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ハルピュイア
PLATE — ἍΡΠΥΙΑΙ
HELLAS · ギリシア神話
ἍΡΠΥΙΑΙ

ハルピュイア

ハーピー · ハルピー · ハルピュイアイ

Jastrow (2007) PUBLIC DOMAIN

ギリシア神話の女面鳥身の怪物。名は「掠め取る女」を意味し、突風の擬人化と見られる。盲目の王ピーネウスの食卓を襲い、北風の子らに追い払われた。

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解説

概要

ハルピュイア(Ἅρπυια / Harpyia、複数形ハルピュイアイ)は、女の顔と鳥の体をもつギリシア神話の合成獣である。名は「掠め取る」を意味する語に由来し、物を攫って消える突風の擬人化と解されている。人が忽然と姿を消したとき、ギリシア人はハルピュイアに攫われたと言った。

同じ女面鳥身でも、セイレーンが歌で人を惹きつけるのに対し、ハルピュイアは奪って去る。誘惑と略奪というこの違いは、古代の作例でも場面ごとに描き分けられている。

登場する物語

最もよく知られるのはトラーキアの王ピーネウスの物語である。ピーネウスはゼウスから予言の力を授かりながら、神々の計画を人に漏らした。罰として盲目にされ、食卓には料理が並ぶものの、口に運ぶ前にハルピュイアが舞い降りて奪う。残ったものには悪臭を放つ汚物が撒かれ、食べられない。飢えたまま、死ぬこともできない状態が続いた。

そこへ金羊毛を求めるアルゴナウタイの一行が到着する。ピーネウスは、怪物を追い払ってくれるなら航路の難所を教えると約束した。北風ボレアースの子ゼーテースとカライスは父から翼を受け継いでおり、剣を抜いて追い、はるか西の島まで追い詰める。結末は伝承によって割れる。アポロニオス『アルゴナウティカ』では虹の女神イーリスが現れて追跡をやめさせ、以後ピーネウスを苦しめないと誓わせる。別の伝えでは殺す寸前だったとも、追う者も追われる者も力尽きたとも、双方とも死んだともいう。追跡が引き返された島は、そのためストロパデス(引き返しの島々)と呼ばれた。

ウェルギリウス『アエネーイス』では、そのストロパデスに漂着したアエネーアース一行が牛を屠って食事を用意したところ、ハルピュイアが襲いかかる。剣で追い払おうとしても刃が通らず、ケライノーが飢えの予言を残して去る。ゼウスの命によりエリーニュスのもとへ罪人を運ぶ役も担い、パンダレオスの娘たちを攫って復讐の女神たちへ引き渡したとも伝えられる。単なる害獣ではなく、罰を執行する側の存在でもある。

図像と象徴

図像の歴史は、美しい有翼の乙女から醜い怪鳥へと向かう。ヘーシオドスは神統記で彼女たちを「美しい髪の」と形容し、風と競うほど速く飛ぶ翼の乙女として描いた。デルポイ出土の象牙浮彫(前570年頃)や同時期のアッティカ黒絵も、翼をもつ女の姿で表す。

前5世紀のアッティカ赤絵の柱状クラテール(前460年頃、アルタムーラ出土、ルーヴル美術館)は、この主題の代表作である。中央に盲目のピーネウスが座り、左右から翼を広げたボレアースの子らが迫り、卓上の食物をめぐる争いが一場面に収まる。ここでのハルピュイアはまだ人の姿に近い。

醜怪な像を定着させたのは、むしろ文学のほうである。アイスキュロス『エウメニデス』では、デルポイの巫女がエリーニュスの姿を語る際、かつて絵で見た「ピーネウスの饗宴を奪う者ども」を引き合いに出す。ウェルギリウスは鳥の体に少女の顔、鉤爪の手、飢えでやつれた面相と書き、ヒュギーヌスは羽毛と鶏の頭を与え、オウィディウスは人面の禿鷲と呼んだ。中世からルネサンスの図像はこの系統を継ぎ、ダンテ『神曲』地獄篇第13歌では、自殺者が変じた木々を啄む怪鳥として自殺者の森に住みつく。

紋章に取り込まれたのは近世である。女の頭と胸に禿鷲の体を組み合わせた「ハーピー」の図案がドイツ語圏を中心に用いられ、紋章学の図案集がその形を標準化した。今日の挿絵やゲームに現れるハーピー像は、古代の壺絵よりもこの紋章と近代の書物挿絵に近い。

関わる伝承

ヘーシオドスは、タウマースガイアポントスの子)とオーケアノスの娘エーレクトラーの娘とし、虹の女神イーリスの姉妹に位置づける。天空の現象に属する存在として扱われていることが、系譜からも読める。ヒュギーヌスはオゾメネーを母とするが、これはエーレクトラーの別名と解される。ウァレリウス・フラックスはテューポーンを父とし、セルウィウスはポントスとガイアの子、あるいはポセイドーンの子とする。

人数と名も一定しない。ヘーシオドスは二柱、アエロー(疾風)とオーキュペテー(速く飛ぶ女)を挙げる。ウェルギリウスはケライノー(黒き女)を加えて三柱とし、さらにポダルゲー(足速き女)を数える伝えもある。ホメーロスによれば、このポダルゲーが西風ゼピュロスとの間に、アキレウスの二頭の駿馬クサントスとバリオスを生んだ。風の霊であるという古い性格は、ここに残っている。

文化的足跡

英語の harpy は強欲で口やかましい女を指す蔑称としても使われる。ウェルギリウス以来の醜怪な像が定着した結果である。中南米に分布する大型の猛禽オウギワシは、学名 Harpia harpyja と英名 harpy eagle にこの名を負う。

女面鳥身という造形そのものは地中海世界に限らない。スラヴのアルコノストやイスラーム世界の図像にも並行が見られるが、これらは系譜を同じくするものではなく、それぞれの伝統のなかで形成された姿である。現代の幻想文学やゲームにも、翼をもつ亜人種としてしばしば登場する。

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領分・別名

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

Electra
ΘΑΎΜΑΣ
タウマース
ἾΡΙΣ
イーリス
兄弟姉妹
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資料

Wikidata
Q181360 — 骨格データの出典
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