セルヴァンス
セルウァンス · セルヴァンス・トゥラリアス
エトルリアの森と境界の神。熊の毛皮の帽子をかぶった裸の若者として表され、ローマのシルウァーヌスと同源とされる。
解説
概要
セルヴァンス(エトルリア語 selvans)は、エトルリア神話で森と境界を司る神である。聖なる境界を含む境を守り、境界の神としてはトゥラリアスという添え名で呼ばれた。像への奉献銘がそれを伝える。ローマの森の神シルウァーヌスと同源の可能性が高い。
ピアチェンツァの肝臓の外縁に並ぶ十六柱のうち十番目に名が置かれている。奉献碑の数から見ても、エトルリアで広く祀られた神であった。
神話・物語
物語は伝わらない。この神を語るのは、境界という機能である。
エトルリアの都市国家は、土地の境をきわめて厳格に扱った。境界石(キップス)を据え、そこに保証人として神の名を刻む。ティニアの名がチュニジアの境界石に現れるのも、ラランの名がベットーナの境界石に見えるのも同じ慣習である。セルヴァンスの場合は、その添え名トゥラリアスがそのまま「境界の」を意味した。
耕地の外の森と、耕地の境とを同じ神が司ることには理屈がある。境界の向こうは人の手の入らない領域であり、森はその典型であった。境を守る神は、同時にその外側を統べる神でもある。
図像と象徴
確実に同定できる作例は一点しか見つかっていない。コルトーナの二連門の一帯から出た前300年から前250年ごろの青銅小像で、門の神クルサンスの像と一緒に出土した。熊の毛皮で作った帽子をかぶり、丈の高い長靴を履いた裸の若者として表されている。
ローマのシルウァーヌスが髭をたくわえた年長の男として描かれるのに対し、セルヴァンスは若い。同源とされる二柱が、姿の上ではまったく別の型を取っていることになる。名の系統が近いことと、図像が似ていることは別の問題である。
熊の毛皮という属性は、境界の外の獣性を身にまとうという含みで読まれてきた。ただしこれも一点の像からの解釈であり、他の作例による裏づけを欠く。
系譜と関係
系譜は伝わらない。コルトーナで一緒に出土したクルサンスは、二つの顔を持つ門の神で、ローマのヤーヌスに対応する。門と境界を守る神が対で奉献されていたことになり、冥界の門を守るクルスもこの語群に連なる。
ローマ側では、シルウァーヌスが森と農地の境を守る神として広く祀られた。碑文の数はローマの神々のなかでも多い部類に入る。エトルリアからの継承を直接示す証拠はないが、両者が同じ観念圏に属することは疑いにくい。
文化的足跡
境界を神が保証するという発想は、ローマのテルミヌス崇拝に受け継がれた。境界石そのものを神として祀り、動かした者を呪う——この慣習はイタリア半島に広く行き渡っており、その古い層にエトルリアの実務があった。土地の測量と区画は、ハルスペクスの技術とともに「エトルリアの学」としてローマへ渡ったものである。