ヘーリオス
ヘリオス · ソール(ローマ)
ギリシア神話で太陽そのものを司る神。ティタン神族の一柱で、月のセレーネー、暁のエーオースと兄妹をなす。四頭立ての車で天を渡る「万物を見る者」で、車を御しきれず墜ちた息子パエトーンの物語で名高い。
解説
概要
ギリシア神話で太陽そのものを司る神。ティーターン神族の一柱で、月の女神セレーネー、暁の女神エーオースと兄妹をなす。毎朝、火を吐く馬に牽かせた車を駆って東から昇り、天空を渡って西へ沈み、夜のあいだは大洋を巡って東へ還るとされた。高い天から一切を見おろす「万物を見る者」であり、その太陽神としての眼差しは、地上の隠された出来事さえも見逃さない。
神話・物語
天空を渡りながらすべてを見晴らすヘーリオスは、しばしば秘事の証人として物語に現れる。娘をさらわれたデーメーテールに、下界へ連れ去られたペルセポネーの行方を告げたのも彼であり、アプロディーテーとアレースの密会を見咎めて夫ヘーパイストスに知らせたのも彼である。最も名高いのは、息子パエトーンの物語である。父の車を一度でいいから駆りたいと懇願した少年は、ついに手綱を握るが、猛る馬を御しきれず、天も地も焼き尽くさんばかりとなった。世界の破滅を恐れたゼウスは、やむなくパエトーンを雷霆で撃ち落とした。ホメーロス『オデュッセイア』では、太陽神の島トリナキアに放たれた聖なる牛の群れを、オデュッセウスの部下が禁を犯して屠り、その報いに全員が命を落とす。
図像と象徴
ヘーリオスは、光を放つ冠(放射状の光冠)をいただき、四頭立ての馬車を天空高く駆る若者の姿で表される。前300年頃のトロイアのアテーナー神殿を飾ったメトープには、まさに車を駆るヘーリオスの姿が刻まれている。光冠と四頭の馬は、太陽の輝きと、天を巡るその不断の運行を象徴する。ロドス島はこの神を守護神とし、港に立てられた巨大な神像「ロドスの巨像」は、古代世界の七不思議に数えられた。
系譜と関係
父はティーターンのヒュペリーオーン、母はテイアー、兄妹に月のセレーネーと暁のエーオースがある。娘には魔女キルケーやクレタ王妃パーシパエーがおり、太陽の一族はしばしば魔的な力とも結びつけられた。ヘーリオスは、本来は太陽の光そのものを担うティーターンであって、竪琴と予言の神アポローンとは別個の神格であった。だが前5世紀ごろから両者は次第に同一視され、後代にはアポローンが太陽神の相をあわせもつようになる。エジプトの太陽神ラーとも、旅する者たちによって重ね合わされた。ローマではソールにあたる。
文化的足跡
天を駆ける太陽の御者という像は、後世の美術で繰り返し描かれ、四頭立ての馬車(クワドリガ)の意匠は勝利や栄光の象徴として建築や記念碑に受け継がれた。父の車を御しきれず墜ちたパエトーンの物語は、身のほどを超えた野心への戒めとして、絵画や文学に数多く取り上げられている。ギリシア語で太陽を意味するヘーリオスの名は、元素ヘリウムや、太陽を中心に置く「地動説(ヘリオセントリズム)」の語にも残る。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。