ウシャス
ウシャー · ウシャース · Ushas
ヴェーダの暁の女神。『リグ・ヴェーダ』で四十の讃歌を捧げられた最も讃えられる女神である。印欧祖語 *h₂éwsōs に遡り、エーオース・アウローラ・エオストレと同根。
解説
概要
ウシャス(ヴェーダ・サンスクリット उषस्)は、ヴェーダの暁の女神である。
『リグ・ヴェーダ』の讃歌に繰り返し現れる。デイヴィッド・キンズリーによれば、この女神は「一貫して暁と同一視され、日ごとに世界へ光が訪れることによって自らを顕し、圧する闇を追い払い、邪悪な魔物を退け、あらゆる命を起こし、万物を動かし、すべての者をその務めへ送り出す」。生きとし生けるものの生命であり、行為と呼吸を駆り立てる者であり、混沌と混乱の敵であり、リタ(宇宙的・道徳的秩序)を吉兆とともに呼び覚ます者である。
『リグ・ヴェーダ』において最も讃えられた女神である。ただしアグニ、ソーマ、インドラという三柱の男性神ほど中心的ではない。
神話・物語
『リグ・ヴェーダ』の四十の讃歌がこの女神に捧げられ、ほかの讃歌にも名が現れる。闇を追い払うことを感謝され、また祈願される(7.78、6.64、10.172)。スーリヤに促されて光をもたらす者(3.61)、邪悪な魔物を追う者(8.47)として現れる。讃歌1.48は、百の車に牽かれ、日ごとの光の到来によって顕れ、あらゆる動きに命を、あらゆる命に動きを与える者として描く。
姿は美しく装った若い女で、黄金の車、あるいは百の車に乗り、黄金の赤い馬あるいは牛に牽かれて天を渡る。太陽神スーリヤのために道を開くとされ、スーリヤはその夫とも子とも呼ばれる。姉妹は夜の女神ニシャー、あるいはラートリーである。
ヴェーダに捧げられた讃歌のうちいくつかは、最も美しいものと評される。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。ヴェーダ期の神格の多くと同じく、この女神には後代のヒンドゥー教のような造像の伝統がない。像を作って拝む対象ではなく、讃歌において呼びかけられる相手である。
象徴の中心は、繰り返しである。暁は毎日訪れ、そのたびに世界を新たにする。同時に、暁が重なるたびに人の寿命は削られていく。『リグ・ヴェーダ』の讃歌には、この二重性を歌うものがある。若く輝きながら、見る者を老いさせる者——永遠に若い女神と、有限な人間の対比が、暁という現象を通して語られる。
関わる神格・伝承
印欧語族の比較神話学において、この女神は要の位置を占める。
ヴェーダ語のウシャス(uṣás)はウシャ(uṣá、「暁」)に由来する。この語は印欧イラン祖語 *Hušā́s(アヴェスター語ではウシャー)から、さらに印欧祖語 *h₂éwsōs(「暁」)に遡り、ギリシア語のエーオース、リトアニア語のアウシュラと同根である。マロリーとアダムズによれば、印欧語圏における「東」を意味する語の基にもなっている。
印欧祖語の女神 *h₂ausos- に対応する神格は各言語圏に見られる。ギリシアのエーオース、ローマのアウローラ、リトアニアのアウシュリネー、そして英語のエオストレ——この名がおそらく現代英語のイースター(Easter)の語根である。
同じ語根から複数の言語圏に女神が生じているという点で、この一群は印欧比較神話学における最も確実な対応の一つに数えられる。アシュヴィン双神とディオスクーロイの対応と並ぶ例である。
文化的足跡
日本語圏では、ヴェーダの神々といえばインドラやアグニが挙げられ、この女神まで紹介されることは少ない。
しかし『リグ・ヴェーダ』において四十の讃歌が捧げられているという事実は軽くない。後代のヒンドゥー教で女神信仰が大きく展開するのに対し、ヴェーダ期に最も讃えられた女神が暁であったこと——そしてその名がヨーロッパの言語の「東」やイースターにまで連なること——は、インドとヨーロッパの神話を同じ図の上に置くための手がかりになっている。