アルトゥメ
アリティミ · アルタメス · アルトゥメス
エトルリアの獣と狩猟の女神。新石器時代にさかのぼる性格を持つとされ、アレッツォの町の名の由来ともされた。
解説
概要
アルトゥメ(エトルリア語 artume、アリティミ、アルタメスとも綴られる)は、エトルリア神話の女神である。獣を統べる者、人の集まりを司る神、そして狩猟の神とされ、その性格は新石器時代にさかのぼるとも言われる。ギリシアのアルテミス、ローマのディアーナに対応する。
ただし対応の順序には注意がいる。エトルリア人はのちにギリシアのアルテミスを取り込んだが、それ以前から獣を統べる女神を持っていたと考えられている。名の一致だけで移入と断ずることはできない。
神話・物語
固有の物語は伝わらない。系譜としてはティニアとレトゥン(ギリシアのレートー)の娘とされ、兄弟にトゥルムスとアプルがいる。アプルの側の資料は彼を双子の兄と伝えるが、この関係を明示する資料は多くない。
エトルリアの町アリティエ——今日のイタリア、アレッツォ——の名は、この女神に由来するとされる。神の名が町の名になるという例は、フフルンスとポプローニア、マントゥスとマントヴァにも見られ、エトルリアの都市の来歴を語る型の一つであった。
図像と象徴
名を伴う確実な図像は乏しい。ベルリン旧博物館が蔵する前4世紀のテラコッタは、チェルヴェーテリ(カエレ)から出たアルトゥメスへの奉献物で、女神の名を刻んでいる。カエレのウィニャッキア神殿からも、この女神への奉献の場面を表したテラコッタが出土した。
姿については、ギリシアのアルテミス像の型——短い衣、弓、獣を伴う——が用いられたと考えられるが、名を刻んだ作例が少ないため、どこまでが土着の造形かを切り分けることは難しい。獣を統べる女神という主題自体は地中海世界に広く見られるもので、その古層をエトルリアがどう受け継いだかは、なお論じられている。
系譜と関係
父はティニア、母はレトゥン。兄弟にトゥルムスとアプル。月を司る神としての性格は、エトルリアではティウルが担っており、ギリシアのアルテミスやローマのディアーナが月と結びついたのとは事情が異なる。狩猟と獣という領分だけを取り出せば、この女神の輪郭はギリシア側とよく重なる。
文化的足跡
アレッツォの名を通じて、この女神の名は今日のイタリアの地図に残っている。アレッツォはまた、ティニアへの奉献銘を刻んだ青銅のキマイラが出土した町でもある。エトルリア美術を代表する作の出土地が、獣の女神の名を負う町であったことになる。