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ウァント
PLATE — VANΘ
ETRUSCAN · エトルリア神話
VANΘ

ウァント

ヴァンス · ヴァント · vanθ

Sailko CC BY 3.0

エトルリアの冥界の女神。松明と鍵と巻物を携えて死者を導く。ギリシアに直接の対応を持たない、エトルリア固有の存在である。

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解説

概要

ウァント(エトルリア語 vanθ)は、エトルリア神話で冥界に属する女神である。有翼の若い女の姿で、松明・鍵・巻物といった持物を携え、死者を冥界へ送り届ける。ギリシア神話に直接の対応を持たず、その意味でエトルリア固有の神格と言える。図像に現れるのは前400年ごろからで、カルンとほぼ同じ時期にあたる。

神話・物語

物語は伝わらない。分かるのは、墓室壁画・骨壺・石棺に描かれた場面の型である。

現れる場面は大きく二つに分かれる。ひとつは殺戮の場である。トロイア戦争にまつわる図像——アキレウスがトロイアの捕虜を屠る場面など——に立ち会い、キウージ出土の骨壺では地面から湧き出るように現れる。もうひとつは死者を迎え、導く場面で、徒歩の者、馬に乗る者、車に乗る者を先導する。サルテアーノ出土の雪花石膏の骨壺には、馬上の死者を冥界へ導くウァントが彫られている。

その振る舞いは総じて穏やかである。オデュッセウスをポリュペーモスの投げる岩からかばう場面すら描かれた。槌を持つカルンの脅すような姿とは対照的で、罰する者ではなく送り届ける者として一貫している。

図像と象徴

若く生気のある女として描かれる。胸に交差する帯を掛け、丈の短いキトーンをまとい、毛皮の長靴を履く。この装いを狩人のものと見る指摘もある。翼を備えることが多い。

持物にはそれぞれ働きがある。松明は冥界への道を照らすものと解されるが、身分や職掌を示す標識と見る説もある。鍵は冥界の門を開く。巻物については、実際にその内部へ vanθ という名が書き込まれた例があり、死者の定めが記されているとする読みから、この女神を運命の神格と見る解釈も出されている。

有翼の姿から、かつてはギリシアの復讐女神エリーニュスと結びつける論が多かった。だがエリーニュスが罰する者であるのに対し、ウァントの図像は一貫して善意の導き手を示しており、この対応づけは今日では支持されていない。姿かたちの一致から機能を推し量ることの危うさを示す例である。

系譜と関係

親も配偶も伝わらない。しばしばカルンと組をなし、また複数のウァントが並んで描かれることもある。この点はカルンと同じで、個体の名というより一群の存在を指す呼び名であった可能性がある。エトルリアの冥界にはほかにトゥクルカクルスカル、そして主神アイタが知られる。

文化的足跡

名は近代の天文学に残った。太陽系外縁天体オルクスの衛星は、この女神にちなんでウァントと名づけられている。冥界の主に付き従う者という関係が、そのまま天体の命名に写された形である。エトルリアの冥界の住人のうち、名が現代に生き延びた数少ない例にあたる。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q1235270 — 骨格データの出典
Commons
Vanth — 図像カテゴリ