ダジボーグ
ダジボグ · ダジュボグ
スラヴ神話の太陽神。天の鍛冶神スヴァローグの子とされ、日輪を運ぶ光の神であると同時に、恵みと富を分け与える神でもあった。名は「与える神」を意味し、ウラジーミルのキエフの神々にも数えられた。
解説
概要
スラヴ神話の太陽神。天の鍛冶神スヴァローグの子とされ、日輪を運ぶ光の神であると同時に、人々に恵みと富を分け与える神でもあった。その名は「与える神」を意味すると解され、施しと幸運の授け手として崇められた。キエフ・ルーシの主要な神々の一柱に数えられ、太陽神としてスラヴ人の暮らしの中心にあった。
神話・物語
ダジボーグの名は、980年に大公ウラジーミルがキエフに立てた神々の一群のなかに、ペルーンらと並んで記されている。その性格を最もよく伝えるのは、スヴァローグを扱ったのと同じ、マララス年代記のスラヴ語訳の注記である。そこでは、ギリシアの太陽神ヘーリオスがダジボーグに置き換えられ、鍛冶神スヴァローグ(=ヘーパイストス)の子として「太陽の王」と呼ばれている。中世の叙事詩『イーゴリ遠征物語』は、ルーシの民を「ダジボーグの孫」と呼んでおり、この神が民の祖として仰がれたことをうかがわせる。ただし、これらの断片をどう組み合わせて一つの神話とするかについては、なお解釈の幅がある。
図像と象徴
確かな古代の神像は伝わらず、近代以降のスラヴ美術では、光を背負い、あるいは日輪を掲げた荘厳な神として描かれてきた。太陽そのものと、それがもたらす恵み——光、暖かさ、実り、富——が、この神の領分を象徴する。「与える」というその名は、太陽が惜しみなく光を注ぐさまと、神が人々に幸を分かつさまとを、一つに重ね合わせている。
系譜と関係
ダジボーグは鍛冶神スヴァローグの子であり、火の神スヴァロジチとは兄弟とされる。研究者は、天の火のスヴァローグ、雷の火のペルーン、太陽の火のダジボーグ、竈の火のスヴァロジチというように、スラヴの火の神々を天から地への層としてとらえてきた。年代記が太陽神ヘーリオスをダジボーグに重ねたのは、ギリシアの神を借りてスラヴの神を語る習合の一例である。
文化的足跡
太陽と恵みの神ダジボーグは、断片的な史料しかもたないにもかかわらず、スラヴ人の自己意識に深く関わる神として記憶されてきた。「ダジボーグの孫」という古い呼び名は、後世のスラヴ諸民族が自らの神話的な起源を語るときにしばしば引かれ、近代以降は文学や現代の土着信仰のなかにも、光と豊かさを授ける神として姿を見せている。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。