ペルクナス
ペルクーナス · ペルコンス(ラトヴィア) · Perkūnas
バルト神話、とりわけリトアニアの雷神。バルト諸族の神々の頂点に立つ主宰神で、斧をふるって雷を放ち、聖なる樫と結びつく。地下の魔物ヴェルニアスとの争いは、スラヴのペルーンとヴェレスの争いとよく似る。
解説
概要
バルト神話、とりわけリトアニアの雷神。雷と稲妻、嵐、そして天を司り、バルト諸族(リトアニア人・ラトヴィア人・古プロイセン人)の神々の頂点に立つ主宰神であった。斧または槌をふるって雷を放ち、聖なる樫の木と固く結びつく。スラヴのペルーンと同じく地下の魔物との永遠の争いを戦う雷神であり、正義と秩序を守り、雨によって大地に実りをもたらす神でもあった。
神話・物語
ペルクナスの物語の核心は、地下の魔物ヴェルニアス(ヴェリナス)との争いである。ヴェルニアスが家畜を盗み、あるいはペルクナスの花嫁を奪って地に隠れると、ペルクナスは炎の車を駆り、火の馬に乗って追い、樹や石、獣のあいだに逃げ隠れる敵へ雷を打ち下ろす。この追跡は、雷雨というかたちで決着する。これは、スラヴのヴェレスとペルーンの争いと驚くほどよく似ており、両者を照らし合わせることで、学者たちはより古い印欧の「嵐の神話」を再構成しようとしてきた。ほかにも、太陽の女神サウレを妻としたが、月神メーヌリスと通じた妻に怒って月を斬った、というリトアニアの伝えなどが知られる。
図像と象徴
ペルクナスは、斧や槌を手にした逞しい男として思い描かれた。「ペルクナスの斧」と呼ばれる武器は、打ちつけると雷を生むとされた。彼の聖樹は樫であり、天を衝く老樫にはこの神が宿るとされた。木曜日は彼の日とされ、特別な崇拝が捧げられた。雷鳴を、天上で石がぶつかり合う音や、神が車を駆る轟きとする語りも各地に伝わる。確かな古代の神像は乏しく、その姿は民間の歌や伝承を通して知られる。
系譜と関係
ペルクナスは、天の父神ディエヴァスの子とも、みずから天を治める主宰神ともされ、大地の女神ジェミナを妻とする伝えが多い。彼は、印欧の各地に見られる雷神——スラヴのペルーン、ゲルマンのトール、ギリシアのゼウス、インドのインドラ——と、樫や雷の武器、地下の敵との戦いといった特徴を分かちあう。ただし、これらの神々が一つの祖型から直接派生したのか、それぞれ独立に生じたのかについては言語学者のあいだでも議論があり、安易に同一起源とみなすことはできない。似ているのはあくまで型であって、名や物語の細部はそれぞれに異なる。
文化的足跡
ペルクナスの信仰は、ヨーロッパで最も遅くまでキリスト教化に抵抗したバルト地域で、長く命脈を保った。キリスト教化ののちも、雷を操るその性格は預言者エリヤや、竜を退治する聖ゲオルギオスへと重ねられ、雷や樫をめぐる民間信仰のなかに生き残った。今日ではリトアニア・ラトヴィアの文化的アイデンティティを象徴する神格の一つとして、文学や音楽、現代のバルト土着信仰のなかに受け継がれている。