シャマシュ
ウトゥ · シャマシュ神 · Utu
メソポタミアの太陽神で、シュメール語ではウトゥ。日々天を渡って地上のすべてを見ることから、正義と裁き、旅人の守護を司った。イナンナの双子の兄にあたる。
解説
概要
シャマシュ(アッカド語 šamaš、シュメール語ではウトゥ Utu)は、メソポタミアの太陽神である。名はアッカド語で太陽そのものを指す語と同根で、アラビア語シャムス、ヘブライ語シェメシュと連なる。
日々天を渡って地上のすべてを見るという性格から、正義と法、そして旅人の守護を司った。裁く神であることから冥界の裁判に関わるとする記述もあり、嵐の神アダドと組んで占卜の神ともされた。主要な祭祀地はシッパルとラルサで、両市の神殿はともにエ・バッバル(輝く家)と呼ばれた。
神話・物語
シャマシュを主人公とする神話は知られていない。この神はつねに他者を助ける側に現れる。
『ギルガメシュ叙事詩』では、杉の森へ向かうギルガメシュに十三の風を与え、森の番人フンババを討たせる。ドゥムジの死をめぐる詩では、ガルラの悪霊に追われるタンムーズを、姿を変えさせて逃がそうとする。『イナンナの天上獲得』では、エアンナ神殿を欲する妹イナンナに助言を与える。『穀物がシュメールに来た次第』でも助言者として呼ばれる。他の神の物語のなかで、決定的な局面に手を貸す——それがこの神の位置である。
裁く神としての性格は、神話よりも法と契約の文書に色濃い。ハンムラビ法典の碑の頭部には、玉座のシャマシュから王が棒と環を受け取る場面が彫られ、碑文は法が太陽神の意にかなうものであることを述べる。誓約と裁判はこの神の名において行われ、境界を侵す者への呪詛にもその名が呼ばれた。
図像と象徴
定型は明快である。肩から光条を放ち、鋸歯状の刃をもつ鋸を手にする。この鋸は東の山を切り開いて昇るための道具とも、裁きの具とも解される。足下や背後には二重扉が描かれ、日の出の門を表す。有角冠をいただき、玉座に坐る姿が多い。
主画像に掲げたのは大英博物館蔵「シャマシュ書板」(前9世紀、シッパル出土)である。新バビロニアの王ナブー・アプラ・イッディナが失われた神像を再興した経緯を刻んだ石板で、天蓋の下の玉座に坐る神の前に、台に載った巨大な日輪が置かれている。四条の光を放つ円のなかに星形を配したこの日輪こそがシャマシュの標章であり、境界石(クドゥル)や円筒印章では、シンの三日月、イシュタルの八芒星と並んで最上段に刻まれた。日輪を綱で支える二体の小さな神像が添えられるのも、この図像の特徴である。
系譜と関係
月神シン(ナンナ)とニンガルの子で、イナンナ(イシュタル)とは双子とされる。シュメール文学における兄妹の距離は近く、妹の求めに繰り返し応じる姿が描かれる。
妻は暁の女神アヤ(シェリダ)で、太陽が沈む山で日ごとに再会するという伝えが複数の文書に見える。子には真理の擬人化キットゥム、夢の神マム、火と光の神イシュムがある。ウトゥの名は外来の太陽神を書き表す記号としても使われ、フルリの太陽神シミゲとの対応がとくによく知られる。
文化的足跡
ハンムラビ法典碑(ルーヴル美術館蔵)の浮彫は、この神の図像のうち最も広く知られたものである。法を授ける太陽神という構図は、正義と光を結びつける発想の古い先例としてしばしば引かれてきた。ただし碑文はハンムラビ自身が法を定めたと述べており、シャマシュが法を口述したとは書いていない。図像と本文のあいだにあるこの差も、繰り返し論じられてきた点である。
日輪と光条という標章そのものは、アケメネス朝の有翼日輪などを介して長く受け継がれた。現代の創作では、メソポタミアを舞台とする作品にしばしば裁定者として現れる。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。