呼んで丸ごと取り入れたものである。ローマ国家は共和政から帝政まで、エトルリア出身の占い師を公の職として抱え続けた。神々の名が忘れられたのちも、技術のほうは千年近く生き延びた。

美術における足跡は大きい。銅鏡の裏面に線刻された神々の場面は、失われた物語を推し量るほとんど唯一の手がかりであり、墓室壁画の宴と旅立ちの図は、古代地中海の死後観を伝える資料として繰り返し参照されてきた。もっとも、タルクィニアの「オルクスの墓」という名が近代の誤認に由来するように、これらはいまもローマの神名で呼ばれ続けている。ギリシアから名を借り、ローマへ名を貸したまま、エトルリアの神々は自分の言葉を失った。

この体系の神格・幻獣

41柱を収載(知名度順)
PLATE ソーラーヌス ローマ神話 ソーラーヌス Soranus — 死神・冥界神 PLATE エトルリア神話 マントゥス manθ — 死神・冥界神 PLATE カルン エトルリア神話 カルン charun — 死神・冥界神 PLATE フェーローニア ローマ神話 フェーローニア Feronia — 豊穣神 PLATE ウァント エトルリア神話 ウァント vanθ — 死神・冥界神 PLATE トゥクルカ エトルリア神話 トゥクルカ tuχulχa — 死神・冥界神 PLATE アイタ エトルリア神話 アイタ aita — 死神・冥界神 PLATE エトルリア神話 カタ catha — 光 PLATE ティニア エトルリア神話 ティニア tinia — 創造神・主神 PLATE ウニ エトルリア神話 ウニ uni — 豊穣神 PLATE メンルヴァ エトルリア神話 メンルヴァ menrva — 雷神 PLATE フフルンス エトルリア神話 フフルンス fufluns — 豊穣神 PLATE ウシル エトルリア神話 ウシル usil — 太陽神 PLATE アプル エトルリア神話 アプル apulu — 太陽神 PLATE ペルシプナイ エトルリア神話 ペルシプナイ phersipnai — 死神・冥界神 PLATE エトルリア神話 カル calu — 死神・冥界神 PLATE テサン エトルリア神話 テサン thesan — 暁 PLATE トゥラン エトルリア神話 トゥラン turan — 愛と美の神 PLATE トゥルムス エトルリア神話 トゥルムス turmś — 富と幸運の神 PLATE ララン エトルリア神話 ララン laran — 軍神 PLATE セムラ エトルリア神話 セムラ semla — 母神 PLATE アルトゥメ エトルリア神話 アルトゥメ aritimi — 狩猟神 PLATE エトルリア神話 クルス culsu — 死神・冥界神 PLATE エトルリア神話 ティウル tiur — 月神 PLATE セルヴァンス エトルリア神話 セルヴァンス selvans — 守護神・境界の神 PLATE ウェーヨウィス ローマ神話 ウェーヨウィス Veiovis — 医薬・治癒の神 PLATE クルサンス エトルリア神話 クルサンス culśanś — 守護神・境界の神 PLATE マリス エトルリア神話 マリス mariś — 幼児 PLATE ケル エトルリア神話 ケル cel — 豊穣神 PLATE エトルリア神話 レイント leinth — 冥界 PLATE カストゥルとプルトゥケ エトルリア神話 カストゥルとプルトゥケ Kastur / Pultuce PLATE エトルリア神話 セスランス Sethlans — 鍛冶 PLATE ネスンス エトルリア神話 ネスンス Nethuns — 水 PLATE ウォルトゥムナ エトルリア神話 ウォルトゥムナ Voltumna — エトルリア同盟 PLATE エトルリア神話 タルナ Thalna — 出産 PLATE CREATURE エトルリア神話 ラサ Lasa — 翼 PLATE エトルリア神話 ノルティア Nurtia — 運命 PLATE エトルリア神話 ロスナ Losna — 月 PLATE タゲス エトルリア神話 タゲス Tages — 腸卜 PLATE エトルリア神話 ウェゴイア Vecu — 測量 PLATE ヘルクレ エトルリア神話 ヘルクレ Hercle — ヘーラクレース