アカストス
アカストス王 · Acastus · Akastos
ペリアースの子でアルゴナウタイの一員。父の仇を討ってイオールコス王となったが、妻の虚言を信じてペーレウスをペーリオン山に置き去りにし、のちに討たれた。
解説
概要
アカストス(Ἄκαστος)は、ギリシア神話の人物である。イアーソーンとアルゴナウタイに加わって航海し、カリュドーンの猪狩りにも参加した。
イオールコス王ペリアースとアナクシビアー(伝えによってはピュロマケー)の子である。
神話・物語
アルゴナウタイの帰還ののち、姉妹たちがメーデイアに唆されて父ペリアースを切り刻み、煮た。これを知ったアカストスは父を葬り、イアーソーンとメーデイアをイオールコスから追放する。パウサニアースによれば姉妹たちも追われた。そして父を追悼する競技を定め、以後イオールコスの王となった。
ペーレウスをめぐる挿話が、この人物を最もよく知られたものにしている。
アカストスは、プティーアー王エウリュティオーンを殺したペーレウスの穢れを祓った。ところが妻——資料によってアステュダメイアとも、クレーテウスの娘ヒッポリュテーとも呼ばれる——がペーレウスに恋し、退けられる。
恨んだ妻は、ペーレウスの妻アンティゴネー——エウリュティオーンの娘——に使者を送り、夫がアカストスの娘ステロペーと結婚しようとしていると告げさせた。アンティゴネーは自ら命を絶つ。
さらに妻はアカストスに、ペーレウスが自分を犯そうとしたと訴えた。アカストスはペーレウスを狩りに連れ出し、眠っているあいだに剣を隠して、ケンタウロスに殺させるためペーリオン山に置き去りにする。賢いケンタウロスケイローンが剣を返し、ペーレウスは生き延びた。
のちペーレウスはイオールコスを攻め、アカストスとその妻を討ったとされる。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
物語における位置は、正当な報復者から加害者へ転じる者である。父の仇を討ち、王位を継ぎ、客人の穢れを祓う——ここまでは正しい。しかし妻の虚言を信じ、客人を殺そうとしたことで、自らが討たれる側に回る。
眠る者から剣を奪って野に置き去りにするという殺し方も特徴的である。直接手を下さず、状況によって死なせようとする。この間接性が、のちの報復を正当化する材料になっている。
系譜と関係
父はペリアース、妻はアステュダメイア(あるいはヒッポリュテー)。娘にステロペーとラーオダメイア。ビブリオテーケーはもう一人の娘ステネレーをメノイティオスの妻、パトロクロスの母とする。
姉妹にアルケースティス、ピーシディケー、ペロピアー、ヒッポトエーがいる。
文化的足跡
日本語圏では、アルゴナウタイの一員として名が挙げられる程度である。
しかしペーレウスをめぐる挿話は、アキレウスの父がなぜケイローンと縁を持つのかを説明する筋でもある。ペーリオン山に置き去りにされ、ケンタウロスに救われた男が、のちに子をそのケンタウロスに預ける。系譜の裏に、こうした因縁が仕込まれている。