ネスンス
ネスンス · Nethuns
エトルリアの井戸の神で、のち海を含むすべての水を司った。名はケルトのネフタン、ヴェーダのアパム・ナパートと同源とされる。内陸の民の水の神が、ギリシアの影響で海の神になった。ピアチェンツァの肝臓に名が刻まれる。
解説
概要
エトルリア神話において、ネスンスは井戸の神であり、のちに海を含むすべての水へと領域を広げた。
「ネスンス」の名は、ケルトの神ネフタン、およびペルシアとヴェーダの同じ名を持つ神アパム・ナパートと同源である可能性が高い。おそらくすべて印欧祖語の *népōts(「甥、孫」)に基づく。
この説が正しければ、エトルリア語はウンブリア語の *ネフトゥンス(ローマのネプトゥーヌス。もとは——)を借用したことになる。
井戸から海へ
井戸の神。 本来は湧き水と井戸の神であった。
海へ。 ギリシアのポセイドーンとの同一視を経て、海の神となった。
同じ経緯は、ローマのネプトゥーヌスにも見られる。もと淡水の神であったものが、ギリシアの影響で海の神になった。
内陸の民の水の神。 エトルリアとローマは、いずれも内陸から始まった。海の神が後から加わるという展開は、この地理に対応する。
印欧語族の水の神
*népōts(甥、孫)という語根が、なぜ水の神の名になったのか。
「水の子」。 アパム・ナパートは「水の子」を意味し、水中の火——雷、あるいは水面の輝き——を表すとされる。
ネフタン。 アイルランドのネフタンは、知恵の泉の主である。
共通の観念。 水の底にある火、あるいは光という観念が、印欧語族に共有されていた可能性が指摘される。
ただしエトルリア語は印欧語族ではない。借用によってこの名が入ったことになる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ウシル・ネスンス・テサンを描いた青銅鏡である。
ピアチェンツァの肝臓。 青銅製の羊の肝臓の模型(前2世紀)は、腸卜(ハルスピキー)の教材である。十六の区画に神名が刻まれ、ネスンスの名も含まれる。
エトルリアの神々の配置を知る最も重要な資料である。
関わる神格・伝承
ポセイドーン、ネプトゥーヌスに相当。ネフタン、アパム・ナパートと同源。
文化的足跡
ピアチェンツァの肝臓は、エトルリア宗教研究の中心的な遺物である。天空を十六に分け、それぞれに神を配するという体系を示す。