ポリュメーデー
ポリュメデ · ポリュメーレー · アルキメデー
イアーソーンの母とされる女性。アウトリュコスの娘で、ペリアースがアイソーンを殺そうとしたとき夫とともに自死した。ペリアースを呪いながら首を吊ったという。
解説
概要
ポリュメーデー(Πολυμήδη、「きわめて思慮深い」「知に富む」)は、ギリシア神話の女性の名である。
主として、イアーソーンの母とされる女性を指す。
神話・物語
アウトリュコスの娘であり、アンティクレイア、アイシモスと兄弟姉妹にあたる。母はメストラー、ネアイラ、あるいはアムピテアーとされる。
アポロドーロスによれば、イオールコス王アイソーンと結婚し、イアーソーンとプロマコスを産んだ。
ただしイアーソーンの母の名は一定しない。ヘーシオドスではアイソーンの妻をポリュメーレーとし、他の説ではピュラコスの娘アルキメデー、アムピノメー、スタピュロスの娘ロイオー、ラーオディコスの娘テオグネーテー、アルネー、スカルペーなどとする。
イオールコス王ペリアースは、コルキスへ発ったイアーソーンの帰還をしばらく待った。しかしやがて待つのをやめ、アイソーンを殺そうとする。そのためアイソーンとポリュメーデーは、幼いプロマコスを残して自ら命を絶った。アイソーンは供犠の最中に牡牛の血を飲んで死に、ポリュメーデーはペリアースを呪いながら首を吊って死んだという。ペリアースは残されたプロマコスをも殺した。
このほか、ピュロス王ネーレウスとのあいだにネストールを産んだポリュメーデーが知られる。ただしネストールの母は、オルコメノス王アムピーオーンの娘であるミニュアスの王女クローリスとされるのが通例である。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
死に方が、この女性の性格を示している。夫は供犠の血を飲んで死に、妻は呪いながら首を吊る。呪いを残して死ぬという形は、ギリシア悲劇において報復の連鎖を起動する装置である。
アウトリュコスの娘であることも見逃せない。アウトリュコスは盗みの名手であり、オデュッセウスの外祖父にあたる。その娘の一人アンティクレイアがオデュッセウスの母、もう一人がイアーソーンの母——二人の航海者の母が姉妹であるという系譜になる。
関わる神格・伝承
父はアウトリュコス、夫はアイソーン、子はイアーソーンとプロマコス。姉妹はアンティクレイア。
イアーソーンの母の名が六通り以上伝わることは、この人物が固定した伝承を持たないことを示す。系譜文献が空白を埋めるために名を補った結果とみられる。
文化的足跡
日本語圏では、イアーソーンの母として言及される程度である。名の異同まで語られることはまずない。
しかしオデュッセウスとイアーソーン——ギリシア神話の二大航海者——の母が姉妹であるという系譜は、二つの物語を一つの家系で結ぶ試みとして興味深い。系譜文献が別々の伝承をどう連結したかを示している。