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オルペウス
PLATE — ὈΡΦΕΎΣ
HELLAS · ギリシア神話
ὈΡΦΕΎΣ

オルペウス

オルフェウス · オルフェ · オルフェオ

Marie-Lan Nguyen PUBLIC DOMAIN

竪琴で万物を魅了したとされるトラーキアの詩人。死んだ妻を求めて冥界へ下り、振り返って失った。最後は八つ裂きにされて死んだ。

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解説

概要

オルペウス(Ὀρφεύς / Orpheus)は、竪琴の名手として語られるトラーキアの詩人である。その歌は獣も木も岩も、冥界の神々さえも動かしたとされる。死んだ妻エウリュディケーを求めて冥界へ下り、振り返ったために連れ戻せなかった物語で最も知られる。

古代ギリシア人の多くは彼を実在の人物、ホメーロス以前の詩人とみなしていた。しかしホメーロスもヘーシオドスも彼に一言も触れておらず、現存最古の言及は前6世紀のイービュコスの断片にすぎない。アリストテレスは実在を否定している。神話の人物としても、教団の開祖としても、実在の詩人としても扱われてきた点が、この人物を扱いにくくしている。

神話・物語

イアーソーンアルゴナウタイに加わり、竪琴で櫂の拍子をとった。セイレーンが歌で船員を誘惑したときには、対抗して歌い、船を守っている。ただ一人ブーテースだけが誘惑に負けて海へ飛び込んだ。

最も名高いのは冥界下り(カタバシス)である。妻エウリュディケーが毒蛇に噛まれて死ぬと、彼はタイナロン岬の地下道から冥界へ降りた。歌声に冥界の住民は聞き惚れる。番犬ケルベロスはおとなしくなり、シーシュポスは岩を置いて座り、イクシーオーンの車輪は止まり、タンタロスは飢えを忘れ、復讐女神たちさえ涙を流したという。永遠の刑が歌のあいだだけ中断するという描写は、この場面の白眉である。

ハーデースペルセポネーは妻を返すことを認めたが、冥界を出るまで振り返ってはならないという条件を付けた。地上の光が見えるところまで来て、彼は振り返る。理由を、疲れた妻を案じたためとする版もあれば、愛のあまり自制を失ったためとする版もある。エウリュディケーは別れの言葉を残して消えた。再び下ろうとしても、渡し守は許さなかった。救出に成功したとする異伝も伝わる。

死に方にも多くの説がある。最もよく語られるのは、妻への愛を貫いて他の女を寄せつけなかったためにマイナデスの怒りを買い、スパラグモス——素手で引き裂かれること——によって殺されたという筋である。切り離された首と竪琴はヘブロス河を流れながらなお歌い、レスボス島に流れ着いた。以後この島が詩人を輩出したのはそのためだという。

理由については、少年愛をトラーキアに広めたため、女たちの入信を拒んだため、ディオニューソス崇拝からアポローン崇拝へ転じたため、密儀の秘密を漏らしたためなど、数え切れないほどの説がある。ゼウスの雷に撃たれたとする版、妻を悼んで自ら死んだとする版もある。ひとつの死に対してこれほど多くの理由が用意されているのは、それぞれの立場がこの詩人をどう位置づけたかの違いを反映している。

竪琴は天に上げられてこと座になったと、伝エラトステネースとヒュギーヌスは伝える。

図像と象徴

標識は竪琴である。古典期の陶画で繰り返し描かれたのは、トラーキア人に囲まれて歌う姿と、女たちに襲われる死の場面の二つであった。本ページの主画像は前5世紀のアッティカ赤絵式ステュムノス(ヘルモナクス作、ルーヴル美術館 G416)で、後者の場面を描く。竪琴を掲げて防ごうとする詩人と、杭や斧を振り上げる女たちという構図が定型となった。

冥界下りの場面は、意外にも古代の陶画にほとんど現れない。この主題が図像として確立するのは、むしろローマ期の浮彫からである。

初期キリスト教美術では、プリュギア帽をかぶって動物に囲まれ楽を奏でる姿が繰り返し描かれた。「獣を魅了する者」が「善き羊飼い」としてのキリストの寓意と重ねられたためで、異教の詩人がカタコンベの壁に現れるという特異な受容にあたる。

系譜と関係

通説では父はトラーキア王オイアグロス、母はムーサのカリオペー。母をポリュムニアーとする説、アポローンを父とする説もある。兄弟に詩人リノス、子にムーサイオスの名が挙がるが、いずれも師弟関係を系譜に置き換えたものとみる見方がある。

妻はエウリュディケー。彼女に恋を仕掛けて死の原因を作ったのはアリスタイオスで、その罪の報いとしてアリスタイオスの蜜蜂が全滅する——という筋が、ウェルギリウス『農耕詩』では入れ子の形で語られる。

文化的足跡

オルペウス教の開祖とされるが、冥界下りの物語と教団の教義に直接のつながりはない。彼の名を冠した『オルペウス教讃歌』などは後代の偽書であり、区別して扱う必要がある。

冥界下りの筋は西洋芸術で最も反復された神話の一つである。ポリツィアーノの音楽詩劇を源として、ペーリ、カッチーニ、モンテヴェルディ、グルック、オッフェンバックとオペラの系譜が続いた。現存最古のオペラ(ペーリ『エウリディーチェ』)がこの主題であったことは、音楽の起源を語る神話としての位置を示している。二〇世紀にはリルケ『オルフォイスへのソネット』、コクトー『オルフェ』、カミュ監督『黒いオルフェ』などがある。

日本神話のイザナギとイザナミの黄泉の段——見てはならないという禁忌を破って妻を失う——との類似は古くから指摘されてきた。ただし直接の影響関係を示す資料はなく、カタバシスという広く分布する型の一例として扱うのが妥当である。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q174353 — 骨格データの出典
Commons
Orpheus — 図像カテゴリ