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イアーソーン
PLATE — ἸΆΣΩΝ
HELLAS · ギリシア神話
ἸΆΣΩΝ

イアーソーン

イアソン · ジェイソン · Iason

Shii (2006) PUBLIC DOMAIN

アルゴー船を率いてコルキスの金羊毛を持ち帰ったギリシアの英雄。魔女メーデイアの助けで難題を果たしたが、のちに彼女を裏切って破滅した。

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解説

概要

イアーソーン(Ἰάσων / Jason)は、テッサリアのイオールコス王アイソーンの子で、アルゴナウタイを率いて黒海の奥コルキスから金羊毛を持ち帰った英雄である。妻は太陽神ヘーリオスの孫にあたる魔女メーデイア

ギリシアの大英雄のなかで、この人物の位置はやや特異である。怪力でも不死身でもなく、難題を果たしたのはほとんどが妻の呪術によっている。にもかかわらず物語の中心にあり続けるのは、彼が果たすべき役が「率いること」だからである。そして最後には、その妻を裏切ったことによって滅びる。恩を受けた者が誓いを破るという主題が、この英雄伝説の骨格をなしている。

神話・物語

父アイソーンはイオールコスの正統な王だったが、異母兄弟のペリアースに王位を奪われた。ペリアースはアイソーンの血筋を根絶やしにしようとしたため、生まれたばかりのイアーソーンは死産と偽って隠され、ケイローンのもとへ送られて育てられた。ペリアースは「片方だけサンダルを履いた男に用心せよ」という神託を受けていた。

成人したイアーソーンがイオールコスへ帰る途中、アナウロス川で老婆を背負って渡したとき、片方のサンダルを流された。老婆は姿を変えたヘーラーであり、以後この女神が彼を守護する。片足だけサンダルを履いた若者が現れたと聞いたペリアースは、王位を渡す条件として、コルキスの金羊毛を持ち帰ることを課した。

イアーソーンは船大工アルゴスに巨船アルゴーを造らせ、ギリシア中から英雄を集めた。ヘーラクレース、双子のカストールとポリュデウケースリュンケウスペーレウステラモーンメレアグロス、楽人オルペウスらである。往路の挿話は多い。レームノス島では男を皆殺しにした女たちに迎えられ、女王ヒュプシピュレーとのあいだに双子をもうけた。ドリオネス人の地では、暗夜に方角を失って同じ岸へ戻り、敵と誤認して戦い、歓待してくれた王キュジコスを自ら殺してしまう。トラーキアでは、食卓をハルピュイアに荒らされ続けていた盲目の王ピーネウスを救い、その礼として航路の難所を教わった。教えに従ってシュンプレーガデス——ぶつかり合う二つの岩——に鳩を放ち、鳩が尾羽を数枚失っただけで抜けたのを見て一気に漕ぎ通した。

コルキス王アイエーテースは金羊毛を渡すつもりがなく、三つの難題を課した。火を吐く青銅の牡牛に軛をかけて畑を耕すこと、そこに竜の歯を播いて生えてくるスパルトイを退けること、そして眠らぬ竜から金羊毛を奪うことである。絶望したイアーソーンを救ったのは王女メーデイアであった。ヘーラーの依頼でアプロディーテーエロースに射させ、彼女を恋に落としたのだという。メーデイアは火にも刃にも傷つかぬ膏薬を与え、石を投げ込めばスパルトイが同士討ちを始めると教え、最後には竜を眠らせた。

逃走の途上、追手を振り切るためにアプシュルトスが殺される。手を下したのが誰かは伝えによって割れる。メーデイアが幼い弟を殺して四肢を海に撒き、父が拾い集めるあいだに逃げたとするものと、成人した弟をメーデイアが罠に誘い込んでイアーソーンが討ったとするものがある。この血の穢れゆえにゼウスは嵐を送り、一行はキルケーのもとで祓いを受けた。帰路ではオルペウスの竪琴がセイレーンの歌を圧し、クレータでは青銅の巨人タロースがメーデイアの術で倒された。

イオールコスに戻ってもペリアースは王位を譲らなかった。メーデイアは、老いた羊を切り刻んで釜で煮ると仔羊になってみせ、若返りの術と称してペリアースの娘たちに父を同じ目に遭わせた。薬草を加えなかったため、王はそのまま死んだ。イアーソーンは王位を得るどころか、ペリアースの子アカストスによって追放され、コリントスへ落ち延びる。

