ノルティア
ノルティア · ヌルティア · ノルキア
時・運命・宿命・偶然を司るエトルリアの女神。ウォルシニイの神殿では毎年釘を打って年数を数える儀礼が行われ、これがローマにも伝わった。糸を紡ぐギリシアの運命と異なり、エトルリアの運命は釘で打たれて動かない。
解説
概要
ノルティアは、古代イタリアのエトルリアの女神ヌルティアのラテン語での名で、時と運命、偶然を司った。エトルリアの都市ウォルシニイ(今日のボルセーナ)の神殿では、毎年壁に一本の釘を打つ儀礼が行われ、その数が過ぎた年を数えた。打たれた釘が動かないように、定められた運命も動かないとされた。エトルリアの神でありながら、エトルリアの資料はほとんど残っておらず、ローマの記録によってのみ知られる。
なお本サイトの分類では、エトルリアの体系に含めて扱う。
乏しい証拠
ノルティアについて、エトルリア自身の証拠はほとんど、あるいはまったく残っていない。エトルリアの神々の名を刻んだ青銅の肝臓の模型にも、その名は含まれていない。ラテン語の文学や碑文に数回現れるだけであり、エトルリアの神でありながら、ローマの側の記録によってのみ知られているのである。
年を数える釘
ノルティアの神殿は、ウォルシニイにあった。そこでは毎年、神殿の壁に釘を打つ儀礼が行われ、釘の数が過ぎた年の数を示した。文字で記す年代記の代わりをしていたのである。ローマのユーピテル・オプティムス・マクシムス神殿にも同じ釘打ちの儀礼があり、ローマの記録者たちは、これがエトルリアに由来すると記している。疫病がはやったときには、特別に任命された独裁官が釘を打った。時を刻むことが、災いを止めると考えられたのである。
釘と運命
釘を打つことは、運命を定めることのたとえでもあった。打たれた釘は動かず、定められた運命も動かない。ローマの詩人ホラーティウスは、必然の女神ネケッシタースが釘を手にする姿を歌っており、この図像はノルティアの釘に由来するとする説がある。ギリシアの運命の女神たちモイライが糸を紡ぐのに対し、エトルリアの運命は釘で打ちつけられる。用いる道具が違えば、運命の思い描き方も違ってくるのである。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
関わる神格・伝承
ローマの運命の女神フォルトゥーナにあたるとされ、ウォルトゥムナと同じくウォルシニイの神である。
文化的足跡
「ノルティア」の名を、ウンブリア州の町ノルチャの名の由来とする説もあるが、確かな証拠はない。