トゥラン
トゥラン・アティ · turan
エトルリアの愛と豊穣の女神。ウェルチの守護神で、白鳥と鳩を伴い、若い恋人アトゥニスと並んで銅鏡に描かれた。
解説
概要
トゥラン(エトルリア語 turan)は、エトルリア神話の愛と豊穣と生命力の女神であり、都市ウェルチ(ウルチ)の守護神である。ローマのウェヌス、ギリシアのアプロディーテーと同一視された。ウニ、メンルヴァと並ぶ、エトルリアで最も重要な三柱の女神の一人である。
名は「トゥランノス」(絶対の支配者、英語 tyrant の語源)と同じ前ギリシア語の語根に連なるとされ、「女主人」「愛する者」ほどの意味に解される。愛の女神の名が支配の語と同根であることは、この神格の性格を考えるうえで興味を引く。
神話・物語
物語はギリシアから来ている。若い恋人アトゥニス(ギリシアのアドーニス)との場面、そしてエルクスントレの審判——ギリシアのパリスの審判——が銅鏡の定番であった。前4世紀後半の一面では、岩に腰かけたエルクスントレの前に三女神が現れ、彼はトゥランを最も美しい者として選ぶ。
一方、エトルリア固有の位置づけを示す資料もある。タルクィニアの港市グラウィスカの聖域からは、彼女の名を刻んだ奉献品が出土した。そのうちの一つは「トゥラン・アティ」——「母トゥラン」——と記す。ローマのウェヌス・ゲネトリクス、すなわちアエネーアースの母として族の祖となるウェヌスの観念と重ねて論じられてきた銘である。
ピアチェンツァの肝臓にも、マルティアヌス・カペッラの神名表にも、トゥランの名は現れない。古い神である可能性は高いが、天界の区画を扱う体系のなかには位置を持たなかったらしい。
図像と象徴
若く美しい有翼の女として描かれる。巻毛と凝った結髪、そして神性を示す宝冠や装身具を伴う。銅鏡の化粧の場面によく現れ、初期と後期には豊かな衣と宝飾をまとうが、ヘレニズム美術の影響を受けた前3世紀から前2世紀には裸身または半裸で表されるようになる。
鳥がその標識である。鳩、鵞鳥、そして何よりも白鳥——「トゥランの白鳥」トゥスナ——が伴う。従者はラサと呼ばれる小さな有翼の女神たちで、墓を守る存在ともされた。エトルリア暦の七月はこの女神の名にちなむが、伝わっているのはラテン語形のトラネウスだけである。ペルージャ近郊出土の前340年から前320年ごろの銅鏡は、アトゥニスに口づけするトゥランを刻む。
系譜と関係
子はトゥルヌ、愛と欲望の神で、ギリシアのエロース、ローマのクピードーにあたる。恋人はアトゥニス。図像によっては軍神ラランの配偶とされ、これはアレースとアプロディーテーの組に対応する。
墓室の壁にもこの女神が描かれた。生と死のどちらの場面にも愛と豊穣が置かれていたことになる。
文化的足跡
ウェヌスを介して、この女神の性格はローマの愛の女神に流れ込んだ。もっとも、ローマのウェヌスにはユリウス氏族の祖という政治的な役割が加わり、エトルリアの「母トゥラン」とは別の重みを持つようになる。銅鏡の裏面に愛の女神を刻むという発想——鏡を使う者と、鏡に映る美しさとを結びつける趣向——は、エトルリア工芸のもっとも洗練された部分として評価されている。