フワル・フシャエータ
フワルフシャエータ · フワルシェード · ホルシード
ゾロアスター教の太陽神。名は「輝ける太陽」を意味し、天から一切を見下ろす「アフラ・マズダーの眼」と呼ばれる。その光は世界を浄めるとされた。
解説
概要
フワル・フシャエータ(アヴェスター語 hvarə-xšaēta)は、ゾロアスター教のヤザタで、太陽を司る。フワル(太陽)にフシャエータ(輝ける)という定型の添え名がついた複合語である。中期ペルシア語ではフワルシェード、新ペルシア語ではホルシードと縮まった。イマ・フシャエータがジャムシードになったのと同じ音変化である。
フワルはサンスクリットのスワル(svar-)と同源で、インドの太陽神スーリヤの名と語根を共有する。インド・イラン共通期に遡る古い神格とみられている。
神話・物語
短い七節のヤシュト第6がこの神格に捧げられ、太陽への連禱も伝わる。そこで語られるのは、天空から地上のすべてを見下ろす眼としての太陽である。「アフラ・マズダーの眼」という呼び名はこれによる。
その光は一切を浄める。もし太陽が昇らなければ、魔は世界を蹂躙し、善なる神々もそれに抗しえない——讃歌はそう説く。太陽を毎日昇らせることが、そのまま世界を保つ行為として理解されている。中世には、太陽への一日三度の礼拝が信徒の日課とされるほどの信仰を得た。
図像と象徴
この神格を確実に表した図像は伝わらない。本サイトが主画像を掲げないのはこのためである。サーサーン朝の王の一部が放射状の冠を戴く例はあるが、あれは王の冠の意匠であって太陽神の像ではない。
太陽を神として崇めながら像を作らなかったことは、この体系の性格をよく示している。目に見えるものがそのまま神である以上、別に像を刻む必要がなかったともいえる。
系譜と関係
暦では各月の第11日を司る。もっとも、伝統のなかで太陽神の座はやがてミスラへ移っていく。これは後代の習合によるもので、アッカドのシャマシュとの混同が関わったとみられている。ただし経典の段階では、太陽の領分はあくまでこの神格のものであり、契約の神ミスラとは明確に別である。両者を混ぜて語らないことが、この二柱を読むうえでの要点になる。
文化的足跡
スラヴの太陽神ホルスをこの名に結びつける説が長く行われてきた。前一千年紀にペルシアの軍がスラヴ系の人々に太陽崇拝を伝えたとする筋書きだが、語形の対応そのものに批判があり、定説には至っていない。新ペルシア語のホルシードは今日も「太陽」を意味し、人名としても用いられている。