テオニム THEONYM · 世界神話アーカイブ 神格を検索
SOL

太陽神

太陽神は、日輪そのもの、あるいは太陽を運行させる存在として崇拝される神格である。昼と夜、季節、農耕の実りを支配し、しばしば光による秩序・正義・王権の象徴ともなる。太陽を神とする信仰は世界の多くの体系に独立して現れるが、その造形は文化ごとに大きく異なる。

LECTIO — 解説

エジプトでは太陽神ラーが天空を舟で渡り、夜ごと冥界を旅して朝に再生する昼夜の循環そのものを体現した。ギリシアでは日輪を運ぶヘリオスが四頭立ての馬車で天を駆け、のちに光明神アポロンが太陽の性格を帯びていく。インドのスーリヤもまた、七頭の馬に牽かれた車で天を巡る。中国では、十個の太陽を生んだ羲和(ぎわ)の神話や、太陽に棲む三足烏(金烏)の伝承が知られる。日本の天照大神はこれらと異なり女性の太陽神であり、天上の高天原を統べる皇祖神として王権の由来に直結する点に特色がある。東スラヴのダジボーグは、太陽神が民そのものの祖とされた例である。『イーゴリ軍記』はルーシの人々を「ダジボーグの孫」と呼ぶ。太陽が王家ではなく民族の血統を根拠づけている点で、天照大神とは近くて遠い。マヤのキニチ・アハウでは、神と王の境が溶けている。名に含まれる k'inich(太陽に面する)は古典期の王の称号でもあり、王は繰り返しこの神になぞらえられた。語るべき物語はほとんど残らず、代わりにピラミッドの階段を固める巨大な漆喰仮面という、建築と一体の姿でその顔を伝える。同じメソアメリカでも、アステカのトナティウは太陽が供犠に依存するという観念を最も先鋭に示す。この太陽は自然に昇るのではなく、神々が身を焼いて生み、人の心臓を得てはじめて動く。太陽神が支える側ではなく支えられる側に置かれている点で、ここに挙げたいずれとも異なる。ローマのソール・インウィクトゥスは位相が違う。語るべき物語をほとんど持たないまま、皇帝アウレリアヌスによって国家祭祀の中心に据えられ、貨幣の銘文と皇帝の光線冠を通じて帝国全体に行き渡った。神話ではなく統治が立てた太陽神である。

図像の上では、太陽神は光輪・日輪を伴い、馬車や舟で天を移動する姿にしばしば表される。ラーは鷹の頭に日輪を戴き、ヘリオスやスーリヤは輝く車駕とともに描かれる。一方、天照大神は偶像化の伝統が薄く、その姿は主に岩戸隠れの物語を通して視覚化される。マヤの太陽神に乗り物はなく、四角く大きな目とやすりがけした前歯という顔の約束事が、その正体を告げる標識となる。太陽を運ぶ乗り物というモチーフの有無が、体系ごとの世界観の違いをよく映している。

ただし、太陽を司るという機能の一致は、これらの神々が同じ起源をもつことを意味しない。男性か女性か、日輪そのものか運行者か、自然神か王権神かといった差異こそが読みどころであり、機能の類似だけを根拠に「どの太陽神も本質は同じ」と括るのは、比較神話学が最も戒めるところである。

この役割の神格

39柱を収載(知名度順)
PLATE アポローン ギリシア神話 アポローン Ἀπόλλων — 太陽神 PLATE ラー エジプト神話 ラー rꜥ — 創造神・主神 PLATE アメン エジプト神話 アメン jmn — 創造神・主神 PLATE アテン エジプト神話 アテン jtn — 創造神・主神 PLATE ヘーリオス ギリシア神話 ヘーリオス Ἥλιος — 太陽神 PLATE 天照大神 日本神話 天照大神 天照大神 — 天空神 PLATE スーリヤ ヒンドゥー神話 スーリヤ सूर्य — 太陽神 PLATE セクメト エジプト神話 セクメト sḫmt — 太陽神 PLATE ケプリ エジプト神話 ケプリ ḫprj — 創造神・主神 PLATE ミスラ ペルシア神話 ミスラ میترا — 太陽神 PLATE ソール・インウィクトゥス ローマ神話 ソール・インウィクトゥス Sol Invictus — 太陽神 PLATE シャマシュ メソポタミア神話 シャマシュ 𒀭𒌓 — 太陽神 PLATE ネフェルトゥム エジプト神話 ネフェルトゥム Nfr-tm — 太陽神 PLATE ウィツィロポチトリ アステカ神話 ウィツィロポチトリ Huītzilōpōchtli — 太陽神 PLATE ビラコチャ インカ神話 ビラコチャ Wiraqucha — 創造神・主神 PLATE ソール 北欧神話 ソール Sól — 太陽神 PLATE ベンヌ エジプト神話 ベンヌ bnw — 太陽神 PLATE インティ インカ神話 インティ Inti — 太陽神 PLATE ヤリーロ スラヴ神話 ヤリーロ Ярило — 太陽神 PLATE エオストレ 北欧神話 エオストレ Ēostre — 太陽神 PLATE トナティウ アステカ神話 トナティウ Tōnatiuh — 太陽神 PLATE ケルト神話 アイネ Áine — 太陽神 PLATE キニチ・アハウ マヤ神話 キニチ・アハウ K'inich Ajaw — 太陽神 PLATE ダジボーグ スラヴ神話 ダジボーグ Дажьбог — 太陽神 PLATE アトゥム エジプト神話 アトゥム jtm(w) — 創造神・主神 PLATE モンチュ エジプト神話 モンチュ mntw — 太陽神 PLATE ムネウィス エジプト神話 ムネウィス mr-wr — 太陽神 PLATE ウシル エトルリア神話 ウシル usil — 太陽神 PLATE アプル エトルリア神話 アプル apulu — 太陽神 PLATE ナナワツィン アステカ神話 ナナワツィン Nanāhuātzin — 太陽神 PLATE ヒンドゥー神話 アルナ अरुण — 太陽神 PLATE ホルス(スラヴ神話) スラヴ神話 ホルス(スラヴ神話) Хорс — 太陽神 PLATE ペルシア神話 フワル・フシャエータ 𐬵𐬎𐬎𐬀𐬭 𐬑𐬱𐬀𐬉𐬙𐬀 — 太陽神 PLATE マンドゥリス エジプト神話 マンドゥリス Μανδουλις — 太陽神 PLATE クーシュマーンダー ヒンドゥー神話 クーシュマーンダー कुष्माण्डा — 創造神・主神 PLATE ヒンドゥー神話 ウシャス उषस् — 太陽神 PLATE ヒンドゥー神話 プーシャン पूषन् — 太陽神 PLATE フェニキア・カナン神話 シャプシュ špš — 太陽神 PLATE メンヒト エジプト神話 メンヒト Menhit — 太陽神