ヘルクレ
ヘルクレ · ヘラクレ · Hercle
エトルリアのヘーラクレースで、ティニアとウニの子。青銅鏡には、ギリシア神話にない独自の冒険が多数描かれる。成人したヘルクレが女神ウニの乳を飲む場面は、神格化の儀礼を表す。ギリシアで敵である女神が、ここでは彼を神にする。
解説
概要
エトルリアの宗教において、ヘルクレ(ヘラクレ、ヘルクルとも)はティニアとウニの子であり、ギリシアのヘーラクレースの一形態であった。筋骨たくましい姿で、しばしば棍棒を持ち獅子の皮をまとって描かれる。
エトルリア美術における人気の主題であり、とりわけ青銅鏡において、ギリシアのヘーラクレースの神話にも、ローマとのちの古典期のヘルクレースの神話にも知られない冒険に従事する姿が描かれる。
エトルリア固有の物語
ヘルクレは、ギリシアから受け入れられた神でありながら、エトルリアで独自の物語を得た。ヴォルテッラで見つかった青銅鏡には、成人したヘルクレが、ギリシアのヘーラーにあたる女神ウニの乳を飲む場面が刻まれ、そこには「これはヘルクレがウニの子となり、乳を飲むことを示す」という銘が添えられている。女神の乳を飲むことが、養子とする儀礼であり、神となる儀礼として描かれているのである。ギリシアではヘーラーはヘーラクレースの敵であるが、エトルリアでは、その乳によってヘルクレが神とされる。同じ関係が、正反対に描かれているのである。このほかにも、ギリシア神話にはない冒険の場面が数多く描かれているが、エトルリア語の文献が残っていないため、その内容は分からない。
ケルウェとの争い
ヘルクレとケルウェ(あるいはケルカ)の争いを描いた鏡がある。
ギリシアのヘーラクレースとケルベロスの対応とみられるが、詳細は不明である。
ローマへの伝播
ヘーラクレースへの信仰は、ギリシアから直接ではなく、エトルリアを経てローマに入ったとする説がある。ローマの牛の広場(フォルム・ボアリウム)にあったヘルクレースの大祭壇(アラ・マクシマ)は、ローマで最も古い祭祀の場の一つであり、ヘルクレースはそこで商人と交易の守り神として祀られた。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、エスプラケ、プルマテ、メンルヴァ、ヘルクレを描いた青銅鏡の線刻図である(メトロポリタン美術館蔵)。
関わる神格・伝承
ティニアとウニの子。ヘーラクレースに相当。
文化的足跡
エトルリアの青銅鏡におけるヘルクレの場面は、ギリシア神話がどのように受容され変形されたかを示す資料として重視される。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。