コリントス王クレオーンは、政治的な後ろ盾を得ようとする彼に娘グラウケーを与えた。メーデイアに詰め寄られたイアーソーンは、感謝すべきは彼女ではなく、彼女を恋に落としたアプロディーテーだと言い放ったという。復讐として送られた婚礼衣装は着た瞬間に燃え上がり、グラウケーと助けようとしたクレオーンを焼き殺す。メーデイアはさらにイアーソーンとの子らを殺し、祖父ヘーリオスの遣わした竜の車で去った。

最期も一様ではない。ヘーラーの加護を失い、孤独のうちに朽ちたアルゴー船の船尾の下で眠っていたところ、船が崩れて圧し潰されたと伝えられる。他方で、のちにペーレウスとともにアカストスを討ってイオールコスを取り戻し、子テッサロスが王位を継いだとする筋もある。悲惨な末路と王家の再興が、同じ人物について並行して語られてきたことになる。

図像と象徴

古代美術は、この英雄の物語のうち特定の場面だけを繰り返し選んだ。竜との対決である。本項に掲げたのは、ケルウェーテリ出土のアッティカ赤絵式キュリクス(前480年から前470年頃、ドゥーリス作、ヴァチカン美術館 inv. 16545)で、中央の樹に金羊毛が掛かり、大蛇が口からイアーソーンを吐き出しつつある。右にはアテーナーが立って見守る。

この場面は、現存するどの文献にも見当たらない。イアーソーンが竜に呑まれ、女神の力で吐き出されるという筋は、前5世紀初頭のアテーナイでは知られていながら、のちの叙事詩と悲劇には受け継がれなかったことになる。図像が文献より古い伝えを保存している例として、しばしば引かれる作例である。

ペリアースへの金羊毛の献上も好まれた。前340年から前330年頃の南イタリア産アプリア赤絵式クラーテール(ルーヴル美術館 K127、冥界の絵師)では、毛皮を差し出すイアーソーンに有翼の勝利女神が冠を授けようとしている。ギリシア本土の陶画が竜の場面を選んだのに対し、南イタリアの工房は宮廷の場面を選んだ。

一方、コルキスでの難題——牡牛を御し、スパルトイと戦う場面——は意外に少ない。呪術によって切り抜ける英雄は、腕力で怪物を倒す英雄ほど絵になりにくかったのだろう。ローマ期にはローマ石棺の浮彫や壁画に現れるが、そこでも主役はしばしばメーデイアの側へ移っている。

系譜と関係

父はつねにアイソーンだが、母の名は資料ごとに大きく揺れる。アルキメデー、アウトリュコスの娘ポリュメーデーポリュメーレー、ポリュペーメーとも)、アムピノメー、テオグネーテー、ロイオー、アルネーなどが挙がり、定まらない。弟にプロマコスがいるとされる。

妻はメーデイア。子は伝えによって数も名も異なり、アルキメネース、テッサロス、ティーサンドロス、メルメロス、ペレース、娘エリオーピスなどが挙げられる。ヒュプシピュレーとのあいだにはエウネオスら双子をもうけた。

なお、名イアーソーンをイアオマイ(癒す)に結びつけ、医術に長けたケイローンの弟子であることと関連づける説がある。ただし語源としては確定していない。

文化的足跡

物語の決定版は、前3世紀後半にアレクサンドリアで書かれたロドスのアポローニオス『アルゴナウティカ』である。1世紀末にはガイウス・ウァレリウス・フラックスが同名のラテン語叙事詩を書いたが、メーデイアが同行を願う場面で唐突に終わっており、未完か散逸かは分からない。オルペウスの役割を強調した『オルペウス的アルゴナウティカ』もある。裏切りの側を主題としたのがエウリーピデース『メーデイア』(前431年)で、以後この物語は、英雄の冒険譚としてよりも捨てられた女の悲劇として読まれるようになった。

ダンテ『神曲』地獄篇第18歌は、イアーソーンを地獄の第八圏に置く。誘惑者と女衒の列に並べられ、悪魔に鞭打たれて永遠に歩き続ける。メーデイアとヒュプシピュレーを欺いた者としての裁きである。ウィリアム・モリスの叙事詩『イアーソーンの生と死』(1867年)は生前の彼の作品中最も広く読まれ、パードリック・コラムの児童向け再話『金羊毛とアキレウス以前に生きた英雄たち』(1921年)は20世紀の読者にこの物語を伝えた。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q176758 — 骨格データの出典
Commons
Jason — 図像カテゴリ