ヴァーラーヒー
ダンディニー · ヴァールターリー · ダンディナータ
サプタマートリカー(七母神)の第六。猪身化身ヴァラーハのシャクティとされ、猪の頭をもつ姿で表される女神とされる。
解説
概要
ヴァーラーヒー(Vārāhī / वाराही)は、サプタマートリカー(七母神)の第六に数えられる女神である。ヴィシュヌの猪身化身ヴァラーハのシャクティとされ、猪の頭をもつ姿で表される。七母神のなかでは独立した信仰をもつ数少ない一柱であり、ダンディニー、ヴァールターリーの名で単独に祀られる。
神話・物語
『デーヴィー・マーハートミヤ』第八章によれば、魔神シュンバとニシュンバとの戦いに際して、ヴァラーハから生じた力が女性の姿をとったものである。猪の姿をとり、水牛に乗って現れたと記される。
シュリーヴィディヤーの流派においては、女神トリプラ・スンダリーの軍を率いる将(ダンディナータ)とされる。宰相の役を担うマータンギーと対をなし、二柱が女神の統治を支える構図をとる。七母神の一員という位置を越えて、独自の体系のなかに組み込まれた例である。
図像と象徴
猪の頭と女性の身体をもつ。四臂に犂(すき)と杵、あるいは円盤と剣を執る。乗騎は水牛。犂と杵という農具が武器として与えられている点が、他の六柱と異なる。
象徴となるのは犂である。大地を裂き、また耕すという二重の働きが、この女神に託されている。
系譜と関係
ヴァラーハのシャクティ。サプタマートリカーの体系では第六の位置にあり、ブラーフマニー、ヴァイシュナヴィー、マーヘーシュヴァリー、インドラーニー、カウマーリー、チャームンダーと一組をなす。ヴィシュヌ系の母神としてヴァイシュナヴィーと重なるが、こちらは化身の力である点で区別される。
文化的足跡
オリッサ州チャウラーシーのヴァーラーヒー寺院は、9世紀に遡る作例を伝える主要な聖地である。ネパールのアシュタ・マートリカーにも数えられ、カトマンズ盆地に祠が置かれる。
七母神のうち、単独で寺院を構える例が最も多い一柱である。夜半に祀られること、非菜食の供物が捧げられることなど、実践の面でも独自の伝統をもつ。猪という動物が不浄と結びつけられる文脈がある一方で、女神として祀られている点は、シャークタ派が浄と不浄の境をどう扱ってきたかを示す例として論じられてきた。