スプンタ・アールマティ
アールマティ · スパンダルマド · イスファンダールマズ
ゾロアスター教のアムシャ・スプンタの一柱で、女神とされる。名は「聖なる献身」を意味し、アフラ・マズダーの娘と呼ばれる。大地を守り、豊穣と農耕に結びつけられた。
解説
概要
スプンタ・アールマティ(アヴェスター語 spəṇta ārmaiti)は、アムシャ・スプンタの一柱で、名は「聖なる献身」を意味する。アールマティは献身・信心・従順の意。中期ペルシア語でスパンダルマド、新ペルシア語でイスファンダールマズ。六柱のうち三女神の一つに数えられ、アフラ・マズダーの娘と呼ばれる。
古い文献ではなお抽象的な原理として現れるが、後代の文献では調和と献身を体現する女神として人格化が進む。『リグ・ヴェーダ』のアラマティに対応する語であり、インド・イラン共通期に遡る観念とみられている。
神話・物語
被造物のうちこの女神が守るのは大地である。ときに大地そのものを指す語ザムと結ばれてザム・アールマティという複合の形をとり、農耕と実りに結びつけられた。同時に、死者と地下の世界にも関わるとされる。
『ウェンディーダード』第2章では、大地が人と家畜で満ちたとき、王ジャムシードがこの女神に呼びかけて地を押し広げてもらう。伝承では、原初の人ガヨーマルトの精を受けて人類の祖マシュヤグとマシュヤーナグを生んだともされる。敵対者は不遜を意味するタローマティである。
図像と象徴
この女神を表した古代の図像は伝わらない。本サイトが主画像を掲げないのはこのためである。ゾロアスター教の抽象神格に共通する事情だが、この女神の場合は事情がやや異なる。守る対象そのもの——耕され、踏まれ、死者を納める大地——が、像に代わってこの霊を目に見えるものにしていたと考えられている。
系譜と関係
アフラ・マズダーの娘とされ、ハルワタート、アムルタートとともに三女神をなす。『ブンダヒシュン』26.8はこの三柱をアフラ・マズダーの左手に置き、それぞれ大地・水・植物と結びつける。暦では各月の第5日と年の第12月を司り、両者の重なる日はスパンダルマズガーンと呼ばれる。
文化的足跡
アルメニアではサンダラメトの名で受け継がれた。近年のイランでは、スパンダルマズガーンを愛の祭日として祝う動きがあり、イラン暦の第12月イスファンドにこの女神の名が残っている。