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アプロディーテー
PLATE — ΑΦΡΟΔΊΤΗ
HELLAS · ギリシア神話
ΑΦΡΟΔΊΤΗ

アプロディーテー

アフロディーテ · アフロディテ · アプロディーテ

Ricardo André Frantz (User:Tetraktys) CC BY-SA 3.0

ギリシア神話の女神。愛と性愛、美を司る。海の泡から生まれたとも、ゼウスとディオーネーの娘とも伝えられ、二つの出自の食い違いは古代から意識されていた。西洋美術における裸体像は、この女神の彫刻から始まる。

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解説

概要

アプロディーテー(Ἀφροδίτη / Aphrodite)は、ギリシア神話の女神である。愛と性愛と美を司る。日本語ではアフロディーテとも表記する。

近代の絵画が伝える優美な女神像とは裏腹に、ギリシア人が語ったのは抗いがたい力としてのアプロディーテーである。この女神が働きかけると、人は自分の意志では止まらなくなる。トロイア戦争は彼女の約束から始まり、パイドラーもメーデイアもその力に壊された。愛の女神は、しばしば災厄の原因として語られる。

神話・物語

出生には二つの伝えがあり、しかもその食い違いを古代人自身が知っていた。

ヘーシオドス『神統記』によれば、クロノスが父ウーラノスの陰部を切り落として海に投じ、その周りに立った白い泡から女神が生まれ、キュテーラを経てキュプロスの岸に上がった。ヘーシオドスは名を「泡(アプロス)から生まれた者」と説くが、これは民間語源であり、言語学的には支持されていない。一方ホメーロス『イーリアス』は、ゼウスとディオーネーの娘とする。プラトーン『饗宴』は、この二つを二柱の女神に読み分けた——ウーラノスから生まれた天上のアプロディーテー・ウーラニアーと、ゼウスの娘であるパンデーモス(万人の)である。異伝を消さずに、意味の違いとして引き受けたのである。

アレースとの密通は『オデュッセイア』第八歌に詳しい。夫ヘーパイストスは目に見えぬ細い網を寝台に仕掛け、二人を絡め取ったまま神々を呼び集めて晒し者にする。神々は笑う。悲劇にならないところが、この挿話の勘所である。

アドーニスをめぐる話では、美しい若者の身柄をペルセポネーと争い、一年を分け合うことで裁定された。若者は猪に殺され、その血から花が咲く。死んで還る若い神という近東の型が、ギリシアに入った跡である。パリスの審判では、最も美しい女を与えると約束してパリスの票を得た。アンキーセースとの間にはアイネイアースを産み、ローマのユリウス氏族はこの系譜に自らを接いだ。

この女神の来歴には近東が絡む。ヘーロドトス『歴史』第一巻一〇五は、シリアのアスカロンにあるアプロディーテー・ウーラニアーの神殿こそが最古であり、キュプロスの神殿はそこから、キューテーラの神殿はフェニキア人によって建てられたと記す。イシュタル、アスタルテと連なる女神との連続を、ギリシア人自身が意識していたことになる。スパルタやキュプロスに武装した姿のアプロディーテーがいたことも、愛と戦を併せもつ近東の女神の層が残ったものと見られている。

図像と象徴

アルカイック期のアプロディーテーは着衣である。この女神を裸で彫ることは、前4世紀まで行われなかった。

転換点は前350年頃、プラクシテレースの《クニドスのアプロディーテー》である。沐浴の前に衣を脱いだところ、という口実を立てて、等身大の女神を全裸で彫った。ギリシア彫刻において女性裸体像を成立させた作品とされ、古代から名高く、これを見るためだけにクニドスへ渡る者がいたと伝えられる。原作は失われ、ローマ期の模刻を通じてのみ知られる。以後の型はここから派生する——手で身を覆うプディカ(慎みの)型、アナデュオメネー(海から上がる)型、身をひねって背を見せるカリピュゴス型。

本記事の主画像はアテーナイ国立考古学博物館の大理石像である。

随伴するのはエロース、あるいは複数の小さな有翼の神々(エローテス)。聖鳥は鳩・雀・白鳥、聖樹は桃金嬢(ミュルトス)と薔薇。持物としてケストス・ヒマース——身につけた者に欲望を向けさせる帯があり、『イーリアス』ではヘーラーがこれを借りてゼウスを誘惑する。

ローマ期のウェヌス像を経て、この図像はルネサンス以降の西洋美術における裸体表現の規範となった。ボッティチェッリ《ヴィーナスの誕生》(1480年代)はアナデュオメネー型を貝殻の上に移したものである。西洋絵画で裸婦を描くための口実として、この女神の名は数百年にわたって使われ続けた。

系譜と関係

出生は上記の二伝による。夫はヘーパイストス(『オデュッセイア』)。ただし『神統記』はカリスの一柱を鍛冶神の妻とし、アプロディーテーはアレースとの間にポボス(恐慌)とデイモス(敗走)とハルモニアーを産んだとする。愛の女神の子が恐慌と敗走であるという配置は、この女神の力の見方を示している。

エロースの親としても語られるが、『神統記』のエロースは原初の力の一つで、アプロディーテーより古く、彼女の子ではない。ヘレニズム期以降に、母と子の関係へ整理されていった。

ローマではウェヌスと同一視された(インテルプレタティオ・ロマーナ)。ただしウェヌスはもともと庭園と豊穣に関わる神格であり、愛の女神としての性格はギリシアからの習合による。カエサルはウェヌス・ゲネトリクス(生みの母ウェヌス)を氏族の祖として祀り、この女神をローマの国家神話に組み込んだ。エジプトのハトホルとも同一視され、ハトホルの聖地はギリシア語でアプロディートポリス(アプロディーテーの都市)と呼ばれた。

文化的足跡

信仰の中心はキュプロスのパポスにあった。コリントスの聖所については、ストラボーンが千人の神殿娼婦を伝えるが、この記述の信憑性は現在では強く疑われている。

後世の美術における位置は、ギリシアの神々のなかでも別格である。ボッティチェッリ、ティツィアーノ、ベラスケス、カバネル——ウェヌスの名は、西洋絵画が女性の身体を主題として扱うための最も長く使われた枠組みだった。現代の日本ではゲームや漫画を通じて名を知る読者も多いが、作品ごとの造形は原典の神話とは別のものである。

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領分・別名

INTERPRETATIO — 同一視・同源
ウェヌス ローマ神話 同一視
interpretatio romana。ウェヌスは本来庭園・豊穣に関わる神格で、愛の女神としての性格はギリシアからの習合による
ハトホル エジプト神話 同一視
ギリシア語期エジプトでの同一視。ハトホル信仰の地は「アプロディートポリス(アプロディーテーの都市)」と呼ばれた
トゥラン エトルリア神話 同一視
アトゥニス(アドーニス)との場面やエルクスントレの審判など、銅鏡の主題はアプロディーテー譚をそのまま移したもの。ただしトゥランの名はエトルリア語で、ギリシア語からの借用ではない。
アスタルト フェニキア・カナン神話 同一視
ヘーロドトス『歴史』I.105。シリアのアスカロンの神殿をアプロディーテー・ウーラニアーの最古の神殿とし、キュプロス・キューテーラの聖所がそこに由来すると記す

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

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資料

Wikidata
Q35500 — 骨格データの出典
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Aphrodite — 図像カテゴリ