大地の神
大地そのものを体現する神格のファセット。豊穣神が実りを与えるのに対し、この役割の神は地面そのものであり、その上に世界が乗っている。
ギリシアのガイアは原初神の一柱で、独りで天ウーラノスと海ポントスを産み、神々の系譜の起点となった。神殿も祭儀もほとんど残らないが、誓いの証人としてはしばしば呼び出される——踏んでいるものに誓うのである。エジプトのゲブは珍しく男性の大地神で、天の女神ヌトの下に横たわる図像で描かれる。天が女で地が男という配置は、ギリシアやメソポタミアと逆である。その笑いが地震を起こし、体から穀物が芽吹くとされた。アンデスのパチャママは今日まで信仰が続き、酒を飲む前に一滴を地面へ落とす所作が広く行われている。バルトのジェミナは名がそのまま「大地」を意味し、天のペルクーナスと対をなす。北欧のヨルズは、このファセットが物語を一つも持たないまま成立しうることを示す。名は「大地」という普通名詞そのままで、固有の逸話はなく、伝わるのはトールの母であるという系譜と、「ユミルの肉」「風の館の床」といった詩の言い換えだけである。アステカのコアトリクエは蛇のスカートをはき、生を育むと同時に死者を呑み込む。同じアステカのトラルテクトリでは、大地そのものが引き裂かれた怪物の死体として語られ、山も泉も洞窟もその体の部位に割り当てられる。東スラヴの母なる湿れる大地は、この役割の輪郭がいかに曖昧になりうるかを示す。神殿も祭司もまとまった神話もなく、あるのは呼び名と、それに向けられた所作だけである——土を口に含んで誓い、大地に向かって罪を告白し、祭日には地面を掘らない。一柱の女神と呼ぶには痩せているが、信じられていたことは疑いようがない。
図像化は難しい。地面を描いても神には見えないため、造形は横たわる身体(ゲブ)か、産む身体(ガイア)へ向かう。あるいは像を作らず、地面そのものへ献酒する。
注意がいる。「大地母神」の一語で括りたくなるが、ゲブは男である。天父と地母の対がどこにでもあるという主張は19世紀から20世紀の比較神話学が広めたもので、実証されているわけではない。大地を神と呼ぶかどうかも一様ではなく、耕地と埋葬地と国土は、体系ごとに別の神へ割り振られることがある。同じ「大地」でも、指しているものが違う。
この役割の神格
30柱を収載(知名度順)
ギリシア神話
ガイア
Γαῖα — 創造神・主神
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ヒンドゥー神話
シーター
सीता — 豊穣神
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インカ神話
パチャママ
Pacha Mama — 豊穣神
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ヒンドゥー神話
プリティヴィー
पृथ्वी — 豊穣神
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ヒンドゥー神話
バーラト・マータ
भारत माता — 大地の神
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メソポタミア神話
ニンフルサグ
𒀭𒎏𒄯𒊕 — 創造神・主神
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北欧神話
ヨルズ
Jǫrð — 大地の神
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アステカ神話
コアトリクエ
Cōātlīcue — 死神・冥界神
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アステカ神話
トラソルテオトル
Tlazōlteōtl — 愛と美の神
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ケルト神話
カリアッハベーラ
Cailleach Bhéarra — 嵐・風の神
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アフリカ神話
オドゥドゥワ
Odùduwà — 創造神・主神
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スラヴ神話
ジェミナ
Žemyna — 豊穣神
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エジプト神話
ゲブ
gbb — 豊穣神
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スラヴ神話
母なる湿れる大地
Мать — сыра земля — 豊穣神
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インカ神話
ママ・オクリョ
Mama Uqllu — 豊穣神
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アステカ神話
トラルテクトリ
Tlāltēuctli — 豊穣神
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アステカ神話
トシ
Tocih — 豊穣神
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ヒンドゥー神話
シェーシャ
शेष — 大地の神
PLATE
ヒンドゥー神話
ヴァラーハ
वराह — 大地の神
PLATE
ヒンドゥー神話
サティヤバーマー
सत्यभामा — 大地の神
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ヒンドゥー神話
ヴァーラーヒー
वाराही — 大地の神
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ペルシア神話
スプンタ・アールマティ
𐬯𐬞𐬆𐬧𐬙𐬀 𐬁𐬭𐬨𐬀𐬌𐬙𐬌 — 豊穣神
PLATE
メソポタミア神話
キ
𒆠 — 大地の神
PLATE
ローマ神話
オプス
Ops — 豊穣神
PLATE
北欧神話
ゲルズ
Gerðr — 大地の神
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メソポタミア神話
キシャル
𒆠𒊹 — 大地の神