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テサン
PLATE — THESAN
ETRUSCAN · エトルリア神話
THESAN

テサン

テサン(thesan) · テザン

Sailko CC BY 3.0

エトルリアの暁の女神。ピュルギに神殿を持ち、太陽神ウシルとともに供物を受けた。名は「暁」とともに「占い」をも意味する。

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解説

概要

テサン(エトルリア語 thesan)は、エトルリア神話の暁の女神である。カエレの港市ピュルギに神殿があり、そこからは「夜明けの軒瓦」と呼ばれる独特の一群が出土した。亜麻布の書によれば、太陽神ウシルとともに供物を受けている。

名の意味は二重である。ひとつは端的に「暁」で、thesi(照らすこと)、thesviti(明るい、名高い)と同根とされる。もうひとつは「占い」であり、thesanthei(占う、照らす、輝く)という語がそれを示す。夜明けが暗かったものを明るみに出すように、占いは見えなかった先を見せる。同じ語がこの二つを指したことは、エトルリア人がこの二つを同じ働きと捉えていたことを示すのかもしれない。

神話・物語

固有の物語は伝わらない。エトルリアの銅鏡に描かれる場面は、ギリシアのエーオース譚をほぼそのまま移したものである。

その中心は、若い男を掠う女神という主題である。アプロディーテーがエーオースをアレースの床に見つけて呪い、絶えぬ恋情に苦しめたという筋がギリシアにあり、以来エーオースは数多くの若い恋人で知られた。エトルリア人はこの話を好んだらしく、前530年から前450年ごろの銅鏡には、若者を抱えて飛び去るテサンが繰り返し刻まれている。

出産の女神という一面も指摘される。日の初めに立ち会う神が、命の初めにも立ち会うという理屈で、ローマのユーノー・ルーキーナが新生児を光のなかへ導く役を担ったことと重ねられる。ただしこれは機能からの推論であり、祭儀の記録がそれを裏づけているわけではない。

図像と象徴

翼を備えた姿で描かれるのが通例で、裸身の例もある。四頭立ての車を駆る図もあり、この点はアウローラやエーオースの図像と共通する。フィレンツェの国立考古学博物館が蔵するペルージャ出土の前3世紀の銅鏡は、テサンの名を刻んだ作例である。

ピュルギの神殿から出た「夜明けの軒瓦」は、この女神に捧げられた建築装飾と解されている。港に面した神殿の屋根を、暁の像が飾っていたことになる。

系譜と関係

系譜は伝わらない。ウシルとは対で図像に現れ、同じ車に乗る例もある。

対応神をめぐっては二つの線がある。ローマのアウローラ、ギリシアのエーオースという暁の女神への対応が一つ。もう一つは、ギリシアの海の女神レウコテアー、そしてラテンのマートゥータへの同化である。マートゥータもまた暁と出産の両面を持ち、レウコテアーと同一視された女神であった。暁・出産・海の三つを結ぶ観念が、この一群に共有されていたらしい。

文化的足跡

テサンの名は残らなかった。ピュルギの神殿址と、鏡に刻まれた若者を掠う女神の図だけが伝わっている。暁の女神が若い男を奪うという主題は、ギリシアからエトルリア、ローマへと受け渡されたのち、ラテン詩のティートーノス譚を通じてヨーロッパの詩に流れ込んだ。

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領分・別名

INTERPRETATIO — 同一視・同源
エーオース ギリシア神話 同一視
エトルリア人は暁の女神テサンをギリシアのエーオースと同定し、若者を掠う物語や四頭立ての車の図像をそのまま銅鏡に移した。
アウローラ ローマ神話 同一視
暁を司る神という機能の一致による。ただしテサンはピュルギに神殿と祭祀を持つ一方、ローマのアウローラは祭祀を持たない詩の女神であり、性格は対等でない。
マートゥータ ローマ神話 同一視
暁と出産の両面を持つ点、およびギリシアの海の女神レウコテアーとの同化を介した対応。図像の類似を根拠とする同定で、暁系(エーオース/アウローラ)とは別の線をなす。
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資料

Wikidata
Q1969214 — 骨格データの出典
Commons
Thesan — 図像カテゴリ