クルサンス
クルシャンシュ · クルサンシュ · culśanś
エトルリアの門の神。二つの顔を持つ若者として表され、都市の門の傍らに奉献された。ローマのヤーヌスに対応する。
解説
概要
クルサンス(エトルリア語 culśanś)は、エトルリア神話で門を守る神である。四点の碑文と、貨幣・小像・石棺といった図像資料から知られる。二つの顔を持つ男神として表されるのが通例で、少なくとも二体の小像は都市の門のすぐ近くから出土した。二対の目で門を見張る神、という理解へ導く出土状況である。
名は「門」を意味する culs(属格単数 culsl)に、イタリック語の接尾辞 -ano が付いた形と分析される。ローマのヤーヌスの名がラテン語の ianua(扉)に由来するのと同じ作りである。冥界の門を見張る女神クルスも、同じ語根を共有する。
神話・物語
物語は伝わらない。この神について語れるのは、出土の状況と、そこから読める職掌である。
図像はおおむね北エトルリアに限られ、時代はヘレニズム期の前3世紀から前2世紀に集中する。関係する遺物の多くがコルトーナから出ており、この都市でとりわけ重んじられていたことがうかがえる。ただしウォルテッラの貨幣に姿が刻まれ、フィレンツオーラ出土の奉献銘にも名が現れることから、崇拝がコルトーナに限られていたわけではない。
図像と象徴
コルトーナの二連門の一帯から出た前3世紀から前2世紀の青銅小像が、この神の姿を最もよく伝える。裸身でコントラポストの姿勢を取り、片手を腰に当てる。身につけているのは素朴な長靴と、二つの頭にまたがって被さる平たい帽子、そして首に巻いたトルク(環状の首飾り)だけである。もう一方の手は何かを握っていたと見られ、ローマのヤーヌスが持つ素朴な杖と見る説と、門番にふさわしい鍵と見る説がある。
この像は銘によって同定が確実である。左の腿を伝って刻まれた文句は「アルントの娘ウェリア・クインティが、クルサンスに、喜んで(これを)与えた」と読まれる。同じ奉献者による同型の像——セルヴァンスに捧げられたもの——と一緒に、コルトーナの北門の近くに埋められていた。イングリット・クラウスコップフは、両像がともに長靴とトルクを身につけていることから、これらがどちらかの神に固有の装いではないと指摘している。
指の形にも注意が向けられてきた。大プリニウスは、ヤーヌス像の指が一年の三百六十五日を示す形に組まれていたと記す。コルトーナの二体の指の位置がこれと同じ意図を持つなら、クルサンスもヤーヌスと同じく時間と年の巡りに関わっていたことになる。ただし推測の域を出ない。
系譜と関係
系譜は伝わらない。クルスとは名の上で対をなし、こちらが都市の門を、あちらが冥界の門を受け持つ。セルヴァンスとは、コルトーナで同じ奉献者から同時に捧げられた関係にある。境界・門・境目を守る神格が一群をなしていたことになる。
ヤーヌスとの対応は古くから認められてきた。ただし、クルサンスとセルヴァンスが髭のない若者として表されるのに対し、ローマのヤーヌスとシルウァーヌスは髭をたくわえた年長の男として描かれる。名と職掌が近くとも、姿の型は別である。
文化的足跡
ローマのヤーヌスは暦の最初の月に名を与え、扉と始まりの神として国家祭祀のなかに位置を得た。クルサンスの名は残らなかった。もっとも、二つの顔で内と外を同時に見るという発想そのものは、境界を扱う神格の造形としてイタリア半島に根づいたものであり、その古い層をコルトーナの小像が示している。