ララン
ラルン · laran
エトルリアの軍神。兜と胸当てをつけた裸の若者として表され、平和を保つ務めも負った。名は文法上の性を持たない。
解説
概要
ララン(エトルリア語 laran、ラルンとも)は、エトルリア神話の軍神である。ローマのマールス、ギリシアのアレースにあたる。多くのエトルリアの神名と同じく、この名は文法上の性を示さない。
戦の神でありながら、その務めには平和を保つことが含まれていたとされる。冥界に関わる神とも見られており、単純な戦闘の神ではない。
神話・物語
固有の物語は伝わらない。この神について分かることは、碑文と銅鏡の図像から来ている。
カプアの瓦板文書タブラ・カプアーナによって、ラランの祭が五月のイードゥース(十五日)に行われたことが知られる。同じ文書には、ラルンという綴りの異形も現れる。祭司が神のために食事を調える習慣があったことを示す碑文も見つかっており、崇拝の実際が確かめられる数少ないエトルリアの神の一柱である。
かつては、マリスという謎めいた存在をエトルリアの軍神と見る説が有力だった。ローマの軍神マールスと名が似ていたためである。この説は今日では否定され、軍神はラランと同定されている。名の近さから神の同一を導く推論の危うさを示す例である。
ルルスという別の神と組で現れることも多い。両者の名は古拙期から結びつけられている。
図像と象徴
兜と胸当てをつけ、槍か盾を手にした裸の若者として表される。八柱の他の神とともに、雷を投げる力を持つ神の一人にも数えられた。フィレンツェの国立考古学博物館が蔵する青銅小像は、この神の奉献像である。
銅鏡の図では、オルヴィエート近郊セッテカミーニ出土の一面に、トゥルムスと長髪の若々しいティニアとともに現れる。槍を持ち、太陽のような文様を刻んだ盾に手を置く姿である。別の鏡ではレイント、トゥラン、メンルヴァ、二人のマリスの幼児とともに描かれ、メンルヴァの背後に槍と外套を持って立つ。ポプローニア出土でフィレンツェにある鏡では、大地の女神ケルの子である巨人ケルスクランと戦っている。
系譜と関係
系譜は伝わらない。図像によってはトゥランの配偶とされ、これはアレースとアプロディーテーの組に対応する。
境界の守り手という一面も指摘されている。ベットーナで見つかった境界石には tular Larna、tular larns と刻まれ、これを根拠にセルヴァンスやティニアと同じく境界を保証する神と見る研究者がいる。軍神が境界を守るという組み合わせは、境界をめぐる争いが戦の主要な原因であったことを思えば自然でもある。
文化的足跡
ローマのマールスは、農耕と若者の結社に関わる古い性格を保ちながら、軍神として国家の中心に据えられた。エトルリアのラランからの直接の継承を示す証拠はない。両者の対応は機能の一致によるもので、名の系統は別である。むしろこの神が残したのは、兜と胸当てだけをつけた裸の若い戦士という図像であり、イタリア各地の聖所から出た無数の青銅小像がその型を伝えている。