クーシュマーンダー
クシュマーンダー · クーシュマンダ · Kushmanda
ナヴァドゥルガーの第四。微笑みによって宇宙を生んだとされ、太陽の内に住まう。アムリタの壺と血の壺を同時に持つ、九柱で唯一の形態である。
解説
概要
クーシュマーンダー(サンスクリット कुष्माण्डा、「小さな熱い卵」)は、ヒンドゥー教の大女神マハーデーヴィーの一形態で、宇宙の創造者として崇められる。太陽の力を解き放って被造世界に及ぼしたことで知られる。ナヴァドゥルガーの第四であり、ナヴァラートリの四日目に祀られる。
神話・物語
伝えられるところでは、宇宙がまだ闇に包まれていたとき、この女神が微笑むことで宇宙が生じた。その微笑みから生まれた光の球が太陽になったという。
太陽の内に住まうとされる点が、この形態の核心である。スーリヤの輝きと運行を司り、その力を世界に配分する。名の「熱い卵」は、宇宙卵(ブラフマーンダ)の観念と結びつけられる。創造を、卵から光が現れる出来事として語る発想である。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、2010年のコルカタ・カーリーガート、サンガシュリーのドゥルガー・プージャに祀られた像である。
図像は八臂から十臂で、三叉戟、円盤、剣、鉤、棍棒、弓、矢、そして不死の霊薬アムリタを容れた壺と、血を容れた壺を持つ。一つの手はアバヤ・ムドラー(畏れを除く印)を結び、信者を祝福する。乗物は虎である。
アムリタと血という二つの壺を同時に持つという点に注意がいる。生かす力と奪う力が、同じ神格の両手に配されている。ナヴァドゥルガーの九柱のうち、この対を持つのはこの一柱だけである。
関わる神格・伝承
パールヴァティーの一形態。前後にあたるのはチャンドラガンターとスカンダマーターである。
太陽の内に住まうという設定から、スーリヤおよびヴェーダの太陽神群と接点を持つ。宇宙卵の観念はブラフマーの創造神話とも重なる。女神を創造の主体とするシャークタ派の神学が、既存の創造神話をどう組み替えたかを示す例である。
なお、英語版ウィキペディアはこの女神にマーリーとスマーリーという魔族をめぐる物語を載せるが、典拠の示されない近年の加筆であり、本サイトでは採用していない。
文化的足跡
ナヴァラートリの四日目は、この女神に捧げられる。健康と活力、そして光をもたらす女神として祈られる。
宇宙の創造を女神の微笑みに帰するという語り方は、シャークタ派の神学の性格をよく示している。創造神ブラフマーではなく大女神が世界を生むという構図が、九日間の祭のなかに組み込まれている。