カルン
カル · カルー · charu
エトルリアの冥界の鬼神。槌を手に死者を冥界へ導き、ギリシアのカローンから名を借りながら、その務めは大きく異なる。
解説
概要
カルン(エトルリア語 charun/charu)は、エトルリア神話で冥界に属する神である。名はギリシアの渡し守カローンから借りたものだが、務めは同じではない。舟で川を渡す者ではなく、槌を手に持ち、死者を冥界の入口まで送り届け、あるいは門を守る。有翼で、尖った耳と鉤鼻を持ち、肌は死の色に濁って描かれる。エトルリアの冥界の主はアイタ(ギリシアのハーデースを受けた名)であって、カルンはその配下にあたる。
神話・物語
まとまった物語は伝わらない。エトルリアの伝承は文献としてほとんど残らず、この神について分かることは、墓室の壁画と骨壺と壺絵に描かれた場面から読み取られたものである。
そこでの役割は一貫している。ラリッサ・ボンファンテとジュディス・スワドリングの言い方を借りれば、カルンとウァントが担うのは死者を罰することではなく、行くべき場所へ送り届けることであった。ただし例外もある。ラリス・プレナスの石棺と、オルベテッロ出土の赤絵の壺には、槌を振り上げて男に迫るカルンが表されている。
槌の用途をめぐっては解釈が割れる。ナンシー・デ・グラモンドは、オルヴィエートの壺で死者に襲いかかる蛇に対して槌が振るわれている点を挙げ、これを死者を守る道具と見る。多くの場面では、槌はただ手に握られるか、柄を地に着けて寄りかかる形で置かれるにすぎない。後代のローマの闘技場で、倒れた剣闘士に槌を打ち当ててとどめを確かめる役が「ディスパテル」と呼ばれたことは、この図像の記憶が続いていた可能性を示す。
カルンは一柱とは限らない。タルクィニアの「カルンたちの墓」の壁画には四体が並び、それぞれにカルン・クンクレス、カルン・フツ、カルン・ルフェといった別名が添えられている。デ・グラモンドは、カルンとは個体の名ではなく、一群の存在を指す呼び名だったのではないかと述べている。
図像と象徴
恐ろしい姿は、意図されたものと考えられている。尖った耳、猪のような牙、突き出た眉、蛇を巻いた腕、そして青みを帯びた肌——腐敗の色である。同じ頃のギリシアで、杯に大きな目を描き、メドゥーサの顔を怪物として表したのと同じ、邪を退ける働きが想定されていた。墓を悪しきものから守るために、恐ろしいものを描くという発想である。
パリの古銭陳列室が蔵する前4世紀末のエトルリア赤絵クラテールは、アキレウスがトロイアの捕虜を屠る場面の脇に、槌を構えたカルンを立たせる。ウルチのフランソワ墓の壁画でも、同じ場面に有翼のウァントとカルンが立ち会う。ギリシアの物語のなかへ、エトルリア固有の死の担い手が入り込んでいる。
系譜と関係
同僚として、有翼の女神ウァントがしばしば並ぶ。「オルクスの墓」第二室には、ゴルゴンのような髪と翼を持つトゥクルカが名を添えて描かれ、テーセウスが冥界で盤上遊戯に興じる場面に付き添う。近代の研究者は、カルンをマントゥスとマニアに仕える者と位置づけてきた。後代の語彙集は、槌を持つこの神をオルクスと同一視している。カエサルの遺言で議席を得た元老院議員が「オルキーニー」とも「カローン輩」とも呼ばれたことは、両者の重なりを裏づける。
ギリシアのカローンとの関係は、名の借用にとどまる。渡し守という核心的な機能をカルンは持たない。エトルリア美術に舟の場面は「青い悪魔の墓」の一例しか知られておらず、櫂を持つ鬼神はいても、それを漕ぐためではなく武器として振るう。
文化的足跡
影響は、むしろギリシア・ローマの側へ向かった。ウェルギリウス『アエネーイス』第6巻のカローンは、汚れた老人として恐ろしげに描かれる。W・F・ジャクソン・ナイトはこれを「半ばはエトルリアのカルン」と評した。ダンテ『神曲』地獄篇のカロンテは、櫂で怠ける者を打ち据える。槌を櫂に持ち替えた姿だという見方もある。渡し守が乱暴者になるという後世の像には、エトルリアの鬼神の記憶が混じっている。