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PLATE — JǪRÐ
NORÐR · 北欧神話
JǪRÐ

ヨルズ

ヨルド · ヤルズ · フィヨルギュン

北欧神話で大地そのものを体現する女神。オーディンとのあいだにトールを生んだ母である。固有の物語を持たず、詩のなかでは「大地」を言い換えるための名として生き続けた。

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解説

概要

ヨルズ(Jǫrð)は、北欧神話で大地を体現する女神。名は古ノルド語で「大地」を意味する普通名詞そのままで、ゲルマン祖語 *erþō に遡る。ゴート語 airþa、古英語 eorþe、現代アイスランド語 jörð、そして英語の earth はいずれも同じ語である。オーディンとのあいだにトールを生んだ母として知られる。

ギュルヴィたぶらかし』はこの女神をアーシュニュルに数える。他方、系譜をたどれば父も母もヨトゥンの側にある。ルドルフ・シメクはこの矛盾を「巨人とも呼ばれるアースの女神」と要約し、ジョン・リンドウは、もとは女巨人であって、オーディンとの結びつきは彼が繰り返した女巨人との交渉——婚姻と呼べるものばかりではない——の一例と見るべきだと述べる。

神話・物語

この女神を主人公とする物語は伝わらない。名だけが繰り返し現れて筋が一つもないという点で、ヨルズは北欧神話でも特異な位置にある。

『ギュルヴィたぶらかし』第10章が語るのは系譜だけである。ヨトゥンヘイムの巨人ノルヴィ(ナルヴィとも)の娘ノートは三度嫁ぎ、ナグルファリとのあいだにアウズを、アンナルとのあいだにヨルズを、アース神族デリングとのあいだにダグ(昼)をもうけた。ただしこの箇所は写本で割れる。ハウクル・ソルゲイルソンが指摘したとおり、最古の写本 U ではデリングの妻でダグの母はノートではなくヨルズであり、R・W・T の三写本ではノートである。今日流布する系図は後者に拠るが、アイスランドの詩の伝統には U 系の異伝も入り込んだ。

トールの母を呼ぶ名は一つではない。『巫女の予言』はトールを「フロージュンの子」「フィヨルギュンの子」と呼び、『ロキの口論』は「ヨルズの子」と呼ぶ。フロージュンとフィヨルギュンはヨルズの別名と解されている。注意がいるのは、フリッグの父とされるフィヨルギュン(Fjǫrgynn)が別人だという点である。同じ語幹の女性形と男性形が、それぞれ別の神を指している。

図像と象徴

古い図像は知られていない。この女神の輪郭を伝えるのは、ほとんどケニングだけである。

『詩語法』第90章は「大地をどう言い換えるか」という体裁でヨルズのケニングを集める。「ユミルの肉」「トールの母」「オーナル(アンナル)の娘」「オーディンの花嫁」「フリッグとリンドグンロズの恋敵」「シヴの姑」「ノートの娘」「アウズとダグの姉妹」「風の館の床であり底」「獣たちの海」。系譜と自然描写が同じ列に並んでいるのが目を引く。大地は誰かの母であり誰かの娘であると同時に、風の吹きぬける広間の床板でもあり、獣が泳ぐ海でもある。

別名フロージュンについては、ライン下流域とフリースラントで出土した五件の奉献碑(197〜235年)に名の見える女神フルダナ(Hludana)との関係が古くから論じられてきた。語形は近いが、フルダナ側の性格がほとんど分からないため、同じ神を指すのかどうかは決着していない。

本サイトが主画像を掲げないのは、この女神を描いたと確実に言える作品がないためである。19世紀以降の北欧には《母なる大地》と題した彫刻がいくつも作られたが、それらは大地の寓意であって、原典のヨルズの像ではない。

系譜と関係

父はアンナル(『詩語法』ではオーナル)、母はノート。異父の兄にアウズ、異父の弟にダグがいる。オーディンとのあいだの子がトールで、トールの妻シヴから見れば姑にあたる。

比較神話学はこの配置に注目してきた。シメクは、天空神ディヤウスと大地のあいだに雷神インドラが生まれるヴェーダの構図と、オーディンとヨルズのあいだにトールが生まれる構図を並べる。ただし北欧側でオーディンを天空神と呼べるかは別問題であり、対応は示唆にとどまる。

別名フィヨルギュンは、バルトの雷神ペルクーナス、ゴート語 fairguni(山)と同じ印欧祖語の語幹に遡ると考えられている。印欧語の雷神名 *Perkʷunos に連なる語形がゲルマン語に残ったのは、雷神トールの名ではなく、その母の名のほうだったことになる。

文化的足跡

jord / jörð は今も北欧諸語で「大地」を指す日常語である。神の名が普通名詞に落ちたのではなく、普通名詞がそのまま神の名を兼ねていた、というのがこの語の実情に近い。

リヒャルト・ワーグナーは『ニーベルングの指環』に大地の女神エルダ(Erda)を置き、世界の運命を知る者としてヴォータンに警告させた。ヨルズと巫女の像を重ね、ドイツ語の Erde(大地)を名とした造形である。原典で一言も発しない女神に、19世紀の楽劇が声を与えたことになる。

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領分・別名

INTERPRETATIO — 同一視・同源
ペルクナス スラヴ神話 同源
ヨルズの別名フィヨルギュン(Fjǫrgyn)が、バルトの Perkūnas・ゴート語 fairguni(山)と同じ印欧祖語の語幹 *perkʷ- に遡るとされることによる。同一視の史料があるわけではなく、名の系統に関する同源である。ゲルマン語で *Perkʷunos 系の語形を残したのは雷神トールの名ではなく、その母の名のほうであった。

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アンナル
ノート
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兄弟姉妹
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THOR
トール
アンナル
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資料

Wikidata
Q548730 — 骨格データの出典
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